化学調味料関係のとりあえずのメモ(その2)

 うま味や、化学調味料についてのメモ。

 その2で終わろうと思ってたんだけど、まだまだ終われない。(^^;
 少なくともその3はあります。

  • 塩の共存によるうま味の増強
    うま味の物質は、海産物、肉、野菜などに含まれているが、これらの食品を食べるときにはしばしば食塩が添加される。少量の食塩が存在するとうま味が増強される。
    グルタミン酸ナトリウムは食塩の塩から味を緩和して、いわゆる”塩かど”をとり、同時にその食品をおいしいものにするといわれている。
    うま味と塩味の間では、かなり濃い塩味のところでも、うま味によるマスキングは起こらず、塩味の強さはグルタミン酸ナトリウムによってむしろ強められている

  • 味の相互作用
    食物を味わうときは、単一の味を味わうことは滅多になく、混合された味を味わう。この際、味の相互作用が問題になる。たとえば、糖に少量の食塩を添加すると、甘味が増大することが知られている。同様に、アミノ酸に食塩を添加するとアミノ酸の味が増強される。食塩にはこのような増強効果があるが、リン酸ナトリウムには弱い効果しかない。福家と鴻巣らによれば、カニ味はグリシン、アラニン、アルギニンとうま味物質が不可欠であるが、これらの混合物は非常に弱い味しか呈さない。これに食塩を添加すると、はじめてカニ味が再現される。このように、食塩はアミノ酸の味を引き出すのに不可欠である。
    ……
    塩によるアミノ酸応答の増強作用の詳しい機構はまだ不明である。おそらく、塩が味受容膜に吸着すると、受容膜のコンフォーメーションが変化し、アミノ酸と受容たんぱく質の相互作用が変化するものと思われる。

  • グルタミン酸ナトリウムと食塩の味にはself limitingness(一定の濃度を超えると、味覚の好ましさが著しく低下し、過剰な摂取を自ずから抑制すること)という性質があるので、どちらも過剰に使用すると食品の嗜好性の低下を招く。
  • うま味の飽和状態
    ↑について、これとは対立するかのような記述が、「グルタミン酸ナトリウム – Wikipedia」にある。

    >
    グルタミン酸ナトリウムの性質として、味覚から過剰摂取を感知できないという問題がある。通常、塩などの調味料は投入過剰状態になると「辛すぎる」状態となり食べることができないが、グルタミン酸ナトリウムはある程度の分量を超えると味覚の感受性が飽和状態になり、同じような味に感じるため、食べすぎに気づきにくく、また飲食店も過剰投入してしまいがちである。その結果、調味料としての通常の使用では考えられない分量のグルタミン酸ナトリウムを摂取してしまう場合があり、注意が必要である。
  • ↑グルタミン酸ナトリウムについて、前者は一定の濃度を超えるとマズくなるため、過剰摂取が抑えられるとし、後者は一定の濃度を超えてもマズく感じられないため、過剰摂取してしまう可能性があるとしている。
  • ↑そこでこの件についてうま味調味料メーカー等に問い合わせてみると、これまた回答がバラバラだった。
    味の素KKは ── 「弊社と見解が異なる」ため回答できない、つまりそんな事実は把握していないと。調査してみるのでちょっと待って、という回答。
    テーブルマーク(旭味、ミタスを製造)は ── 具体的な知見はもっていない、と。
    日本うま味調味料協会は ── 「うま味調味料」を料理にどのくらい加えると、最も好ましい味になるか、すまし汁で実験した例を紹介してくれた。この実験ではうま味の濃度による「好ましさ」にはピークがある(つまり「適量」が存在する)ということがわかる。ただ、「感受性が飽和」についてはデータを持っていない、との回答。
    ヤマサ醤油は ── 飽和状態はある、と。食塩等の場合は過剰添加の場合には「刺激」として知覚されるがうま味の場合は「刺激」として知覚されないようだ、としている。また上記の直線グラフについては、適正濃度域では直線を描くが、過剰領域になると傾きが小さくなっていくと。ただこれはWikipediaの文章を言いかえているだけで、「その濃度とは?」といった質問には返答がなかった。裏付けとなる研究を紹介してくれたわけでもない。

  • ↑というわけで、はっきり「飽和状態」があると答えたのはヤマサ醤油だけで、他はそのようなデータは持っていない、という。味の素KKに至っては「見解が異なる」としているのだからこれはかなりはっきりとした相違のように思える。
  • ↑引き続き調査するという味の素KKの答えを待ちたい気分。情報あればください。まずはこの出典として挙げられている『スタンダード口腔生理学』(学建書院 1994年)にあたりたいところだが……。
  • うま味が一番感じられる温度
    ラーメンやつけ麺のスープやつけ汁との関係で、「うま味が一番感じられる温度」を知りたいと思った。ググってみると、ネット上では↓以上の答えは見つけられなかった。
    温度と味覚(うま味)の関係について
    ここでは、

    甘味:人間の体温付近でもっとも強く感じる
    塩味:低い温度で強く感じる
    酸味:温度により一定
    苦味:低い温度で強く感じる

    と言われているということを挙げながら、では「うま味」ではどうかという質問が投げかけられ、しかし明確な回答は得られていない。

  • ↑意外なことに、うま味と温度に関して目立った研究結果はないようだ。
  • ↑研究としては、イヌを対象とした実験が行われてはいる。イヌの場合は食塩に対しては10℃付近で最大値、塩酸やショ糖に対する応答は30℃付近で最大値となる。うま味応答(CMP単独、またはGMPとMSGの相乗作用によって発現する応答)も30℃付近に最大値を示す……とされている。ただしこれはあくまでイヌであるため、どの程度人間に置き換えて考えることができるかは不明。
  • ↑これについても味の素KKテーブルマークヤマサ醤油のいずれも、具体的な知見は持っていなかった(テーブルマークは上記イヌの研究を紹介してくれた)。
  • 日本うま味調味料協会は少し具体的で、うま味を受容する舌の味蕾の受容体はたんぱく質であり、たんぱく質型の受容体は体温付近で受容性が高いという性質がある、と教えてくれた。そして、温度が下がるにつれて弱くなっていくのだとも。これは「なるほど」とも思うのだが、その例として挙げてくれたみそ汁は「60~70℃が快い」とされているのだと。うま味は温度が下がるにつれて感じられなくなるのに対し、塩味はあまり変わらないからだという。
    これはそれなりに納得ができる。ただ、「体温付近で受容性が高い」のであれば、「60~70℃」から冷めていく過程でもっとうま味を感じられるようになる、ということにはならないのか、という疑問が出てきてしまう。

  • ↑なお、「うま味」といった具体的な味要素ではなく、「みそ汁」のような具体的な話であればもう少し知見も出てくる。キッコーマンのサイトには、こういうページがある。
    おいしい温度

    ●温度が味を左右する?!
    人間の味覚は、食べものを口に入れたとき、その食べものの温度で味の感じ方に大きな変化が起こります。しかもその感じ方は味の種類によりさまざまです。そのため、ある温度ではおいしいものでも、冷めるなどして温度が変わると、味の感じ方は非常に複雑に動きます。そこで味のバランスが崩れ、まずいということになるのです。ということは、料理は、おいしく感じる適温で食べることがもっともよいということになります。
    ●小さな温度差が生む、大きな違い。
    温度の高低がおいしさに響きやすいのは、スープ類や飲み物などです。この場合、おいしく感じるためには、ある程度温度の刺激が必要になります。その温度は体温との差が25度以上あることが条件で、冷たいほうは12度以下、熱いほうは62度以上です。ただ5度以下になると冷たすぎるので、あまり味を感じなくなります。また熱いほうでは、75度以上になるとやけどをするといったことになりますので、これもよくありません。なお濁りスープのようにどろりとしたものは、62度ではやけどをしますし、おしるこのように甘味の強いものがおいしく感じるものでは、50度台の温度のほうがおいしく感じます。また清酒のかんも熱すぎるとアルコールがツンときてよくありませんから、少しぬるめにします。
  • ↑これはなかなか解りやすい。温度の刺激と具体的な味要素、液体の粘度や香りなども大きく影響をすることになるはずだ。
    そこで、これはうま味単体での話では収まらなくなるが、もう少し話を絞って、ラーメンを一番おいしいと感じられる温度帯は何度くらいなのかが気になる。とはいえ普通のラーメンについてそういう研究をしているところがあるとも思えないので、いっそのことインスタントラーメンについて聞いてみようと。というわけで業界1位と2位の日清食品東洋水産(マルちゃん)にメールで質問してみた。この2社の回答は、両社とも私の予想を超えていて、とても興味深いものだった。(なおキッコーマンはこのページ以上の情報は持ち合わせていないとのこと)

  • 日清食品からの回答は……
    日清食品の調べによると、「ラーメンを一番おいしいと感じられる温度帯」は、日本は90℃程度であると。
    ええええ何それ、「日本は」って? なんと外国ではそれぞれ違うらしい。
     中国:90℃~95℃程度
     タイ:85℃~90℃程度
     ブラジル:80℃~85℃程度
     ドイツ:75℃~80℃程度
     アメリカ:75℃程度
    だそうだ。熱いものを食べる習慣とかの問題だろうか。しかし中国の95℃なんてのは慣れの問題以上に、口の中ビラビラになっちゃうんじゃなかろうか。

  • 東洋水産からの回答は……
    まず、私のケータイ(番号は質問する際に記載した)に電話があった。電話によると、実はそのデータは持っておりませんと。あららそれは仕方がない、わざわざ丁寧にお詫びの電話をくれたのかと思っていたら、
    「これから社員を集めて実験をしますので、時間を下さい」
    という意外な展開だった。(^O^)
    数時間後、また電話をもらい、結果を教えてくれた。実験してみたところ、90℃以上だと熱すぎて食べられない。80℃以下になると「ぬるい」と感じる。……すなわち、85℃±5℃が適温と思われます……と。

  • ↑両社の社風?の違いまで感じられて、なかなか楽しかった。皆さんありがとう。ただ、やはりいずれもインスタントラーメンということもあり、まず熱湯を使うのが前提となっているわけで、「熱い」方がおいしいというのがア・プリオリとなっているように思える。その意味では今回調べたかったこととは少し違って、参考にはなったけれど、決定打にはならないかもしれない。
  • ↑みそ汁にせよ、インスタントラーメンにせよ、「体温付近」というのはちょっとあり得ないようで、単体の味要素とテクスチャー(食感)との関係は、かなり複雑だと想像される。

突然食いたくなったものリスト:

本日のBGM:
かえせ!太陽を





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