先日、本棚を整理していると『まるく笑って、らくごDE枝雀』(桂枝雀著)という本が出てきた(※)。懐かしいと思ってパラパラとめくってみると、枝雀のかねてからの持論である「緊張と緩和」論についての解説が載っている。
※今では絶版だが、『らくごDE枝雀』(ちくま文庫)というタイトルで文庫になっている模様。
この話は昔(といってもこの本よりは後)、日本テレビ系列で放映されていた『EXテレビ』木曜日(司会・上岡龍太郎)でも話していて、そのビデオがYouTubeに上がっていたはずだ。……と思って久しぶりにこちらも見てみようと思って探したら、残念ながら削除されていた。(>_<)
しかし実は私はまだ削除されてなかった頃にダウンロードしておいたのだ。(^O^) そのファイルを引っ張り出して来て、久しぶりに見た。
で、せっかく本とビデオの両方が揃ったので(いや、こんな言い方はおかしいね。他にもたくさんこれについて書かれたものはあるだろうから)、これらの中で言われている「緊張と緩和」論をノートとしてまとめておきたい。
なお、この本(『まるく笑って、らくごDE枝雀』)が発売されたのは1983年、EXテレビの放送日はわからないが、番組自体の放送が1990~1994年なので、その間ということになる。この間、約10年前後の開きがあるが内容的にはほとんど変わっていない。
サゲの4分類の例として挙げられる噺について、わかりやすい?ようにYouTubeにあった噺を貼り付けてみた。EXテレビの動画にはちゃんと枝雀が演じたサゲが編集されて流されたのだけども、YouTubeでは枝雀の演目がそううまくは見つからず、他の噺家によるものもある。
昔から笑いについて、いろいろ考えていた。
プロになる以前から落語や漫才が好きで、よく聞いていた。それ以来の経験的なものからまず思いついたのが
①知的な笑い「変」
②情的な笑い「他人のちょっとした困り」
③生理的な笑い「緊張の緩和」
④社会的・道徳的な笑い「他人の忌み嫌うこと」「エロがかったこと」
という4つ。
ここからさらにもっと根本的なものは何かということを考えると、③生理的な笑い「緊張の緩和」が一番の根本だとわかった。そもそも人間の体がどういう状態になったら「笑う」のか。
我々の祖先が大昔にマンモスと戦ってそれを仕留める。戦っている時は緊張で息を詰めている。そしてマンモスが倒れれば息をワーッと吐き出して、それが喜びの笑いになったのだろう。緊張が緩和された時笑いが起こる。つまり「緊張の緩和」。
これを『
これら4つ(知的、情的、生理的、社会的・道徳的)の笑いとはどういうものか。
①知的な笑い「変」
この「知的」とは、「インテリジェンス」「知的に高度なもの」といった意味ではなく、頭を使う、理性を使うということ。知的に「変」なこと、頭で考えて正常でないこと。人間、普通なことが「緩和」なこと、つまり安心であって、「変」=緊張。おかしいことが普通の状態に戻ったら「緩和」されて笑いが起こる。これは「おかしい」ことが可笑しい、ということになる。
②情的な笑い「他人のちょっとした困り」
「困り」=緊張。人にとって困らないことこそが「緩和」。しかし自分が困るとなると「緊張」が勝ちすぎるから、「他人の」であり、しかもいくら他人でも度を超すと笑いどころではなくなる。だから「ちょっとした」。この「度を超さない」というのは全体の「緊張」について言える。
③生理的な笑い「緊張の緩和」
赤ん坊をあやす時の声のかけ方など、はじめグーッと息を詰めて(緊張)パーッと吐き出す(緩和)。緩和から緊張というきっかけがあり、笑いが起きる。
④社会的・道徳的な笑い「他人の忌み嫌うこと」
タブーに触れることは「緊張」。普通の社会人がしてはならないはみ出した行為をする(緊張)のを「これ、そんなこと言うたらあかんがな」と突っ込むことによって元の状態に緩和してやると笑いになる。この部分は社会によって変わる。
『緊張の緩和』も、「緊張」がゆっくりと「緩和」したのでは「笑い」にはならない。『緊張の緩和』は広い意味で「快感」「喜び」であり、それが瞬時に行われる時に「笑い」になる。
一番根底にある緊張の大緩和が「悟り」の笑い。ここには緊張はない。これは時間的にも長い。一生涯。悟れば緊張はない。これが一番広い。
その上の、もう少し緩和の範囲が少ないところに「喜び」の笑いがある。成功した時の笑い。根本的には昔、獲物を得た時のヤッター!という喜びの笑い。
そしてその上に、我々がいう、いわゆる「笑い」がある。時間的には短い。瞬間のもの。
この『緊張の緩和』『
なお、これまでにもサゲの「分類」として「地口落ち」「トントン落ち」「仕草落ち」といった呼び方があったが、これらは科学的な分類とは言いがたい。何かを分類する時は基準・視点が必要だが、これらの呼び方には分類の視点・基準がない。
例えば「地口落ち」は地口で落ちている、これは内容という視点での名前。「トントン落ち」はトントントンと落ちるという、演り方で見た分類。「仕込み落ち」はサゲの言葉をあらかじめ仕込んでおくという噺の構成から来た分け方。「仕草落ち」はセリフではなく仕草で下げるという演出法。このように視点が定まっていないので、分類としては不完全。
ここでの4種類の分類の視点は客。客がどういう形で受けとめて快感を得るか。逆の立場でいうと、演者なり作者なりがどの趣向で客に快感を与えるかというきき手対演者という関係で判断する。
サゲの分類
1.ドンデン (合わせ→離れ)
2.謎解き (離れ→合わせ)
3.へん (離れ)
4.合わせ (合わせ)
「こっちかいな」(安心)と思ってたら「あっちやった」(はぐらかされた)というもの。一度サゲ前で「合わせ領域」(安定)に近づく。これが「ドン」。その後でそれまで隠されていた新しい状況がパッと現れて(「離れ領域」へ「デン」と飛び出したところで「そんなアホな」と)サゲになる、一番鮮やかな型。生理を含むので、サゲの快感が大きい。
ドンデン
例:愛宕山
幇間が谷底へとび降りて、旦那がばらまいた小判をひろう。谷底から戻る段になってどないしてええかわからん。必死になって竹のバネの力を利用して旦那の前へとび上がってくる。旦那が「えらいやっちゃ。で、金は?」ちゅうたら、「忘れてきたア」。これなんか見事なドンデン返しですわね。幇間が谷底から戻ってきた時、きき手は「ウワー、良かった良かった」と安心して小判のことなんか一時忘れてますわ。と言うより、無事返って来てんから小判も当然持ってるもんと勝手に思い込むわけです。そこへ「忘れてきたア」でそれまで隠れてた状況がパッとあらわれて「そんなアホな」とサゲになりまんねん。
文字通り、謎を解いた答えがサゲになるという型。きき手が不思議な状況を提示されて「何でそんなけったいなことがおこるんやろ?」と疑問を持ったその疑問の解答が即サゲになる。つまりサゲ前に一度「離れ領域」(不安定)の側に膨らむ(謎)。そのあと、その謎を解くことによって「合わせ領域」(安定)に入って「なるほど」となる。だからたいていの場合、サゲの直前に「なんでやねん?」とか「どういうわけやねん?」という言葉がついている。
謎解き
例:皿屋敷
皿屋敷のお菊さんの幽霊が井戸の中から毎夜出てきては皿の数をよむ。いつも九枚しかかぞえへんのにある日十八枚もよんだ。「なんでぎょうさん皿の数よんだんじゃ」ちゅうてたずねたら、お菊さんが「二日分よんどいて、明日の晩休みまんねん」というのがサゲです。お菊がいつもよりぎょうさん皿の数をよんだというのが不思議な状況ですわね。きき手としたらなんとかこの理由を知りたいと思いますわ。と、その答が「明日の晩休みまんねん」で、「なるほど、シャレてんなア」でサゲになってるというわけです。
本当にあるような噺をしていて、最後に変なことが起こって常識の枠を踏み越えた時、噺全体がウソになって終わるというもの。
「離れ領域」へ出ることでサゲになるのは同じだが、その前の安心がない。「ドン」がなくていきなり「デン」がくるわけで、4つの型のうち最も不安定。
へん
例:池田の猪買い
わたしは最近サゲをかえて演らしてもうてるんですけど、ここはわかりやすいようにフツーの型のサゲで説明しますわ。猪を目の前で仕とめたったのに疑い深い男が「これ新しいか?」ちゅうたんで、むかついた猟師が鉄砲の台尻で倒れてる猪をどついた。ところがこれが気を失うてただけなんで起き上がった猪がむこうへさしてトコトコトコ。猟師が「どうじゃ客人、あのとおり新しい」とサゲるわけですね。
このネタでいうと、「あのとおり新しい」で常識の線を越えてしまうわけだ。きき手の方も「ちがうちがう、そら生きてんねんがナ。そんなアホな」となるわけです。(きき手の)突っ込みが入ります。これが「へん」の特徴です。
例:千両みかん
このネタなんか上々の「へん」でしてね。サゲの直前、真夏の炎天下に大阪中にたったひとつだけ残ったみかんを千両で買いとって、若旦那に食べさすとこまでをいかにもありそうな噺としてもっていっといて、そのみかんの実が十袋あった ── つまり一袋が百両やというふうに価値観の錯覚が自然にあこって、番頭は三百両を持ったつもりになってみかんを三袋持って逐電するわけですね。つまり、サゲの「みかん三袋持ってドロンしよった」の一言でみごとに常識の枠をとび越してしまうんですよね。
これはいわゆる「地口落ち」が多い。セリフなり趣向なり、人為的に合わせることでサゲになる。「謎解き」の「謎」の部分のふくらみがなくていきなり「合わせ」てしまう。
合わせ
例:蔵丁稚
芝居好きの丁稚が、仕事をサボって芝居を見てたのがバレて蔵の中へ放り込まれてしまう。その中で、今見てきた『仮名手本忠臣蔵』の『判官切腹の場』の真似をはじめるんですね。そこへ折檻がすぎたかと心配した旦那が、おなかもすいてるやうとおひつを持ってやって来る。おひつを蔵の中へ差し入れて「御膳」。丁稚が「蔵の内でか」。「ハハーッ」。「待ちかねた」……でサゲです。これは、芝居の「判官切腹の場」の由良助と判官さんのセリフの「御前」。「由良助かし。「ハハーッ」。「待ちかねた」……というのと意識的に合わせてるわけです。で、これを聞いた人が「なるほど、うまいこと合わせよったなア」。「うーん、みごとにこしらえよったなア」ということでサゲになるわけですわ。
例:天狗裁き
趣向を合わせたという例は、『天狗裁き』でっしゃろね。嫁さんに寝てるとこを起こされて「どんな夢見たん?」とたずねられるのが発端で、それから次々に色んな人にたずねられて、しまいに天狗に夢の話をせえと強迫される。と、実はこれまでのストーリーが全部夢の中のことで、うなされてるとこを嫁はんがゆり起して「どんな夢みたん?」とたずねる ── という、これはきっちり発端のセリフもそうですけど趣向がピターッと合うてるわけです。あと、言葉を合わしたほうの例で変わったんでは文我兄さんが演らはる『死ぬなら今』。このネタなんか、のっけに「死ぬなら今」というサゲを言うてしまいますねん。で、なんやかんやがあって、とどのつまりが地獄の役人連中がひとりもあらんようになって、「死ぬなら今」ということになるという、シャレた噺です。これなんか、「合うた!」という快感を味わうネタでんなァ。
この4分類の相互関係を図にしたものが、この図。
サゲの4分類の相互関係
この4つのグループも全く孤立しているわけではなく、互いに影響し合ってサゲを作っている。謎を解く手段に「合わせ」を使ったり、謎を解いた結果が「へん」になったり。
サゲの4分類
この分類法に基づいて、枝雀は噺のサゲについて、具体的に分類している。これは『まるく笑って、らくごDE枝雀』の巻末に掲載されているもので、EXテレビでも大きなボードにしてスタジオに置かれていた。見る限りEXテレビのものはこれをボードに置き換えただけのようだ。各サゲの分類は『まるく笑って、らくごDE枝雀』の時点で確定していたのだろう。
※各サゲは前半が上方落語、後半が東京落語。
ドンデン
題名 | サゲの一言 |
愛宕山 | あゝ、忘れてきた。 |
按七 | 筆をグーッと左へ曲げた。 |
一文笛 | 兄貴、実はわい、ぎっちょやねん。 |
打飼盗人 | からの打飼、忘れてはります。 |
かぜうどん | おまえもカゼひいてんのか? |
看板のピン | 中もピン。 |
鍬潟 | 座布団が着せてあるのや。 |
けんげしゃ茶屋 | 「あゝめでたい」と、またしくじった。 |
鯉船 | 今度はこっちゃがわもたのんまっさ。 |
高津の富 | 旦那も雪駄履いて寝ておりました。 |
鴻池の犬 | 坊ンにおしっこさせてはったんや。 |
権兵衛狸 | ついでにヒゲも剃っとくなはれ。 |
写真の仇討 | あほらしい、手ェ突きましてんがな。 |
高尾 | あほらしい、隣のお梅。かんこ臭いのはお宅かえ。 |
煙草の火 | チョッと、煙草の火が借りたいのじゃ。 |
近眼の煮売屋 | アッ、忘れて来た。 |
茶漬間男 | 何にも知らんと今時分、茶漬でも食てるやろかい。 |
動物園 | わしも五千円で雇われた。 |
時うどん | 六つ、七つ、八つ……。 |
八五郎坊主 | わいの名前は、ハシカちゅうねん。 |
七度狐 | 畑の大根を抜いとりました。 |
ふぐ鍋 | ほんならわたしもこれからちょうだいいたします。 |
無精の代参 | 笠の紐がゆるんだん、アゴで止めてるのやわい。 |
豆屋 | わしとこは買えへんのじゃ。 |
厠火事 | あしたっから遊んでて酒のむことができねえ。 |
笠碁 | まだかぶり笠となねえじゃねェか。 |
巌流島 | さっきの雁首をさがしに来た。 |
そこつの使者 | 聞かずに参った。 |
試し酒 | 試しに五升飲んできた。 |
茶の湯 | また茶の湯か。 |
二十四孝 | (1)あたしが夜通しあおいでいたんだ。 (2)今の地震に、どこであった? |
ひなつば | これで焼き芋買うんだ。 |
星野屋 | そう思ったから三枚くすねておいた。 |
謎解き
題名 | サゲの一言 |
植木屋娘 | 根はこしらえものかと存じます。 |
近江八景 | 近江八景にゼゼは要りまへんのや。 |
大安売 | なんぼでも負けてやります。 |
軽業 | 表に高札が出ております。 |
替り目 | ちょうど銚子のかわり目ですわ。 |
黄金の大黒 | えろう安ならん内に、ふまえてる二俵売りに行くのじゃ。 |
強情 | おまえが買うてくるまで、わしが立っててやるわい。 |
小倉船 | 駕籠賃安うても酒代に高つくわ。 |
仔猫 | 猫かぶってたんや。 |
瘤弁慶 | 夜のコブは見逃しがならん。 |
皿屋敷 | 二日分よんどいて明日の晩休みまんねん。 |
算段の平兵衛 | そこがそれ、めくら平兵衛におじずや。 |
三人兄弟 | あいつだけはほまのこと言いよった。 |
三枚起請 | ゆっくり朝寝がしてみたい。 |
ぜんざい公社 | 甘い汁は先に吸うております。 |
大丸屋騒動 | 斬っても斬れぬ伏見の兄でございます。 |
蛸芝居 | 蛸にあてられた。 |
たちきれ | ちょうど先行がたちきれました。 |
地獄八景 | 大王のんで下してしまうのや。 |
ちしゃ医者 | 手にかかったら命が危ない。 |
茶漬幽霊 | 晩出たいけど……、こわい。 |
テレスコ | 女房がひもの断ちをしておりました。 |
田楽食い | あんまり焼けんほうがよかろう。 |
猫の茶碗 | ちょいちょい猫が、一万円で売れますんで。 |
寝床 | わたしの寝るところが、ちょうど床になっております。 |
抜け雀 | 現在親にかごをかかせた。 |
軒付け | さいぜんから食べてる味噌の味がちょっともかわらん。 |
花筏 | うまいはず、提灯屋の職人でおます。 |
百年目 | もうこら百年目やと思いました。 |
兵庫舟 | わしは雑喉場のかまぼこ屋じゃ。 |
仏師屋盗人 | 首が落ちた時、ついでもらうねん。 |
宿屋仇 | ああ申さんとまた夜通し寝かしおらん。 |
矢橋船 | よう見たら、竹光でございました。 |
悋気の独楽 | かんじんの心が狂うてます。 |
ろくろ首 | 首の出入りに蚊が入ります。 |
蛙茶番 | あそこで青大将がねらってる。 |
火事息子 | 火元へ礼にやりましょう。 |
故郷へ錦 | 故郷へは錦をかざれといいます。 |
芝浜 | よそう。また夢になるといけねえ。 |
大仏餅 | たべたのが大仏餅。目から鼻ィぬけた。 |
高田の馬場 | 楽ゥに暮らしているのだ。 |
長短 | だから教えてねって言ったんだ。 |
鉄拐 | 誰かと思ったら李白と陶洲明 |
わら人形 | 釘じゃあきかねえ。ぬか屋の娘だ。 |
へん
題名 | サゲの一言 |
青菜 | べんけい! |
あくびの稽古 | お連れさんは御器用な。 |
有馬小便 | しもた。じょうご持って来たらよかった。 |
池田の猪買い | どうじゃ客人。あのとおり新しい。 |
市助酒 | お宅はどうでも大事おまへん。 |
犬の目 | 電信柱を見たら、小便がしとなりますねん。 |
いらち俥 | あすのしまい汽車にしなはれ。 |
いらちの愛宕詣り | さいぜんはえらい失礼を。 |
牛ほめ | 秋葉さんのお礼をはんなはれ。 |
うなぎや | 前へまわってウナギにきいてくれ。 |
延陽伯 | 酒をのむことは酔ってくだんの如しか。 |
おごろもち盗人 | 盗人ォ! |
?の釣り | 器用な?じゃ、ものまで言いよる。 |
親子茶屋 | 伜か……、必ずバクチはならんぞ。 |
書き割り盗人 | ウワーッと死んだたいでおます。 |
がまの油 | お立ち会いの中に、血止めのお持ち合わせはないか。 |
義眼 | むこうからも誰ぞのぞいておりました。 |
禁酒関所 | あのここな……、正直者め! |
口合小町 | 口合雨降らしてみせるわ。 |
口合根問 | 足が痛くば……、どこへも行けんわ。 |
口入屋 | 宿替えの夢を見とおります。 |
首提灯 | 首が「火事や、火事や」 |
けんか長屋 | 満員につき、場所ございません。 |
こっけい清水 | よその夫婦は仲がええ。 |
子ほめ | どうみても今晩(あさって)あたり。 |
鷺とり | ひとり助かって……四人死んだ。 |
さくらんぼ | 頭の池へドブーン。 |
ざこ八 | 今の仏の気にさわったんや。 |
猿後家 | ようヒヒに似とおります。 |
蛇含草 | 餅がジンベ着て、プーッ。(と餅の身振りをする) |
寿限無 | あんまり名ァが長いさかいコブがへっこんでしもたんやがな。 |
背虫茶屋 | 背中のいかき出しなはれ。 |
疝気の虫 | アレッ! 別荘…、別荘…。 (と立ち上がり、さがしながら退場) |
千両みかん | みかん三袋持って、ドロンしよった。 |
ぞろぞろ | ひげがゾロゾロ。 |
代脈 | 今のおならも聞こえなんだ。 |
たぬさい | 天神さんの恰好で立ってました。 |
狸の化寺 | キンがすれる。キンがすれる。 |
たのき | どうじゃ、怖いか。 |
茶漬間男 | 何にも知らんと今時分、茶漬でも食てるやろかい。 |
手水まわし | あとの一人前、お昼からいただきます。 |
ちりとてちん | ちょうど豆腐のくさったような。 |
次の御用日 | (1)次の御用日を待て (2)本日の裁きはなかったことにしてくれ。 |
辻占茶屋 | シャバでおうたきりやがナ。 |
つる | 黙って飛んで来よったんや。 |
道具屋 | (1)おひなさんの首が抜けます。 (2)家一軒盗まれた。 |
胴乱の幸助 | しもた、汽車で来たらよかった。 |
時うどん | 六つ、七つ、八つ……。 |
夏の医者 | 夏の医者は腹にさわる。(「夏のチシャ」の仕込みなし) |
人形買い | おための内で引いとくなはれ。 |
猫の災難 | 悪事災ニャンのがらせたまえ。 |
初天神 | おとうちゃん連れて来なんだらよかった。 (「連れて来るんやなかった」の仕込みなし) |
はてなの茶碗 | 水瓶の漏るやつ見つけてきた。 |
一人酒盛 | あいつ酒ぐせが悪いねん。 |
百人坊主 | 旦那寺の和尚さんやった。 |
ひらのかげ | 平のかげで見えなんだ。 |
貧乏花見 | お酒のお代りを持って来ました。 |
みかん屋 | 掛け値言わな女房子供が養えまへん。 |
向う付け | あんたの来たのン、内緒にしときまひょ。 |
桃太郎 | 今どきのおとなは罪がないわ。 |
淀川 | あゝ、ええ功徳をしたわい。 |
穴泥 | 三両なら、俺のほうから上がっていく。 |
一眼国 | さっそくこいつを見世物へ出せ。 |
王子の狐 | 食べるんじゃないよ、馬の糞かもしれない。 |
お血脈 | 五右衛門、そのまま極楽へ行っちゃった。 |
お見立 | よろしいのをお見立て願います。 |
片棒 | その片棒は、俺がかつぐ。 |
紙入れ | そこまでは気がつくめえよ。 |
蔵前駕籠 | もう済んだか。 |
強情炎 | 五右衛門もさぞ熱かったろうな。 |
碁泥 | 泥棒さん、アゝよくおいでだねッ。 |
盃の殿様 | いまだに探して歩いているそうで……。 |
三軒長屋 | 先生があっしのとこへ越して、あっしが先生のとこへ越すんで。 |
酢豆腐 | 酢豆腐は一口に限りやす。 |
粗忽長屋 | 抱いてる俺は誰だろう。 |
千早振る | 「とは」は千早の本名だった。 |
付き馬 | 奴! 吉原(なか)まで馬に行って来い。 |
つるつる | 井戸替えの夢を見ました。 |
二階ぞめき | ここで会ったことは親父に黙っててくんなよ。 |
羽織の遊び | そのうち誰かが死にましょう。 |
花見酒 | してみりゃァ無駄がねえ。 |
干物箱 | 善公は器用だ。親父そっくり。 |
船徳 | すいませんが、船頭ひとり雇ってください。 |
文違い | おれが色男ってえのがあらわれやしめえか。 |
庖丁 | 魚屋へ返しに行くんだ。 |
本膳 | この礼式はどこへやるだね。 |
水屋の富 | これで苦労がなくなった。 |
目薬 | やっぱりこうやって付けるものだ。 |
目黒のさんま | さなは目黒に限る。 |
合わせ
題名 | サゲの一言 |
雨乞い源兵衛 | ふられるのはたりまえ、相手は雨乞い源兵衛じゃ。 |
阿弥陀池 | それやったら、阿弥陀が行けと言いました。 |
あんまこたつ | 今の小便でこたつの火が消えてしまいました。 |
稲荷俥 | お社を作って、おまつりをいたします。 |
植木屋娘 | 接木も根分けも、うちの秘伝でおますがナ。 |
浮世根問 | ろうそく立てになるのじゃ。 |
牛の丸薬 | ぬくなるはず、元は大和ごたつや。 |
馬の田楽 | 馬の田楽は見たことないわい。 |
江戸荒物 | 今からのうとったんじゃア、間に合がんがぬー。 |
お玉牛 | いいや、モォー言わして来た。 |
帯久 | いえ、今は別家に居候でございます。 |
親子酒 | 要らんわい! こんなグルグルまわる家。 |
腕食い | わいは親のスネをかじったわい。 |
加賀ノ千代 | いいえ、嬶の知恵でおます。 |
景清 | いえ、目がちがいましたんやがナ。 |
掛取り | 払いは一斗にお断りしとおります。 |
風の神送り | あゝ、それで夜網につけこんだな。 |
紙屑屋 | さきほどから撰り分けております。 |
軽業 | (1)長口上は大ケガの元や。 (2)カルワダ中が痛い。 |
菊江仏壇 | わたしも消えとうございます。 |
肝つぶし | エーッ、つぶれた! あゝ、薬にならん。 |
京の茶漬 | これといっしょに、そこの荒物屋で買うた。 |
近日息子 | 肩に「近日より」と書いておます。 |
くっしゃみ講釈 | こしょうが無いんで、とんがらしくすべたんや。 |
蔵丁稚 | 待ちかねた。 |
鯉盗人 | シーッ。コイが高い。 |
孝行糖 | こことォ、こことォ。 |
骨釣り | あゝ、それで釜割りに来たんか。 |
瘤弁慶 | この手討、よしつねにせねばなるまい。 |
米揚いかき | 叩いてつぶれるような品物と、品物が違います。 |
桜の宮 | かんじんの六部が参りません。 |
猿後家 | ようヒヒに似とおります。 |
三十石 | 権兵衛ごんにゃく船頭が利。 |
鹿政談 | マメで帰ります。 |
持参金 | 金は天下のまわりもんや。 |
指南書 | うまいもんは宵に食え。 |
死ぬなら今 | 死ぬなら今。 |
しびんの花括 | しょんべんはできん。しびんは向こうにある。 |
始末の極意 | これ離さんのが極意じゃ。 |
十徳 | たたんで取っとくじゃ。 |
正月丁稚 | 雨は万年でございます。 |
尻餅 | あとの二臼は白蒸で食べとう。 |
崇徳院 | 割れても末に買わんとぞ思う。 |
住吉駕籠 | あれがほんまのクモ駕籠や。 |
崇禅寺馬場 | 道理で返り討ちに出会った。 |
たいこ腹 | なりも悪かろ太鼓が破れた。 |
平林 | いいえ、字ちがいでおます。 |
短命 | あゝ、わいは長命や。 |
辻八卦 | いまだ誕生仕りませね。 |
壺算 | それがこっちの思うつぼや。 |
手切れ丁稚 | 五十円もろたら手を切ると言うてます。 |
天狗刺し | わしは五条の念仏さしや。 |
天狗裁き | いったいどんな夢見たン? |
天神山 | あゝ、おっさんも狐や。 |
天王寺詣り | あゝ、無下性にはどつけんもんや。 |
道灌 | 門(かど)が暗いさかい提灯借りに来たんや。 |
胴切り | 小便が近うてしょうがおまへん。 |
道具屋 | (1)いいえ、手元をみております。 (2)音は? ズドーン。 |
土橋万歳 | 大和の萬蔵でんねん。 |
鳥屋坊主 | この仏はお茶湯がいらんねん。 |
夏の医者 | 夏の医者は、腹にさわる。(「夏のチシャ」の仕込みあり) |
二番煎じ | 二番を煎じておけ。 |
猫の忠信 | 猫が顔あげて「ニヤウ」 |
野崎詣り | どーこォーにィー。 |
初天神 | おとうちゃん連れて来なんだらよかった。 (「連れて来るんやなかった」の仕込みあり) |
花色木綿 | 裏は花色木綿。 |
鼻の狂歌 | わしは鼻がほしい。 |
鼻ねじ | 塀越しに隣の庭に出た鼻は捻じょか手折ろかこちら任せじゃ。 |
七段目 | (1)いいえ、七段目。 (2)いいえ、てっぺんから落ちました。 |
質屋蔵 | どうやらまた、流されそうな。 |
質屋芝居 | 表で札渡しておます。 |
日和違い | (1)俵着るほど降りゃしょまい。 (2)ワタシ、おらんだノ人デス。 |
ふたなり | 宵に食べたなりでございます。 |
不動坊 | 幽霊稼人でおます。 |
船弁慶 | (1)きょうは三円の割前じゃい。 (2)きょうの割前取らんとおいてや。 |
へっつい幽霊 | (1)せめてテラをお願いに参じました。 (2)私の幽霊のことで、決して足は出しません。 |
堀川 | 毎晩虎にならな帰って来よらん。 |
まんじゅうこわい | 今度は、あつーいお茶が怖い。 |
深山隠れ | 婆は川で洗濯じゃ。 |
餅屋問答 | ベカコ! (東京の「こんにゃく問答」) |
宿替え | 酒飲んだら、我を忘れてしまいます。 |
遊山船 | 質に置いても流れんように。 |
吉野狐 | 吉野が信田にかわって。 |
四人ぐせ | 「こらアええ」と、皆やってしもうた。 |
らくだ | 冷酒(ひや)でもかまわん、もう一杯。 |
ろくろ首 | 待ってるで、首長うして。 |
お七 | 片足や本郷へ行くわいな。 |
火焔太鼓 | 半鐘はいけないよゥ、おじゃんになるから。 |
鰍沢 | お材木で助かった。 |
紀州 | キシューッ。 |
金明竹 | 買わずでございます。 |
くみたて | 汲みたて、一杯あげるけえ。 |
袈裟御前 | 今朝の御膳であったか。 |
甲府い | 甲府ゥーイ、お参り、願ほどき。 |
子はかすがい | 道理できのう玄翁で頭をぶつと言った。 |
酒の粕 | 焼いて飲んだ。 |
真田小僧 | うちの真田も薩摩へ落ちたか。 |
山号寺号 | なむさん、しそんじ。 |
三方一両損 | 多かァ食わねェ、たったえち膳。 |
死神 | あァ……消えた……。(と前へたおれる) |
三味線栗毛 | ウム、罰が当たる。 |
宗論 | おらあ仙台だから、奧州でがす。 |
天災 | 先妻のまちがいだ。 |
富久 | これで近所のおはらいをいたします。 |
なめる | いやあ、もうなめるのはこりたよ。 |
錦の袈裟 | そりゃたいへんだ。お寺しくじらァ。 |
ねずみ穴 | 夢は土蔵の疲れだ。 |
一目上り | いやあ芭蕉の句だ。 |
まわり猫 | そんならやっぱり、元のネコじゃ。 |
味噌蔵 | 味噌蔵へ火が入った。 |
もう半分 | へ、へ、へ、へ、へ、……もう半分。 |
淀五郎 | 待ちかねた。 |
悋気の火の玉 | あたしのじゃおいしくないでしょ。フン。 |
六尺棒 | 六尺棒持って追っかけて来い。 |
解釈や演じ方によって複数の分類にまたがるサゲもある。
例えば『時うどん』のサゲ「六つ、七つ、八つ……」は「ドンデン」と「へん」に分類されている。
主人公がうどん屋に「五ツで」と言われて、気がつかずにはずみで「六つ、七つ、八つ……」といけば「ドンデン」になるが、「五ツで」と言われた時に「しもた早すぎたか!」と気がついて、それでも後に引けなくなって残念そうに「六つ、七つ、八つ……」と言うという風に演じたら、これは合わせようとして外れたしまったという「へん」になる。
あるいは『茶漬間男』のサゲ「何にも知らんと今時分、茶漬でも食てるやろかい」というセリフも、亭主がすべてを承知で言っているのなら「ドンデン」で、何も知らず無邪気に言っているのなら「へん」ということになる。
この話でhietaroが気になる点:
笑いは緊張⇒緩和で生まれると言っていて、緊張とは不安、緩和とは安心だと言っている。とすれば、「離れ」や「ドンデン」は不安に振ってしまうので笑いにならないのではないか。これらの「不安」領域へ飛び出した矢印はは、もう一度安心に返って来なくてはならないのでは? EXテレビの中ではこれらの不安は噺が終わるということで安心に戻る(緩和する)と言っているが、この図の中にはそれが表されていない。
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突然食いたくなったものリスト:
- 赤いきつね
本日のBGM:
イタダキマンボ /田中真弓
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