「90年代のラーメン本3」に続いて、私が持ってる90年代のラーメン本を読んでいくシリーズの2回目。
今回はこれ。
『ぴあランキン’グルメ シリーズ2』(ぴあ)
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発行:1997/01(記述がないが、1~3月の間のはず)
情報:1997/01/15現在
掲載範囲:大阪・兵庫・京都・滋賀奈良和歌山
内訳:大阪70、兵庫39、京都21、滋奈和8
掲載店数:136……とあるが、どう数えても138
表紙には「読者投票だけ! これが本当の人気店!」との文字。
「日本初!! 読者採点グルメランキングマガジン シリーズ2」となっている。ラーメンだけではなく、この1冊に「(1)ラーメンベスト100位 (2)ベスト20位京都 (3)夜景のきれいなみせ店ベストテン」が収録されている。もちろん私がこのエントリで言及するのは(1)ラーメンベスト100位ね。
前書きの「ランキン’グルメとは」の説明には、こうある。
この本は読者のみなさまから投票してただいた『読者採点シート』をもとに、今、本当に人気のあるお店、求められているお店をランキングして紹介する日本で初めての読者採点型グルメマガジンです。ランキングの基準は簡単明解、みなさまからの投票数のみです。ですから、一票でも多くの票を獲得したお店が上位にランキングされることになります。なお、得票数が同じ場合は、採点された星の数を合計して順位に反映させています。つまり、この本を見れば、マスコミや料理評論家が喧伝する「うまい店」ではなく、実際にお金を払った人がさまざまな意味で「いい」と思った店がたちどころにわかるようになっているのです。 |
※赤文字も原文ママ。
ここで念が押されているとおり、このランキングは「うまい店」ではなく、「実際にお金を払った人がさまざまな意味で「いい」と思った店」なのだ。ここは間違ってはいけない。とはいえどうしても間違ってしまうのだけれども。(^O^)
とにかくこれはあくまでも人気投票。
他のラーメン本とはコンセプトが全然違う。
こういう本なので投票数を集めることに非常に熱心だ。
巻末には「こんなにある『ランキン’グルメ』への投票方法!」という説明があるのだが、これが何とも時代を感じさせる。応募シートをハガキでとかFAXでとか書いている一番最後に「なんと、インターネットでも投票できるぞ!」とあり、「パソコンをお持ちのアナタ。インターネットを使ったことのあるアナタ…」と。97年初旬といえばまだWindows98も発売されておらず、高速ネット環境の普及の原動力になったYahoo! BBのサービスが開始される2001年にもまだまだ遠い。単に「パソコン」と読んだ時はそれはまだネットとは無関係のスタンドアロンパソコンを指していた。そういう意味で「インターネットを使ったことのあるアナタ」とは時代を感じさせるとても素敵なフレーズだ。
で、そういう応募方法でかき集めたデータを集計したラーメンランキン’ですよ。
「応募総数3284票! 候補528店の中から選ばれた」「ベスト100位&読者クチコミ36店」だそうな。こういうコンセプトの本だから投票数は生命線だと思うが、さて、応募総数3284票という数が多いか少ないか。
これはなかなか難しい話だと思うよ。
1位の天下一品総本店が174票、100位の上海が4票。なお1ケタ得票は60~64位が9票、65~72位が8票、73~76位が7票、77~81位が6票、82~92位が5票、93~100位が4票。
うーん。
これ、やっぱり少ないよねえ。そう言い切っていいと思うんだよ。
つまり、人気投票であるにもかかわらずデータが少ない……これ、致命的だよねえ。(^O^)
ちなみに同じシリーズで昔ちらりと見たことのある居酒屋ランキングでは村さ来が1位だった。……そういうことだ。
とまあ、そういう前置きがありながら、1997/01時点でのベスト100はどんな店か。
順位 | 店名 |
1 | 天下一品 総本店 |
2 | 神座 千日前店 |
3 | 薩摩っ子ラーメン 空心町本店 |
4 | 新福菜館 |
5 | 麺蔵 加納町店 |
6 | 夜鳴きや |
7 | 彩華ラーメン 上本町店 |
8 | 第一旭 たかばし本店 |
9 | 金龍ラーメン 道頓堀店 |
10 | 芦屋ラーメン庵 |
11 | めん馬鹿一代 |
12 | ラーメン横綱 吉祥院店 |
13 | もっこす |
14 | 青葉らあめん |
15 | 三馬力 |
16 | 四宮軒 |
17 | 揚子江ラーメン |
18 | 龍虎 |
19 | 二両半 都島店 |
20 | 古潭 なんばCITY店 |
21 | 天天有 |
22 | 火無夷 天満店 |
23 | 神戸ラーメン第一旭 三宮本店 |
24 | ますたに |
25 | 新進亭 |
26 | 信濃路 |
27 | 元町ラーメン |
28 | 一番星 |
29 | 元祖安さん |
30 | 金ちゃん 本店 |
31 | 九州ラーメン 福将軍 |
32 | タンポポ |
33 | 博多長浜ラーメン みよし |
34 | らんたん |
35 | 味千 |
36 | 味仙 |
37 | 十六番 |
38 | 双龍らーめん |
39 | 大阪の味ラーメン喜らく 新梅田シティ店 |
40 | 力雅 |
41 | 鳳ラーメン |
42 | 尾道ラーメン めんくい |
43 | 天竺園 |
44 | ラーメン屋敷 藤平 |
45 | 天佑 |
46 | ちりめん亭 長居店 |
47 | こむらさき |
48 | 玄屋 |
49 | らいよはうす |
50 | ラーメン日本一 |
51 | 洞魔麗 |
52 | ラーメン芳珉 |
53 | 皇蘭 JRなんば駅前店 |
54 | 剛力ラーメン |
55 | 今日しかない |
56 | 喜多方ラーメン 蔵 |
57 | ほそかわ |
58 | らーめん朱 梅田店 |
59 | ラーメン宝来 |
60 | ラーメン新心亭 |
61 | 本家ラーメン2国本店 |
62 | 白らーめん南蛮亭 二切店 |
63 | 淡水軒 |
64 | ちりだラーメン |
65 | アベノ日本一 |
66 | マキノ家 |
67 | 鳳林 |
68 | 大来軒 本店 |
69 | 珍遊 |
70 | 友屋 |
71 | 九州ラーメン博多 |
72 | ラーメン日本 池田本店 |
73 | 博多ラーメンげんこつ 豊中店 |
74 | 紅鶴ラーメン 本店 |
75 | 白龍 |
76 | ラーメンあかつき |
77 | 天龍 |
78 | ニンニクラーメン天洋 九条店 |
79 | 拉州 |
80 | 親爺 |
81 | かっさんラーメン |
82 | くりやん |
83 | じゅんちゃんらーめん 緑橋店 |
84 | まるしげ 中華そば店 |
85 | レノンののれん |
86 | 宮っ子ラーメン |
87 | 小洞天 |
88 | 天宝 |
89 | マンサクラーメン |
90 | 一級らーめん |
91 | 屋台 |
92 | 華楽園 |
93 | 真琴 本店 |
94 | 九州ラーメン 王 |
95 | 都飯店 |
96 | 浜ちゃん |
97 | 藤っ子ラーメン |
98 | まるやま |
99 | 京都一休軒 |
100 | 上海 |
93~100位の店の得票数は4票だから、(もしやろうと思えば)ランキングに食い込むことはちょっとした組織票だけであっさり可能だろう。ネット未発達の時代のほほえましさとも言える……かな? いやいや、ネットが発達していようが何だろうが、サンプルサイズの小さいアンケートってのはどれも悲しいのだ(「本当の悪趣味を教えてやろうっっ!」みたいな)。
ぴあという一流情報誌にしてこれなんだから、まあ関西のラーメン市場は当時からこうだったということね。他は知らないけど。
このランキングについて編集部の総評は、
栄光の第1位は京都に総本店を置く“こってり”の「天下一品」、3位には“ニンニク”で有名な「薩摩っ子」と、関西圏で幅広く展開している超有名人気店がランクイン。そして「神座」が堂々その間に食い込み、長蛇の列はダテではない証明となった。総体的に、「新福菜館」「夜鳴きや」をはじめ京都のラーメン店への評価が非常に高く、“京都恐るべし”の印象が強い。 |
という。確かにこの時代、関西のラーメン界は京都が頭ひとつ抜けて強かった。
ランキングに入る店が大阪の方が多いのは単に大阪の人口(つまりは市場規模)ゆえだろう。
一般投票によるランキングがどうしても知名度勝負になることは仕方ないのだろうなあ。1日1杯とか食べる人の票も、年間1杯しか食べない人の票も同じ1票なわけで。こういうランキングも1つの姿であることは間違いないのだけれど、かといってこれを誰が求めているのかというのが難しいよなあ。世の中にラーメンマニアとそうでない人がいるとして、マニアはさすがに求めてない。かといって圧倒的多数(と思われる)のマニアでない人たち(年間1杯しか食べない人みたいな)にとってこのランキングは有用なのかという話。おそらくだけども、そういう人はあまり情報を持ってないから、自分たちよりもラーメンを知っている人たちに人気がある店が知りたいんじゃないかなあ。とすればこのランキングはやっぱり参考にならないのではないかと。
とにかく複雑だ。
さてさて、こういう形式で掲載店を決めるタイプの雑誌だから、取材対象の店は編集部の意図とは関係なく決定される(はず)。通常のラーメン本であれば取材を断られれば何も語らなければいいだけのことなんだけど、ランキングとして結果が出てしまったからにはランクインしてるのに載ってない店があればそれなりの理由を書かなくちゃならない。
というわけで、この特集の最後には取材拒否された店とその「理由」のリストが載っている。
順位 | 店名 | 理由 |
13 | もっこす 石屋川店 | お店の都合により辞退させていただきます |
15 | 三馬力 | 投稿はとてもありがたいが、ランキングということについて、納得のいかないことも。今回は辞退させていただきます |
24 (23位と表記) |
ますたに | お店の都合により辞退させていただきます |
37 (35位と表記) |
十六番 | 投稿はとてもありがたいが、今回は辞退させていただきます |
53 (51位と表記) |
皇蘭 JRなんば駅前店 | 閉店しました |
65 (60位と表記) |
アベノ日本一 | 調査によると閉店している模様です |
80 (77位と表記) |
親爺 | お店の都合により辞退させていただきます |
92 (82位と表記) |
華楽園 | お店の都合により辞退させていただきます |
順位表記がいい加減なのは、前述通りサンプルサイズが小さいため同じ得票数の店がたくさんあるから。例えば華楽園は5票獲得していて、82~92位は全て5票なのだ。前書きによれば「得票数が同じ場合は、採点された星の数を合計して順位に反映させています」とあるけども、おそらく最初は同順位にしていたんじゃないかな。その時点でこの表を作ったんだろう。しかし最終的に取材拒否した店が軒並み同数得票店の中で一番順位が低くなってるのは興味深い。(^O^)
なおこの本ではランキングに入った100店だけではなく、他の店も紹介されている。
「得票数は少なかったものの、採点シートに5つ星がつけられていたり他店にない際立った特徴を持っていたりするお店や、読者の方の特に熱い思い入れがあふれるお店については「読者クチコミの店」としてテーマ別に紹介」するということだ。
というわけで「ベスト100位&読者クチコミ36店」だと。
ただ、実際に掲載されている「クチコミ」店はどう数えても38店なんですけど。(^^;
これについてはどうも「後で2店ねじ込んだ」臭さが漂う。ランクインしている和歌山の2店が中途半端な形で最終ページに追いやられているところが何とも不自然だ。(^O^)
紹介文の文字数は基本は10文字×11行=110文字で、レイアウトによって125文字くらいまである。1ページに2、3、4店のパターンがあるが、全て文字数は同じ。
この本のようにさほど文字数が多くない記事だと、文章が改行されることはほとんどない。にもかかわらず文頭の字下げって必要なんだろうか。これはこの本だけじゃなく、結構多くの本で見られる。
見開き
結構詰め込んでるようにも見えるけど見開きでA3サイズになるので結構余裕がある
いかにもぴあだなあと思ったのは、ショップデータの中に「CARD」欄があるところ。クレジットカードが使えるかどうかね。律儀にラーメンの回にも当てはめなくてよさそうなもんだ。一応見てみたら、掲載138軒中、カードが使用可能な店(もちろん当時)は2店。いずれも北京料理の王府 ひらのまち(大阪市)と大廣(奈良市)。要るかこの欄。(^^;
京都の味千の写真キャプションに「味付きのゆで卵がご愛敬」とある。「何がどうご愛敬なの??」と同誌の写真を確認してみたら、なんと、今ではかなりポピュラーになった「半熟煮玉子」トッピングは皆無で、それどころか半熟玉子がまずトッピングにない。玉子をトッピングしている店のほとんどが固ゆで玉子をそのまま何の加工もせずに(切るだけで)トッピングしている。つまり当時は味をつけたゆで玉子そのものがかなり珍しいもので、ライター氏にはこれがかなり珍奇なものに思えたようだ。
同誌掲載の店でゆで玉子を味付けしているのは心斎橋の味仙と下鴨の味千のみ(いずれも固ゆで卵)。偶然にも似た名前の店だけど、味仙は台湾ラーメン、味千は熊本ラーメンだから出しているラーメンの種類という共通性ではない。味仙は材料の多くを台湾から送ってもらってもらい「現地の味を再現」しているそうで、これを日本の「ラーメン」と別源流と考えるなら、この時点で今につながる味付けのゆで玉子を出していたのは(少なくともここに掲載されている関西の138軒中)たった1軒ということになる。
そりゃ珍しがられて「ご愛敬」とも言われるわ。
単に「味付きのゆで卵」としか呼ばれていないのも、このトッピングがまだ全然普及しておらず「味付け煮玉子」「味付けゆで玉子」みたいな呼称もなかったことを物語っている。
しかしこのようにライター氏が「なんじゃこれ?」と奇妙に思った味つけゆで玉子トッピングは、「半熟煮玉子」に進化して2000年代に爆発的に普及するのであった!! (^O^) おそらく現在ではゆで玉子をトッピングとして出す店のうち半数以上が半熟で出しているはずだ。
上記の「味付けのゆで玉子を出していたのは138軒中たった1軒」というのはこの本に掲載された写真で確認したもので、必ずしも各店のメインメニューではないとは思う。しかしとありあず数えたところによると掲載全138軒中、玉子をトッピングしているのは11軒。そのうち東京ラーメンだけが生玉子で他の10軒がゆで玉子。そのすべてが固ゆで玉子で、10軒のうち1軒がうずら玉子(大来軒の山賊ラーメン)で、残り9軒のうち7軒までが、味付けしていない普通の固ゆで玉子だった。
これをきっかけに90年代の玉子トッピングに興味を持ったので、他の本についても玉子トッピングはどういうものだったのかを調べてみた。しかしこれ載せるとまたエントリが長くなるのでそれは次回以降に持ち越すことにしよう。
ここからは個別記事への感想。
1位の天下一品 総本店はこの時点(1997/01)で「全国に130店以上」のチェーン展開だそうだ。圧倒的な知名度ですな。公式サイトによると、2010/11/19現在で220店舗になっている。
金龍ラーメン 道頓堀本店の「本支店」欄には相合橋店が書かれていない。前回紹介した『本当においしい店101』(1995/07)にもなかったし、この後できたんだなあ。そのあたりの前後関係がわかってないや。
ラーメン屋敷 藤平は『本当においしい店101』にはヤング藤平として登場した店。「純和風の一軒家を店舗にした、「ヤング藤平」に変わるお店がココ」とある。推薦者からの口コミが「お店は新しいけど味は本店と全く同じだ!」というのは推薦者も編集部もホメコトバだと認識しているようだが、さて……。(^^; 「本支店」の欄には中津の藤平本店しかなく、この後10年ちょっとで起きる膨張⇒破綻という目まぐるしい展開はまだ予想できなかったよなあ、誰にも。
神戸の麺蔵は、ここでも「すっかり定着したキムチラーメンの考案者がココ」とある。ふううむ。
らいよはうすの名前からは『本当においしい店101』ではあった「2号店」の文字が消えている。「中津のビルのガレージで屋台を開いて大人気になったあのお店が、すぐ近くに店舗を構えて4年」だと。なるほど、だからはじめは「2号店」と呼んでたのね。納得。この記事にも「食前酒」の文字がある。雑誌としてはこういう他の店とは違う点は積極的に紹介したいものだから、おそらくメディアに出るたびに紹介されているはず。だから実際に行ってありつけないとガッカリするね。(^^;
じゅんちゃんらーめん 緑橋店は行ったことがない。しかも残念ながらもうなくなっている。だから想像するしかないのだが、「ラーメン以外の中華メニューも豊富に揃ってます」とあり、『本当においしい店』でも「中華の一品料理を麺に載せた」となっているわけで、これはどちらかといえば「店名に『らーめん』とつけた中華料理屋さん」と考えるべきじゃないかなあ。だから「エビチリもフカヒレもある。ただモノじゃない!」という推薦者(一般投票企画だからして)の言葉は、それが中華料理屋だと考えたら何ら驚くことはないんだよねえ。
小洞天「合成保存料など一切使わない手作りの餃子も人気」とある。店で手作りする餃子に保存料を入れる店の方が珍しいと思うんだが。自分のところで作って自分のところで消費するということは、どのくらいで在庫がなくなるかの予想が立つし保管環境も把握できてるわけで、そんなのに保存料を入れなくちゃいけないとしたら、どれだけ仕込みするのがイヤなんだよと。(^O^) しかも餃子は冷凍が効くわけで。だからそんなのをウリにしなくていいじゃないの。さらにわざわざ「合成」と限定しているのはどうしてなんだろう。
剛力ラーメンはいろんな創作メニューがある。中でも見た目にもインパクトのあるマヨネーズラーメンが、どうしても絵づらとして雑誌社の受けがいいので使われてしまう。で、これ目当てに行った人が「なんだ、見かけ倒しだなあ」とガッカリしてもう来なくなる……という悪循環があるような気がしている。正直、大したことないんだマヨネーズラーメン。(^O^) このメニューがこの店の知名度を上げたことは間違いないとは思うが、このメニューでこの店を評価されるのは気の毒だと思う。なんとも複雑な話だ。(^O^)
名前は書かないが、「料理の本を500冊ほど所持して研究したというこの味、1度試してみる価値あり」という店があった。この店はランキングには入っていない「読者クチコミ」枠の店で現在はすでに閉店している。ラーメンって難しいよね。
鳳ラーメンは「人気の豚骨スープのラーメンには防腐剤や添加物、化学調味料などを一切使っていない」と。バブルを過ぎて『美味しんぼ』も通過した日本は、ラーメンでさえこのあたりを「使っていない」ことがすでに売りになっていたってことね。
博多ラーメン げんこつ 豊中店この時点で支店は川西店、和歌山店、宝塚店の3店(計4店)みたい。第1号店の伊丹店は1993年オープンだから、まあそんなところかな。ここから広がっていく。ちなみに現在は21店舗あるみたい。
紅鶴ラーメン 本店は『本当においしい店101』で「現在、麺は特注しているが、今後は水にこだわって製麺の方にも力を入れていくそうだ」とあったとおり、自家製麺になっていた。
二両半 都島店を見ててふと気づいたけども、ここには「半ちゃん焼めし定食」があるんだねえ(今もある)。この名前、引っかかるよなあ。(^^; ⇒これね。まあリズムなんだろうけど。
こむらさき「抹茶ラーメン」とかある……。
ラーメンあかつきの店長は「彩華」で修行したのか。へえ。
京都一休軒の「アトピーの人でも安心して食べられる天然素材100%の「純豚骨ラーメン」」ってコピーはかなり危険な言い切りじゃない? 原因も特定されていない疾患だぞ。「天然素材100%」が何だというのだ。
天天有「1玉120gとボリュームもあり」というところには時代かなあ。それとも今でもラーメン1玉90gみたいなところもあるかな。
東京ラーメンの定番トッピングである生玉子は当時では珍しかったようで、写真キャプションには「卵をプチッとつぶして混ぜたスープの味わいが……」とある。しかし「プチッ」ってあんた。どんな擬音なんだよ。(^^;
麺についての記述はどうかな。
金龍ラーメン 道頓堀本店「コシのある自家製の麺」
芦屋らーめん庵「麺はこだわりの自家製麺」
大阪の味 ラーメン喜らく 新梅田シティ店「麺は喉ごしのよい自家製ストレート細麺を使っていて、スープとの絡み具合もマル」
ラーメン宝来「シコシコとした食感がたまらない自家製麺は卵の入った中細麺」
尾道ラーメン めんくい「地元直送の独特のコシと歯ごたえのある麺」
喜多方ラーメン蔵「喜多方の自社工場直送の平打ち・ちぢれ麺」
古潭 なんばCITY店「麺は太めで、食べるのが遅い女性も、コシのあるまま最後までおいしくいただける」『本当においしい店101』の阿月本店と同じく、目的のはっきりした麺。
龍虎「麺、チャーシュー、メンマなどの食材もすべて自家製で基本的に無添加」何だよこの場合の「無添加」ってのは??
一級らーめん「麺は、スープにぴったりのものをと、社長自ら全国を廻って探し当てた喜多方産だ」
九州ラーメン博多「チャーシューほか、すべて自家製でがんばってます」
上海「添加物を一切使わない無農薬の小麦粉を打った細麺」『本当においしい店101』では国内産小麦粉を使っていると書いていたので、無農薬の内麦なんでしょうな。このあたりも『美味しんぼ』現象的なものを見るけど、実際はどんなもんか。
ちりめん亭 長居店(長居店はもうない。新大阪店はまだある。現在大阪府下には4店舗ある)「極細と平打ちの2種類のちぢれ麺でおなじみの店。機械打ちとはいえ、独自の多加水製法によって30時間も熟成させた完熟麺のため、非常にコシのあるシコシコした食感が味わえる」と、全記述の9割近くが麺の説明で費やされている。これは異例。しかし「機械打ちとはいえ」という記述や、他の店の紹介で出てくる「手打ち」という記述からして、このライターにおそらく一般的な製麺がどういうものなのかの知識はないと思われる。このあたりも2000年代にラーメン界が麺重視に変わってきた状況とのギャップが感じられる。ちなみにちりめん亭はモスバーガー系のチェーン店。
浜ちゃん「長浜直送の極細麺」
麺屋 神連「48時間ねかして作っているという自家製麺」
力雅「スープや麺から、チャーシュー、キムチまで、すべて自家製というこだわり派」「コシが自慢の手打ち麺」
鳳ラーメン「自家製麺には卵の殻が入っていてカルシウムたっぷり」別にラーメンの麺でカルシウム補給しようと思ってる人もいないと思うけどねえ。……それにしてもどうして卵の殻を入れるんだろう? 雑菌のことを考えるとさすがに製麺に使った生卵の殻を入れてるわけじゃないと思うけど……。
かっさんラーメン「コシのある玉子麺」
九州ラーメン福将軍「添加物が一切入っていない細麺」
紅鶴ラーメン本店「天然水で作る自家製麺は極細ながらもしっかりとしたコシがあり、歯ごたえも抜群です」
マンサクラーメン「横浜直送のちぢれ麺」
ラーメン専科四季「特注の玉子麺」
ラーメン食堂とん太「オリジナル生麺」
レノンののれん「麺は特殊な浄水器の水でゆでるので、麺そのものの味が引き立ってる」「引き立ってる」ってなんだよ(^^;と思うけど、しかし茹でに使う水にまで言及しているのはこの店しかない(既に閉店してる)。その意味ではなかなか珍しいけども、 しかし「特殊な浄水器の水」なんて表現で納得できるのか。(^O^)
翁介「自家製麺」「1度来られたお客さんの好みや麺の堅さや味は忘れないように心がけています」という主人の言葉。「お客さんの好みや麺の堅さ」ってところはいかにも昔ながらっぽくてよい。ちなみにこの店は1948年創業の老舗。
楓林ラーメン「オリジナルのレシピで作らせる麺はコシが強く、ツルッとした喉ごしがいい」
寅さん「麺は25軒もの中から生の状態で噛み比べて選んだもの」正直、あまり意味がわからん。できれば茹で上がりの状態で比べて欲しいなあ。客は生を食うわけじゃないんだから…ってまあ、客にはわからない微妙な違いがあるのかもしれないねえ。
らんたん「かんすいや化学調味料を一切使わない粘りのある麺」かん水まで使わないとはなかなか凄い。
味千「麺は熊本から取り寄せるなど、本場熊本仕込みのご主人のこだわりが味に生きている」
天龍「やや太めのむっちりした麺」
藤っ子「大釜で泳がすようにゆがく麺もグー!」グー!
麺の茹で方については神座 千日前店の「麺はやや堅めにゆでて、食べる間にベストの状態にと細かく気を配っています」という店員のコメントがあった。なるほど、神座のラーメンは白菜を鍋で茹でて熱々の状態で出てくるからそういう気遣いも有効かもしれないな。
大阪の味 ラーメン喜らくまで自家製麺をアピール。
95年の『本当においしい店101』に続いて「自家製麺」をアピールする店は多いとは言わないがやはりある。しかし麺そのものをアピール点にしている店はこの時点(1997/01)でもまだごく少数だ。この時点でもまだラーメンは「スープ」であり、それにトッピングで店の個性を出す、というのがだいたいの定番紹介になっている。
しかも自家製麺であっても、これが「こだわり」という文脈で語られることも少ないように思う。あるいはコストダウン的な印象が強かったのかもしれない。麺のこだわりはむしろ、「麺は、スープにぴったりなものをと、社長自ら全国を廻って探し当てた喜多方産」(一級らーめん)や、「長浜直送の極細麺」(浜ちゃん)のような記述になっている。
前回に続いて、魚介系のスープについての記述。
剛力ラーメン「鶏ガラやホタテ、かつお節、大根、レモンなど、常時数十種類の素材をコトコトと煮込こむ、奥の深いスープが自慢だ」(「煮込こむ」はきっと「煮込む」の誤植)
支那そば 大正「豚骨と鶏ガラに、昆布や野菜を加え、3時間煮られる」
東京ラーメン「豚骨と鶏ガラを煮込んだベースに、昆布やしいたけを細かく刻んで炊いただしなどを加えた」
この他に『本当においしい店101』(1995)にはなく、この本で登場する特徴が2つある。
それは「タクシー運転手信仰」と「女性に人気/1人でも入れる」。
特に80年代くらいをピークに90年代までは食べ物に関して「タクシー運転手信仰」とも呼べる認識が世の中には存在した。タクシー運転手はおいしい店を知っているというお話。当時はそれなりに根拠があったはずだが、現在では雇用情勢の変化で業界そのものが変質したしうかうか路上駐車もできなくなったりで、こんなことはほとんど言われなくなった。
この本ではほんの少し登場するだけだが、後に紹介する本ではこの信仰が爆発しているので(^O^)、一応、この本に出てくる記述も紹介しておこう。
第一旭たかばし本店には「何より店の前に列ぶタクシーの列がおいしさの証だ」
支那そば 大正「タクシーの運転手や近所の主婦などで連日大賑わいだ」
で、女性について。
当時は牛丼屋と同じくラーメン屋は女性客があまり行かないということになっていたわけだが、ということは人口の半分を占める女性客は大いなる未開拓市場ってことで、古今、多くの店が女性客を取り込もうと工夫を重ねてきた。
しかもこの本はぴあが作っているわけで、そのあたりの視点があって当然。
ただ実際には女性客に関する記述はそんなに多くない。
これもまた、次回以降に紹介する本で爆発する。(^O^)
だいたいのパターンとしては「女性客が多い」とか書くことで「女性客も来ている(ので気軽に来てね)」と間接的にアピールするという感じ。
支那そば 大正「ウチは女性の1人客も多いことが嬉しいですネ」
新福菜館「見た目よりあっさり味。女性の方にどんどん食べていただきたいですね」
彩華ラーメン上本町店「女性ひとりでもふらっと気軽に来ていただける店です」
芦屋らーめん庵「こってり風に見えますが、食べると意外にあっさり味。女性ファンも多いんですよ」
大来軒本店「あっさりした塩味の海賊ラーメンは、パスタより栄養満点、女性におすすめです」
らいよはうす「「これくらいなら女性でも十分食べられるサイズなので、ぜひお試しを」
上海「女性には野菜満載の『五目あんかけそば』も人気」
古潭 なんばCITY店「麺は太めで、食べるのが遅い女性も、コシのあるまま最後までおいしくいただける」
ラーメンあかつき「見た目よりあっさりしているので女性客にも好評だ」
ちなみに「女性1人の客が多い」みたいな店でも、店内写真に女性が写ってることはまずない。(^O^)
あと、少し気になったのは「無添加」「合成保存料不使用」みたいな言葉があまりにいい加減に使われていること。
「無添加」ってのは何を添加してないのか。「添加物」? じゃあ添加物って何? 例えば麺に卵を入れるのは添加物なのかどうか。かん水は添加物かそうでないのか。そのあたりの線引きが全くできてないようだし、もしそれができていたとしてもじゃあ添加物が入ってたらどうなのかまでの共通認識がないと「無添加」という言葉に意味はないよね。店が商品コピー的にいい加減なことを書くのは好ましくないものの仕方ない部分はあるとして、伝える側がそのまんま真に受けてどうするんだと思ったりもする。
あと、重なるけど、
「アトピーの人でも安心して食べられる天然素材100%の「純豚骨ラーメン」」
というのは非常に危ないコピーだと思う。
アトピーは命にはかかわらないかもしれないけれど、やはりこういう↓話と同じ問題を感じた。
(有)池田養鶏場の美味もみじ卵 美味さくら卵のサイト
http://d.hatena.ne.jp/ohira-y/20101030
このあたり、90年代はまだまだイノセントだったのかなあ。
突然食いたくなったものリスト:
- 月餅
本日のBGM:
I Shot the Sheriff /Eric Clapton
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