複合うま味調味料配合の歴史。(^O^)
味の素の主要成分はグルタミン酸ナトリウム(MSG)であることはよく知られたことだけども、実はそれだけではない。
これまでも何回も触れたとおり、うま味物質は大きく分けてアミノ酸系と核酸系の物質がある。アミノ酸系の代表的な物質がグルタミン酸であり、核酸系の代表的な物質がイノシン酸、グアニル酸など。
昆布の主要うま味成分はグルタミン酸で、シイタケはグアニル酸、かつお節はイノシン酸が主なうま味成分になっている。
#なお同じ核酸系物質のグアニル酸、イノシン酸は味の強さが違うだけで味の質には違いはない(グアニル酸がイノシン酸の2.3倍。ということは、調味料としてグアニル酸ナトリウムを使用する時はイノシン酸ナトリウムの半量でいい)。
うま味には「うま味の相乗効果」という現象があり、アミノ酸系、核酸系をそれぞれ単独で使用するよりも混合して使用する方が、単なる足し算以上のうま味を発揮することが知られている。
以前(「化学調味料関係のとりあえずのメモ(その1)」)にも紹介したが、この図はアミノ酸系のグルタミン酸ナトリウム(MSG)と核酸系のイノシン酸ナトリウム(IMP)を混合して使用した場合の呈味力(味の強さ)を示すグラフだ。
このグラフによると、MSGとIMPの合計重量を一定にしてその混合割合を変えていくと、グルタミン酸ナトリウム100%の状態から少しずつイノシン酸ナトリウムを増やしていくと、急激にうま味が強くなる。20%を超える当たりまで急激にうま味の強さは上昇し、その後ほぼ横ばい状態になる。そして80%を超えたあたりから急激にうま味は弱まっていく。
このグラフがほぼ左右対称であるところから、MSG:IMPとIMP:MSGのいずれであったも同じような混合比であればほぼ同じうま味の強さになるようだ。
このうま味の相乗効果は非常に大きなもので、例えば昆布のダシ(主にグルタミン酸)と鰹ダシ(主にイノシン酸)を合わせることはうま味の相乗効果から理に適っている。
ちなみに人間の唾液にはグルタミン酸が少量含まれているため、核酸系の調味料をうま味の相乗効果なしにで味わうことは実は出来ない。だから核酸系はうま味成分というよりはアミノ酸系うま味の増強剤として働いているのではないかという見解もある。
いずれにせよ、アミノ酸系うま味と核酸系うま味が混合されれば単なる足し算以上のうま味の増強があるのだから、調味料メーカーとしてはこれを利用しない手はない。
手軽で、しかも効果的にうま味を出すことができるのだから。そちらの方が商品として誠実というものだ。
というわけで、例えば味の素は発売当初はグルタミン酸ナトリウム単体だったものが途中から核酸系うま味成分が混合されるようになったし、ハイミーやいの一番のように初めからアミノ酸系と核酸系を混合(コーティング)した形で発売されたうま味調味料もある。
#これらを「複合うま味調味料」といって、核酸系割合の比較的低い味の素などを「低核酸系うま味調味料」、ハイミーやいの一番(キリン協和フーズ)、フレーブ(ヤマサ醤油)のように核酸系割合の比較的高いものを「高核酸系うま味調味料」という。
##つまり商品としてのうま味調味料は、単体の「アミノ酸系うま味調味料」「核酸系うま味調味料」と、両者を配合した「低核酸系うま味調味料」「高核酸系うま味調味料」の4種類が存在するということになる。
もし「うま味の相乗効果」を主眼に置くならば、高核酸系うま味調味料はそのまま使ってもかなり高い効果があり、味の素やグルエース(グルタミン酸ナトリウムのみ)といった低核酸系うま味調味料やアミノ酸系うま味調味料の場合はイノシン酸やグアニル酸を多く含むかつお節やシイタケのダシと併用するのが望ましいんだろうな。
というわけで、味の素KKの複合調味料の歴史。
なお「リボヌクレオチドナトリウム」とはイノシン酸ナトリウムとグアニル酸ナトリウムとの混合物だそうだ。上記の通りグアニル酸はイノシン酸と同じ味で、しかもイノシン酸よりもより味が強いので、イノシン酸ナトリウム単体よりもリボヌクレオチドナトリウムの方が、重量が同じでも効果は高い。
複合うま味調味料の歴史(味の素KK篇)
このあたりの配合比の変化に、企業の試行錯誤やノウハウや考え方が詰まってるんだろうね。
※「味の素プラス」「強力味の素プラス」はいずれも1年で販売終了した。
突然食いたくなったものリスト:
- 焼きそば
本日のBGM:
渡り鳥 /HIS
3’12あたりの細野晴臣の「もずもず」ってつぶやきと、「え~もずはそうじゃないよ」という清志郎のツッコミがくだらなくて素敵なのだ。(^O^)
最近のコメント