知らなかった

 なんか、全然知らなかったのですが……。

 JR東日本の、信濃川からの不正取水の件。
 今日流れていたNHKで、「水量が戻った信濃川で川下りが行われています」みたいなのんびりしたニュースを見て、「水量が戻った」って何かあったの?とググってみたんですよ。そしたら……へええ、そういうことになっておったのですか。

 あの、長さ(367キロ)、流量(年約160億トン)で国内最長・最大を誇る、教科書で習った信濃川が、えらいことになっていた。

 話の流れはこういうことらしい。(整理を兼ねて/朝日の記事「水が消えた大河」などを参考に)

 信濃川は、新潟市や長岡市では川幅が200~300mある大河だが、十日町市や津南町の中流域では川幅が数メートルにやせ細り、歩いて渡れるほど浅くなっている場所さえあるという。

 原因は東京電力とJR東日本がそれぞれ建設した発電ダムのせいで、それぞれが川から大量に水を取る。そいつで発電してから下流に水を戻すが、水を抜いた地点から水を戻す地点の間は水量が極端に減ることになる。また、下流に戻される水も東電で0.2%(0.26t)、JR東日本で2%(7t)しかないという。

 両ダムは1939年に完成したが、問題が大きくなったのは1990年にJR東日本の新しいダムが完成してから。これによって取水量は最大167t/秒⇒317t/秒に倍増された。以来、川には7tの水しか流れなくなった。
 ここまで水量が落ちると信濃川の環境は一変し、漁業を初め多くの河川環境が悪化した。

※国や新潟・長野両県の周辺自治体が設置した「信濃川中流域水環境改善検討協議会」によると、最低限必要な流量は30~70tだという。

 両県はJR東日本に対して改善を求めたが、放流量は変えなかった。それどころか1997年には電気の売却事業に乗り出すと発表する。十日町市長の直談判に、JR東日本の役員はこう答えたという。

「売るほどの電気があるのなら、水を信濃川に戻すのが先だ。国も33トンは必要と言っている。われわれの水を返してくれ」(市長)

「多額投資をしてまだ10年。合法的に行っていることで、問題はないはずだ。話し合って決めた協定を途中で変更するには無理がある」(役員)

 その後、1999年には信濃川中流域の適正な流量について話し合う「信濃川中流域水環境改善検討協議会」が発足した。
 この協議会が主導して、当面の間、サケの遡上期などに放流量を増やすという試験が行われた。効果はあからさまに出て、2007年、協議会はJR東日本の放水量を現在の7t/秒⇒30~50t/秒にする必要があるとの報告を出した。
 つまり信濃川の水量は「不合理」といえるまでに落ちていたことになる。

 で、2008年秋。
 JR東日本が長年の間「不正」取水していたことが判明した。
 JR東日本のダムは川から317t/秒の水を抜くことが許されている一方、7t/秒をダム下に流すことが義務づけられている。
 このデータは国交省に提出されることになるが、JR東日本はこの取水、放水の記録を改竄していた。明らかに故意に改竄装置を設置していたのだという。この装置によって、取水が317t/秒が超えても記録は「317t/秒」となり、放水が7t/秒を下回っても「7t/秒」と記録されるようになっていた。
 こういうデータ改竄は2006年以降、全国の水力発電所で発覚したという。2007年に国交省が調査した際にもJR東日本は「適正に行っている」と回答していた。
 しかし後に、JR東日本はこの改竄によって1998~2007年の10年間で約1億8000万tを超過取水し、放水量は38万t不足していたと発表することになる。

※なお、2007年に水利権が取り消された東京電力の塩原発電所の不正取水は13年間で約8000万t。JR東日本は10年間で約1億8000万t。やるねえ。

 超過取水量が極めて大きいこと、調査で虚偽の回答をしたことにより、国交省は2009年3月、JR東日本の水利権取り消しという厳しい処分を科した。(JR東日本「信濃川発電所に関する北陸地方整備局からの行政処分を受けて

 なんかもう、無茶苦茶やねえ。

 特に電気の売却事業参入のくだりは何とも言えん。

 このダムで作っている電力は山手線に使われていて、山手線の電車の「2本に1本」はこのダムからの電力ということだから、きっと関東では話題になった話なんだろう。
 関西の私たちにはさっぱり伝わってこなかったニュースだった。

 教科書で読んだくらいの日本を代表する川がこんなことになってるなんてなあ。

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本日のBGM:
One More Murder /SANCTUARY






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