東芝ボストンと日本のモノづくり

 昔、父は私が生まれる直前頃に家を建てた。当時の平均的なサラリーマン家庭がそうだったと思うが、やはり1軒家を建てるのが夢で、それが今よりは一般的に実現可能な夢だった。
 
 しかし家を建てたはいいが、何を置いたらいいんだ?という問題は多くの家が抱えており、その需要に応える形で例えば誰も読まない大量の百科事典であったり家具調のテレビやステレオがやたら売れた。
 
 その当時買った東芝ボストンというセパレートステレオを父はまだ持っている。「セパレートステレオ」というのは本格オーディオ流行の前時代、レコードプレーヤー、アンプ、ラジオが一体になった部分と左右2つのスピーカーが分かれて3つに分離(セパレート)したセットで、1960年代くらいに爆発的に売れ多くのメーカーが参入していた。東芝ボストンはその1つ。


参考:
セパレート型ステレオ(Wikipedia)
コンポ以外の選択もあった(続編)

 聞くところによると初めての子供である私の胎教?に使うつもりで、ベートーベンなどクラシックをかけていたそうだ。
 父自身はそういう素養は薄いので本人は楽しめなかったと思うが、私は小さい頃に「チャイクロ」だったか「東京こどもクラブ」だったかのレコードをこのプレーヤーで聞いていたのを覚えている。
 
 もう20年、ひょっとしたら30年近く電源は入れてなかったが、父には父のいろんな思い出がこのステレオにはあるのだと思う。
 というわけで、親孝行も兼ねてこのステレオを修理してもらおうと友人に頼んだ。
 
 友人の見立てによると(当時のステレオには回路図がついている)、アンプの素性は悪くないのでいい音が鳴るんじゃないかと。
 実際、直ったアンプはなかなかいい音がした。
 
 しかし残念ながらスピーカーがあまりにお粗末で、バックパネルを開けてみんなで苦笑した。(^^;


東芝ボストンのスピーカー

 高度成長期の日本の中身も実はこうだったんじゃないかと思わせて、なんか暗い気持ちになる。><
 私は「こんな仕事してるから潰れるんじゃ東芝!」と叫んだ。(^^;;
 アンプを修理をしてくれた友人は、「当時の開発者が2017年にこのスピーカーを開ける人のテンションを思いっきり下げるために設計したタイムカプセルや……」とつぶやいた。
 
 このスピーカーをどうするか、このままではダメなのはわかっている。ガワを重視して中身を入れ替えるか、音を重視してスピーカーは別のものにするか、かなり迷いどころになっている。
 ⇒結局、音のことを考えればこのガワは使い物にならないということで、このスピーカーは放棄して別の中古スピーカーをあてがうことに決定。

 しかし当時の電気製品は高かった分、長持ちしたよなあ。
 
 「私の離乳食を作るために買った」と聞いたシャープの電子レンジは今から10年ほど前の段階でボタンが1つだけ壊れただけだった。たまたま友人が引っ越す時に、5年ほど使ってたという電子レンジをくれるというから古いのを捨ててこれをもらったんだけど、こいつは3年ほどで壊れた。(>_<)
 
 安けりゃ長持ちしないのが当たり前というのはそのとおりだけど、それなりの値段取るものでも、長持ちを前提に作られているパーツ自体が入手困難になってて、結局短命でしかなくなってる気がする。
 昔は「長持ちしたら次のを買わないから景気が悪くなる」とか思ったこともあるけど、どっこいそんな短命・格安のものばっかり作って底力を失ってしまったのがこの20年の日本じゃないのかねえ。
 
 やっぱり不景気は悪ですよ。
 不景気は人の、いろんな余裕を奪い取る。
 
 ……とはいえ高度成長期に作られたこの東芝ボストンの仕事を見ると、実は日本人は景気のいい悪いなんて関係なく、これまでずっと、ちゃんとしたモノづくりなんてやれてこなかったんじゃないか……そんな気分になったりもする。
 
 なんてこった。

 東芝は稼ぎ頭のメモリ部門を売り飛ばすそうな。
 他にもたくさん売るらしい。
 
 上場廃止を何とか免れ立て直しできたとして、東芝は他の企業が買おうとしなかった売れ残り事業をメインに据えた会社になるってことだよ。

突然食いたくなったものリスト:

  • ハイチュウ

本日のBGM:
Don’t Fear The Winter /RAGE





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