一介のラーメン好きとして、私はこれまでラーメンやつけ麺そのものや店以外にも、
・丼の話(「ラ丼を売らん」)
・プラスチック割り箸の話(「この箸、割るべからず」)
・看板の話(「コンサル趣味」)
・のれんの話(「のれんの野望」)
・コンサルの話(「Let’s 導入 つけ麺!(加筆アリ)」「つけ麺維新でつけ麺バブル」)
・ラーメン職人の話(「Show Me The Way(大幅加筆)」)
・関西のつけ麺の歴史の話(「南大阪のつけ麺、夢のコラボっっっ!」「大阪のつけ麺店の魁」)
などを書いてきた。
今回はそれの延長ということで、割り箸の話。
以前にも書いたことがあるが、私は「マイ箸」を持ち歩いている(「だったら真ん中を渡ればいいんですよ」)。
「マイ箸」という文言が出てきた時点で既に短絡しちゃう人がいるのは判っている。「環境問題に気を配っている人」もあるだろうし、あるいは正反対に「環境問題に気を配っているつもりで勘違いした自己満足の行動をしている人」とか。この2つの反応はおそらく脊髄反射的な速度で出てくるだろう。
しかし上記エントリに書いたように、私がマイ箸を持ち歩くのは、「エコ」というよりは「もらったから」「この箸の方が割り箸より使いやすい」「この箸で食う方が割り箸で食うよりうまく感じる」以上の意味はない。
だから店では「マイ箸」を必ず使うわけではなく、店によっては(あるいは面倒くさい時は)普通に備え付けの割り箸を使うし、あるいは洗い箸を置いている店であっても気に入らなければ「マイ箸」を使うこともある。スーパーで惣菜を買った時に「お箸は何膳おつけしますか?」なんて聞かれたら人数分以上の数を言うことも辞さない。
とはいえリアルの世界でも短絡する人はたくさんいて、私がマイ箸を使っているのを見て、こちらが戸惑うほどに(?)「いい人」と思ってもらえる率が高いのには正直驚いている。
さて。
割り箸とマイ箸の関係はなかなか微妙だ。
もっとはっきり言えば、「エコ」と結びついた「マイ箸運動」みたいなものが微妙なのだ。
このあたりの議論は、だいたいこんな↓感じに落ち着く。
「だって、いいことじゃない」
「アホか。割り箸なんて全体から見て微々たるもので、『マイ箸』なんて使っても役に立たんわ」
「『エコ』って姿勢が大事なのであって、これのみの有効性だけを見ても仕方ないじゃない」
「だいたい割り箸は間伐材を使ってるんだから、森林破壊どころか森林維持に役立つんだ。『マイ箸運動』は自己満足に過ぎんわ」
あたりで議論が終わっているような気がする。
そしてお互いがお互いを「そう思ってるはずだ」と決めつけ合う。
あれれ、この構図ってどこかで見たような……。
そう、これは「化学調味料論争」と構図が同じなのだ。(^O^)
でもね、この問題もどうもそんなに単純じゃないようだ。
で、そもそもマイ箸は「エコ」で割り箸はそうじゃないのか、という話。
この論争はかなり昔からあって。
ここで一気に紹介するには長いので、それはまた別の機会に。
今のところはとりあえず、以下のような情報を示すことにする。
- 割り箸はもともと奈良県吉野郡下市地方で誕生した。南北朝時代に、後醍醐天皇に杉の割箸を献上したところ気に入られて、それ以来毎日作って献上していたという伝説が残っている。吉野と後醍醐、そして杉。話がよくできている。ただしこのときの「割り箸」は、杉の柾目に沿って「割って作る箸」で「割り箸」。実際は普通の箸だ。
- 今のような、使用者が使う前に割る箸は「割りかけの箸」「引裂箸」などと呼ばれた。
- 「割りかけの箸」「引裂箸」は吉野には文政頃(1827年頃)に成立したとする伝承があるが、文献的には天明初期(1783年頃)と推察されている。
- 吉野では当時、酒樽が多く生産されており、割り箸も樽の端材から作られた。つまり国産割り箸は発祥当初から低利用材の有効活用として生産されてきた。
- 幕末に喜田川守貞が書いた『守貞謾稿』という風俗記録がある。天保8年(1837年)から約30年にわたって見聞した三都(京、大坂、江戸)の記録で、うどんやそばの話をする時もよく登場する。これの「鰻飯」のところに、
必ず引裂箸を添える。此の箸は文政以来ごろより、三都ともに始め、用いる。杉の角箸の半ばを割ってある。食べるときに裂分けて用いる。これは再用しないで清浄であることを証明している。そうではあるが、この箸はまた箸を作るところに返して丸箸に削るということである。鰻飯の時だけではない。三都とも諸食店でよくこれを用いる。名ある店では用いない。もとより清潔のためである。 とある。
- となると割り箸はさほど高級ではない店で使われていたということになる。つまり安かったのだと。それは例えば落語の「時そば」で登場する夜泣きのそば屋で割り箸が登場することからも伺える……と言いたいところだけども、「時そば」の原型になった上方落語の「時うどん」には割り箸は登場しない。「時そば」は明治年間に三代目柳家小さんが「時うどん」を東京に移植したということだから、そこで加えられたアレンジだろう。とすればこの割り箸観は明治年間のそれだとも考えられるので、どの程度江戸の習俗を伝えているかは疑問が残る。
- しかし実際のところ、割り箸がそれほど安いものだったかどうかは私にはよくわからない。
「明治時代に割箸を客に出すといえば、それだけでよほど高級な料亭ということになったそうである。それは、昭和の初期頃まで一般の飲食店の箸は塗の丸箸で、卓毎に箸立てに束ねて立ててあり、使用後は洗い直してくりかえし使われていたからである。大正以後、飲食店で割箸を出す習慣が広まり始め、昭和の初めに割箸製造機が考案されて大量生産が可能になった」(『箸』向井由紀子・橋本慶子)
という記述もある。記録上は明治20年頃に多量に東京方面に出荷された記録が吉野に残っており、明治30年頃には現在用いられているようないろいろな形の割箸が出回ったと考えられている。そして昭和初期には割り箸製造機の発明によって箸にスジが入れられるようになり、それまで杉のように柾目の通った材料でないと作れなかった割り箸が、松やシナのような柾目の通らない木を材料にできるようになった。もしも割り箸が安くなったとすれば圧倒的にこの時点だったはず。
割り箸製造機の発明によりスジを入れることができるようになり、柾目が通らない材料でも割り箸を作ることができるようになった - 現在日本で使われている割り箸は、その97%が輸入で、そのうちの99%が中国からの輸入である(少し前まで98%だったのが、国産が少しだけ盛り返した)。
- 以下は平成20年度『環境・循環型社会白書』(リンク先は9.8MBのpdfファイル)に掲載されているグラフ。
割り箸の生産量と輸入量の推移 - 日本で消費される箸に使われる木材は30万m^3。それは年間の木材消費量の0.4%に相当するという。これは1989年、つまり20年以上前のデータ(通産省生活産業局日用品課 神宮勉氏による)ではあるが、当時でも年間需要が240億膳あったのだから数字は現在とあまり変わらないと思う。
- 国内産割り箸がこの30年間でシェアを80%から2%にまで落とした理由は、なんといっても価格。輸入材との価格競争に敗れた。
- パプアニューギニア、韓国、南ア、メキシコ、カナダ、チェコ……その他数多くあった割り箸輸出国の中で価格競争に勝ち残ったのが中国ということになる。現在では中国以外はベトナム、ロシア、チリなどからの輸入があるが、いずれもゼロ点数%ずつというところ。ベトナムは竹製割り箸が多く、竹製だけでいえば既に中国製を逆転している。
- とはいえ割り箸輸入を巡る情勢はいつもかなり流動的で、今年の統計はまだ出ていないものの中国産の激減が予想されている。それはプラスチック樹脂製の洗い箸の普及による国内の割り箸需要の縮小と、さらに中国の輸出政策の変化などが背景にあるようだ。総輸入量は150億膳にまで落ちるとの予測もある(これは数年前の250億膳から見て激減だし、輸入量で見れば20年前の水準。そして国内産が劇的に伸びていない限り、総需要量も上記グラフの左端 ── 約30年前より少なくなることになる)。
- 国内産割り箸は現在、高級品に特化した形で生き残っている。主な生産地は奈良県吉野。
- 輸入割り箸の大半は白樺、アスペン(ホワイトポプラ)製。つまり熱帯林ではなく北方材。「割り箸悪者論」ではよく割り箸によって熱帯林が破壊されているという言い方がされたが、実は熱帯林は柔らかくて箸には使えない。
- 竹製の割り箸はかつて鹿児島がかなり大きなシェアを持っていたが、既に輸入品に駆逐され、全ての業者が廃業した。
- 竹製割り箸で注意が必要なのはカビ。乾燥させるのが主な対策だが、中国では防カビ剤を用い、その残留が問題になったことがある。燻竹などは手間とコストがかかる分、割り箸に使われるようなことはあまりない。
- 国内産割り箸の場合、杉、檜などが使われることになるが、酒樽の生産がほぼなくなった現在、割り箸は建築材を樹木から切り出した際に余った背板、端材を使って作られている。つまり木を全部使って作る中国産とは木材の使い方が違う。
建築材を切り出した残りを使う。 - たまに「割り箸は間伐材を使っているから使えない資源の有効利用であり、また間伐の推進にも役に立つのでむしろ森林保護につながる」という表現がなされることがあるが、これはなかなか微妙な表現。というのも、まず割り箸のほとんどを占める輸入割り箸にはこれは当てはまらないし、国産割り箸に限ったとしてもその表現は微妙。上記の通り、国産割り箸はいわゆる「間伐材」ではなく、建築材の背板、端材から作られているのだから。では間伐材という表現は間違いなのかといえば正確に言えば間違いではない。というのも、吉野杉の場合は本伐するのに100年以上かかるので、それまでに切り出される樹木はたとえ樹齢80年であっても「間伐材」と呼ばれる。それを材木に使った時に出る背板を使った箸は確かに「間伐材使用」ではある。でも、「間伐材使用」という表現に対して世間一般が持つ、かなり若い、材木に使えない木を使って割り箸を作るというイメージとはかけ離れていることも確か。そういう木は柔らかすぎて箸には使えないのだ。だから「マイ箸なんて自己満足。割り箸は間伐材を使ってて……」とか、あるいは国産割り箸のパッケージにたまに書かれている「間伐材の有効利用」といった表現は、間違いかと言われれば確かに間違いではないが、限りなく黒に近いグレー。
- とはいえ、国内産割り箸が使い道のない木材資源の有効利用であることは間違いない。この背板を割り箸として商品化することで間伐の費用がいくらかでも捻出できるのなら、割り箸は日本の森林の維持にいくらかでも役に立つことになる。だからこそつまらないイメージ混乱の元になる「間伐材」という表現はやめた方がいい。
- しかしどうやら最近、その(一般のイメージ通りの)間伐材を使って割り箸を作る技術が開発されたらしい。もしもこれがちゃんとした技術であり、それが普及すれば非常に心強い。期待したい。
- 以上のことを考えると、現在の割り箸を環境問題と絡めて考える場合は、輸入割り箸と国内産割り箸とに分けて考える必要がある。最初に紹介したような短絡的な(といっては申し訳ないが)2つの意見というのは、その一方しか見ていない(知らない)ことから出てくるのではないかと思う。
- 地球環境、いやそれ以前に日本の国内林業が瀕死の状況にある現在、割り箸から見えてくる環境問題とは国内林業をどう振興するかという問題に行き着くはず。その視点で見れば、外食で使用する箸の優先順位は 国内産割り箸>マイ箸>輸入割り箸 になると思われる。国内産割り箸の使用は日本の国内林業の振興に確実に役に立つ。ただ、国内産割り箸は高くて高級店でないとなかなかお目にかかれない(杉や檜製の天削、利久、卵中箸など 単価で中国製アスペン箸の数倍~数十倍)。もちろん私が行くようなラーメン店で見たことはない。なのでもしも「環境」という視点から箸を持ち歩こうというのなら、一番いいのはマイ国内産割り箸を使うこと。(^O^) これを持ち歩いて、店に国内産割り箸があればそれを使い、なければ持参したマイ国内産割り箸を使う。そして手持ちのマイ国内産割り箸がなくなればまた買う、というのが一番目的にかなう方法だと思われる。
- 輸入割り箸の多く、あるいはごく一部(北海道)の国内産割り箸には白樺製の箸がある。白樺は「先駆樹種」といって森林ができる時に一番最初に生えてくる樹種なのだそうだ。最初に白樺が生え、これが数十年で寿命となり次の樹種に譲ることになる。そこで造林地の場合は、最初に生えた白樺が目的樹種の生育を妨げることのないよう伐採することになる。……これを「間伐」と定義し、これを使った割り箸を「間伐材使用」としている国内業者もある。しかし中国製割り箸に使われる白樺はそういう目的ではないようで、もしも「環境破壊」というなら中国産の作り方はそれに当てはまるだろう。
- 実際に数年前、中国は国内の森林保護を理由に輸出制限の動きを見せたことがある。ただ結局それは口実に過ぎなかったらしく、現在もほとんど輸入量、価格に影響はないようだ。
- なので、もし「環境」という視点で見るならば輸入割り箸はあまり使わないというスタンスが正しいかもしれない。
- なお白樺やアスペンは建築材などには使えないので1本まるごと使われる。木を橋の長さに切って6~7時間煮込んで柔らかくした後、大根の桂剥きのように剥いて板を作り加工する(このやり方を「ロータリー法」という。ちなみに↑の背板から作る時はスライス法という方法を使う)。
- では最近増えてきたプラスチック樹脂製の洗い箸はどうなのか。同じものを何度も使うので「環境に優しい」的な視点から普及してきているが、プラスチック樹脂の製造時とそれを毎回洗浄する時、そして廃棄焼却時の環境負荷とを考えれば、割り箸に対してそれほどのアドバンテージがあるわけではない。また白木の箸とプラスチックよりは白木の割り箸の方に日本人としての情緒的な優位性はどうしても残るだろう。とはいえプラスチック樹脂製の洗い箸は「ゴミ減量」には役に立っていると思う。木製割り箸がその点を解決できればいいのだけれど、やり方によってはコストや環境負荷の面で本末転倒になりかねない。ここは何か妙案が期待されるところ。いずれにせよプラスチック樹脂製の洗い箸を使うかどうかは、同じ「環境」という視点で見るとしても、何を重視するかで変わると思う。決して、単純に「割り箸が環境破壊で洗い箸が環境保護」などと考えることはできない。
- プラスチック樹脂製の箸には変わったものができていて、「リサイクル」を謳うプラスチック樹脂製の割り箸というのが今はある。店に1000膳だったかの箸がまとめて送られてきて、その箱に使用済みの箸を入れて送り返すというもの。送り返された箸は工場で「リサイクル」されまた店に送られるのだが、これは洗うのではなく、再び樹脂を溶かしてまた割り箸の形に再成形するのだという。使用済みを送り返す時は店である程度汚れを落として発送、さらに工場でも洗浄されるため、「リサイクル」には洗浄、輸送、再成形と多くの行程を踏むことになる。まあ確かに「リサイクル」ではあるけれど、目的は何かを考えればちょっと首をひねってしまう。
- で、「マイ箸」。(しつこいようだが)もしも「環境」という視点で見るなら、上記の通り国内産割り箸を使うのが一番いいだろう。ただしこれにはお金がかかる。もしそれを抑えたいのであれば次善の策としてマイ箸を使うことはそんなに無効ではない。国内産割り箸を置いている店ではそれを使い、輸入割り箸やプラスチック樹脂製の洗い箸を置いている店ではマイ箸を使うというやり方なら、国内産割り箸を消費し、かつ輸入割り箸による環境破壊を防ぐことができる……ほどの効果があるのかどうかはよくわからないが、少なくとも方向は間違っていないだろう。つまりマイ箸を国内産割り箸使用/輸入割り箸不使用の調整弁に使うという考え方。あるいはそういう使い方をすることで店に国内産割り箸を使用させるインセンティブになるかもしれない。
- ただしそれは「資源の無駄遣い」を抑制することによる環境保護ではなく、むしろ瀕死の国内林業に少しでもお金を回し活性化することにより国内林をうまく回していこう、そうすることで森林は健全に維持される、という形での環境保護になる。もし今年の割り箸需要の大きな落ち込みが国内産割り箸にまで波及し、その穴をプラスチック樹脂製塗り箸が埋めているなら、それはむしろ国内林業に悪影響を及ぼしかねない。もしもそうなら「環境保護」を謳う人たちはマイ箸を封印し、そしてもちろんプラスチック樹脂製洗い箸も拒否し、率先して国内産割り箸を使いまくるべきだろう。もちろん「環境保護」をアピールするためにプラスチック樹脂製洗い箸を導入した外食産業も、思い切って国内産割り箸を採用するべき。
- 例えばこの前行ったデニーズでは、国内産杉を使用した割り箸が提供されていた。
デニーズで提供されている割り箸。
「間伐材使用」と書いていないところもわかってるねえ、という感じ。
こういうチェーン店が導入するということは、価格と同時に安定した供給を実現できたということだろう。頑張ったなあと思う(デニーズでは1997年から年間約4000膳使う割り箸は全て吉野杉の建築端材を使ったものを使用しているそうだ)。このように、コスト高と考えられている国内産割り箸を大手チェーン店で導入することも可能なのだ。聞くところによるとナチュラルローソンでも国内産割り箸が使われているそうだ。 - ナチュラルローソンのサイトでは「国内産間伐材原料」という表現が使われていてちょっと考えてしまうが、それでも、「「割り箸」のパッケージに広告を掲載し、広告費の一部で間伐の費用を賄うことで、森林の手入れを促進し森林保護につなげていく」という文言は、割り箸による国内森林保護のための取り組みのちゃんとした説明になっている。
- ちなみに写真をよく見ればわかるように、デニーズの箸は「割り箸」といいつつ最初から2本が分離している。割り箸にもいろんな種類があって、卵中箸やあすか箸(片口卵中)といわれる箸は最初から分離している。高級品になるとこれを紙で止めたりする。
- 何度も言うが、これらの話はあくまでも「環境保護」という視点に立ったら、という話であって、無数にある中のたった1つの視点に過ぎない。箸という、日本人の食に重要な役割を持つ道具には様々な側面がある。ヨーロッパでは住のプライバシーが発達したが、日本では食のプライバシー(僕の箸、私の茶碗……)が確立していたという分析もあるし、使用後に箸を折ったり信仰的な側面もある。その他様々な側面がある道具だからこそ、たった1つの視点から見てどうしなくてはいけないという普遍的な答えが出るわけはない。「お気に入りの箸を外でも使いたい」という動機でマイ箸を使ってもいいはずだし、やっぱり誰が使ったかわからない箸を使うのがイヤだから割り箸を使う、輸入とか国内産とかは関係ないという人がいてもいいと思う。ただ、もしも「環境保護」という明確な目的を持って「マイ箸運動」をするのであれば、その行動が本当に目的に叶っている行動なのかをちゃんと考えるべきかもとは思う。例えばこういう人は、やっぱり「エコ」が主眼だと思うのだ。確かにこの人は一歩引いて「本来の目的は?」というのを考えているけど、それでももう少し調べればきっともっとその目的に合った、今とは違った行動が見えてくると思うんだよね。
- また、マイ箸を「エコ」の精神性を重視するために持つというのであれば、いっそのことマイ箸に使う箸も既製品を買うのではなく国産木材の端材を使って自分で作ってみるというのもいいかもしれない。楽しいし、必ずや「意識」も高まることだろう。
- とはいえ、その辺の木でやっちゃダメよ。杉や檜には殺菌効果があるので、自分で作るならそれでやるのが正解。
- 「マイ箸」などでググると、「環境」などを謳いつつ、箸や箸袋を結構な値段で売っているサイトを見かけて戸惑う。個人個人のそういった想いが、結局は業者が儲けるための一手段として利用されいる面が、まあ多くはないのだろうけれども確実にあるのじゃないかと思う。
- 使い終わったあと、国内産割り箸を捨てるのはやっぱり忍びない気もしてしまう。鉛筆削りみたいに手でゴリゴリと回すと1本の割り箸から何本もの「マイ爪楊枝」が作れるような機械があればいいのに。(^O^)
- 割り箸の市場が流動的だと書いたが、それは国内産のシェアが高かった時代もそうで、奈良県吉野が国内シェアの80%を占めた時代もあるし、その後アカマツを使った岡山・広島がトップに立ち、白樺、シナを使った北海道がシェア40%でトップとなった頃もある。
ちなみに私がマイ箸を持ち歩くのはこの箸が気に入ってるから。麺類に合ってるし手になじんでるからね。
ただししたり顔で上記のようなツッコミをされるとウザイので、一応、国内産杉製のマイ割り箸も持ち歩いている。(^O^)
ところでマイ箸を使っていて一番困るのは食べた後だよなあ。
使い捨ておしぼりで拭くか、それがなければコップに入れた水でゆすいでティッシュで拭くかしていたが、この夏以降は経口摂取OKの(^O^)消毒用アルコールを小さいスプレー瓶に入れて持ち歩いている。
#「Ora²マウススプレー」の空き容器が小さくていいよ。
もちろんこれまでもそんなことしなくたって大丈夫だったのだけど、まあ、念のためにね。なんか楽しいし。(^O^)
ということで本題。<え?
割り箸の種類を見ていこうと。
のれんなどと同じく、区別がつくと楽しいでしょ? (^O^)
割り箸の種類は昔は80余りあり、現在では約50種類だという。
割り箸の形状で代表的なものを以下に示す。名前とその由来については文献によって意外なほど意見が分かれている。
ところで、箸の寸法はややこしい。「8寸元禄」や「9寸利久」などと呼ぶが、実際の長さはそれぞれ1寸短かい(つまり「8寸元禄」なら実際は7寸=約21cm、「9寸利久」なら実際は8寸=約24cm)という習慣(おそらくは業界の悪習)が残っている。
いろいろな割り箸
割れ目に溝はなく、面取りもしていない一番素朴な形。寸法も短かく、一番短いもので5寸=約15cmのものが存在する。弁当や自動販売機のインスタントラーメンなどで見ることがある。正直、15cmくらいだとかなり使いにくいし柾目の通らない材料で作るのでちゃんと割れないことが多い。名前の由来は「江戸時代の銀貨が「丁銀」「丁六」と呼ばれ、庶民の貨幣であったことから大衆に親しみやすい箸という意味で、1877年代奈良県大和下市町でつけられた」とか「「丁度六寸」であるという長さからきた呼称」としている文献もある。
側面の角になった部分を面取りしたもの。その形状から「小判」という。割れ目のスジは入っていない。元禄箸と並んで大衆箸の代表。丁六と同様、1877年に奈良県大和下市町で考案されたものという。長さは7寸=21cm以下。7寸=21cmという形状は実用上必要十分の長さであり、大衆箸はこの長さを超えることはない。
側面の角になった部分を面取りし、割れ目にスジを入れて割れやすく加工したもの。正式名は「元禄小判」であり、1887年頃にやはり大和下市町で名づけられた。この名前は「元禄時代、幕府の財政の窮余の一策として、金の含有量を減らし、貨幣を改悪した小判を「元禄小判」と呼んだことから」とする記述(つまり溝を削る分、小判から木の含有量を減らしたことに引っかけた)、あるいは沢山束ねた時に、上から見ると「元禄時代に流行した市松模様にみえるので」この名があるという記述もある。
両端が細く、真ん中が太くなっている箸。詳しい形状は上図参照。千利休が考案したとされる利休箸から名付けられた。千利休は客を招く時は必ず、赤杉から客の人数分の箸を自ら削り出したという。両口になっているのは精進ものと肉ものの料理で使い分けるためだそうだ。ちなみに正月に使う両口の祝い箸は、片方を神様が使うという考え。なお「利休」ではなく「利久」となったのは、「利休の号を遠慮したため」とするものや、利が休むのは縁起が悪いとして利を久しくするに変えたという説がある。京都の市原箸店(市原広中氏)の考案による。高級品であり、6寸(18cm)、7寸(21cm)、8寸(24cm)のものがあるが、懐石での箸の長さに準じて7寸、8寸のものがほとんど。
千利休が考案した箸はこちらの方が近い。詳しい形状は上図参照。真ん中がふくらんでおり、腹中に卵を抱いていることに見立てて名付けられた。これは「割り箸」といいつつも2本の箸が初めから離れている。高級箸だが、さらに高級になると2本を紙で巻いて出てくる。7寸(21cm)、8寸(24cm)のものがある。
これはどうも近年に考案されたものらしい。よく知らない。形状は片口の卵中であり、ごく普通の塗り箸に近い。これも卵中箸と同じく2本の箸が初めから離れている。
頭部(天)が斜めにカットしてあり、これが削がれているようにみえることからこの名がある。面取りは食べ物を挟むところのみに施されている。高級箸の代名詞とも言えるもので、高級料理や会席料理など改まった場所で使われる。柾目が正面に向いたものが最高級品。長さは7寸(21cm)、8寸(24cm)のものが多い。現在の大和下市町の主要生産品。最近は「天削元禄」と称し中国産の竹やアスペン製の7寸で天削のものがあるが、いくら何でもそれはちょっとなあ、と思う。先日セブンイレブンでもらった割り箸は竹製の8寸天削箸(ということは実際は7寸=21cm)だった。
竹割り箸独特の形状で、頭部が四角になっており、それ以下の部分は面取りされ、先端は細くなっている。竹は油をはじくので魚料理などに用いられ、鰻屋などでも好まれる。7寸(21cm)から8寸(24cm)まであるが、これ自体は高級品としては認識されていない。竹で作った利久箸なども作られており、用途、素材、形状によっては高級品となる。
おまけ。
あれれ? 何かが違う。
この2本は同じアスペン製元禄箸なのだけども、何かが違う。
そう、右の箸には割れ目が入っていないのだ。
なので絶対に割れない。(^^;;
おそらく検品で漏れたのだろう。
道頓堀の橋の下にある、デビット伊東のラーメン屋でびっとにて捕獲した。
参考:
・『箸』(向井由紀子・橋本慶子)
・『箸の文化史』(一色八郎)
・『割り箸はもったいない? ── 食卓からみた森林問題』(田中淳夫)
・「安楽椅子探検家のヴァーチャル書斎」上記田中淳夫氏のサイト。特に氏のブログ「森林ジャーナリストの「思いつき」ブログ」は必見。
・「国産材割り箸(わりばし)とその現状(データ)/森林林業学習館」
・「割り箸から見た環境問題2006 環境三四郎」(pdf 737KB)
・「平成20年度『環境・循環型社会白書』」(pdf 9.8MB 割り箸の話はp.233からのコラム内)
・「[コラム]一膳の割り箸から考える国内山林問題 | IBTimes」(大島裕司)
・「口に入れるのは食べ物だけじゃない 危ない中国製「割り箸」」(北村豊)
・「割り箸・箸袋・業務資材格安通販「e-割り箸.COM」このページの真ん中にある「割り箸マップ」というやつはかなり大ざっぱではあるけれど、それぞれの箸のだいたいの位置づけがわかる。
突然食いたくなったものリスト:
- さんまの味噌煮
本日のBGM:
ラブ・ゼネレーション /ジャックス
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