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宮田麺児@東心斎橋

 宮田麺児は漫才コンビ「シャンプーハット」のてつじがプロデュースする店で4月にオープンした新しい店。

のれんは関西風で、「麺屋棣鄂 贈」
店構え@宮田麺児


 てつじはつけ麺が大好きで、自ら「つけ麺王子」を名のり、テレビでもつけ麺を多く紹介している。
 例えばこんな↓感じで。


(「つけ麺の伝道師てつじ 伝説の麺MTGを求めて」2008/10/18放送『モモコのOH!ソレ!みーよ』より)

 彼の「つけ麺は麺が主役」という主張は、同じつけ麺好きとしては大いに頷けるところでもあり、彼のことも別に悪しからず思ってはいた。

 そのてつじがとうとう自分のつけ麺の店をオープンさせたというわけだ(彼が店とどういう関わり方をしているのかはよく知らないけど、店名は彼の本名から取っているそうだ)。
 さすがに自家製麺ではないようだが、↑の番組にも出てくる製麺所・麺屋棣鄂(めんやていがく)の麺を使うということで、このコラボ(^O^)で最終的にどんな麺が出てくるのか、私は結構期待していたのだ。

 中には「しょせんはタレントさんだから……」という意見ももちろんあるのだけども、同じつけ麺好きとしては、それでもやり方によってはいいものは出せるんじゃないかという願望があったのも事実だ。プレイヤーでなくても監督はできる……かも、みたいな。

 てつじのこの店は、彼が出演するローカル情報番組やバラエティでも採り上げられ関西圏ではそれなりに話題になった。

カップル率高し。つけ麺を初めて食べる人も多いのではなかろうか
行列@宮田麺児

 さすが話題の店だ。開店からまだ半月(2010/04/16オープン)でもあるしね。
 しかも行列に列んでいる人の種類が普通のラーメン/つけ麺屋とは全然違う。
 群青の行列と比べてみればよい。(^O^)

 東京の人気店をテレビで見るとこれとは比べものにならないくらい恐ろしく長いのに驚くが、関西ではこのくらいの行列でも珍しい。

 待っている間にガラス越しに厨房内を覗くと……。


ガラスの奧に見える麺屋棣鄂のネーム入り麺箱

 麺箱がここに置かれているのもアピールの内でしょうな。

 行列が進んで券売機のところまで来たら食券を買う。


券売機

 選択肢は3種類の麺の並(全て180g/¥850)と大盛り(全て270g/¥1000)。あとは別麺(180g/¥350)とトッピング。つけ汁は1種類固定。

 「麺」重視のてつじらしいメニュー構成といえそう。
 でもちょっと高い。
 現在、標準的なつけ麺の麺の量はコンサルに指摘されるまでもなく、だいたい200~250gだ。180gだと、まず「少なっ」と思われる。さらに別麺が凄い。180gで¥350。麺は3種類あるので2人で来たときなどこれを1種類頼んで全種類制覇してみて!というのが売りらしい。それはそれで楽しいし、この値付け自体にはそういうこともあるかなとは思うが、それでも割高感を感じるなという方が無理。

 麺は3種類あった。
 てつじ考案というT2Gは説明によると「真っ白な麺に全粒粉がふんわり混ざっている、リングイネタイプのだ円形の切り口」「切番手は12番」でASW、プライムハードを使ってるのだそうだ。(リングイネって何じゃろ?
 麺屋棣鄂の作になるというJF100は国産小麦100%だそうだ。これの説明文はどうにも日本語になってないというか、ヘンだよ。

シルクの様な上質感をのどごしで感じるための麺。
真っ白な平打ち麺はちょっと太めの切番手は8番。
キメの細かさがのどで感じる、とにかく優しくて繊細。
国産小麦100%の特長「もちもちちゅるん!」としたのどごしをお楽しみください。
北海道産小麦5種を季節に合わせてブレンドした、江別製粉所の特上小麦粉で作った麺。
5種類の国産小麦をラーメン専用にブレンドした粉。
切り番手を太くしたのは繊細さの中に小麦の心強さを残したいから。

 国産小麦・5種類ってのを何回言えば気がすむのかと。(^^;
 「小麦の強さ」ってのもわけわからん。……と思ったら、サイトにあるこの部分は誤植のようだ。紙のパンフレットには「強さ」とある。そりゃそうだろうな。(^O^)

 もう1つのNB50は「外皮を20%だけ取り除いた内麦粉を50%ブレンド」したそうだ。16番。「さらにローストした麦芽を振り掛けて食べます」と。この麺は誰による考案かは書いてない。意図もよく解らない。

 この店も内麦使用を強調してるな(「国産小麦」と「内麦」という言葉が出てくるが、両方同じ意味ね)。ようわかんなあ。まるで内麦が高級品であるかのような印象を与える書き方だけど、これは意図的なものか……。

 まあしかし、麺にこだわってるらしいことはわかった。
 いいものを食べさせてくれそうな気がする。

 やっと順番が回ってきて食券を渡すと、そのまま2階に通された。
 なるほど、2階があったとは。

 しばらく待つと麺とつけ汁が運ばれてきた。


T2G(ネーミングはおそらく「てつじ」から)
全ての麺にメンマ、煮玉子、もやし、ネギが載せられている


JF100(おそらく「Japanese Flour 日本の小麦 100%」から)
幅は8番だけど、厚さはそれほどないので思いっきり平麺


NB50(おそらく「内麦50%」から)
かかってるのはすりゴマではなく、ローストした麦芽だそうな


つけ汁(ベジポタ)
トマトは最後に入れているだけなの、トマトスープではないそうな

 つけ汁は東京で流行の兆しを見せている(と石山勇人北島秀一が書いてた)「ベジポタ」だそうだ。関西にはなかった味。

 器はステンレス製?の真空二重構造になっててつけ汁が冷めにくいように工夫されている。
 さらにこの器は縦に細長くなっている。これもおそらく空気に触れる面積を小さくして冷めにくくするためだと思う。

#ただ、レンゲが標準で用意されていないのはちょっと意外だった。スープ割りの時に店員さんに頼んだら「レンゲ……ですか」とかなり戸惑いながら引っ込んでいき、かなり待ってやっと出してくれた。レンゲを頼まれて戸惑っていたのにもびっくりだし、それでいて時間がかかりはしたものの、レンゲが実はあった(^O^)ということにもびっくりだ。

 まあ器の話はいいよ。ベジポタの話も、別にいい。とりあえずはあまりおいしく感じられなかったけど、今のところはそういう問題ではないので。

 とにかく、麺が酷かった。

 3人で行ってそれぞれ1種類、つまりこの店の3種類全部を頼んだのだが、その全てがダメだった。

 普通に出してもらえたのなら、好みの問題として3種類の中で順位もつくだろうと思うが、全部ダメって。(^^;

 つまり、麺そのもののポテンシャル(麺屋棣鄂の仕事)以前というか以後というか、つまり(製麺所ではなく)店の問題だと思うんだ。
 結局、麺の扱い方が酷かったんだと思う。

 ↑の写真の通り、この日も宮田麺児は凄い行列だった。
 厨房は天手古舞いだったのだろうと思う。
 忙しい上に麺が3種類もあり、おそらくそれぞれ茹で時間が違う(はず)。
 太麺が売りだから、茹で時間そのものもかなりかかるはず。

 ……にもかかわらず、注文して5分ほどで全ての麺が同時に出てきた。

 ほんまかいな。

 まあしかし食券制でもあるし(ということは行列している人がどの麺を食べようとしているか、券売機から事前に厨房に通知されるようなシステムを導入している可能性も……ないだろうけど、あるかもしれない(^O^))、私たちが席に着く時間まで計算して茹で始められていたのかもしれないじゃないか。だから関について5分後に全部一緒に出てきた……とすれば、これは完璧なオペレーションなわけで。

 駄菓子菓子、そういう好意的な解釈はこの麺そのものによって打ち砕かれたのだった。

 おそらく……おそらくの話。これだけ太い麺は、大きな茹で釜の中で煮立った茹の中を泳がせながら茹でなきゃいけないのだと思う。麺をテボに入れてそれを湯に浸けて茹でるのなら、なるべく大きなテポにして麺が泳げるようにしたり、小さいテボしかなければこまめに箸でほぐしてやらないといけない。どういう原理なのかはわからないが、特に太麺は、泳がせて茹でないと粘土のような不快な歯ごたえになって非常にマズくなる(粘土は幼稚園以来食ったことないけど)。

#テボは湯切りしやすいし時間差で茹でることもできるので(大釜に麺を泳がせるやり方だと、一度麺を入れてしまうと、それが茹で上がるまで釜がふさがったままになる=新たに麺を投入できない。テボを使うと麺が個別に茹でられるので時間差での投入が可能になる)、多くの客をさばくには(店側には)都合がいいのだ。

 そして当然、茹でたらすぐに客に出す。

 このあたりがちゃんとできてなかったんじゃないかなあと思う。

 これだけ混雑してたらそういうことにもなっちゃうんだろう。
 オープン以来の行列で、厨房はかなり一杯一杯だったはず。

 「客をさばく」ことの方が「いい麺を出す」よりも一瞬でも上位に来ちゃうことは、こういう状況ならある意味仕方がないのだろう。

 となれば、この結果でこの店のことを決めつけちゃ気の毒という気もする。
 半年もすればこういう混雑も収まっているだろうから、その時に改めて本当にてつじが出そうと思っているものを食べさせていただこう。

 ……ただ、1つ、「懸念」はある。

 この問題は最初に書いた、「プレイヤーでなくても監督はできる」のか、という話に関わってくる。
 従業員みんながてつじであるわけではない、という当たり前の話。

 てつじがこの店にどう関わっているのであれ、彼が芸能人である以上、この店は彼の「副業」の域を超えるものではないだろう。となれば、この店に彼がかける時間は制限されざるを得ない。つまり、この店で1日の大半の時間を過ごしている従業員に対して、てつじの実質的な発言力もまた制限されるはずだ。一緒に現場で働いていないのだから、現場に対して「経営者」や「プロデューサー」という肩書きでは埋めきらないギャップがあるのは当然のことだ。

 で、実はその部分がつけ麺には非常に重要な部分なんだ。


確かにそうだが、君が手にしているその麺はまだ「半完成品」なんだぞ

 いやほんとに、つけ麺の命は麺だ。そして麺を一番美味しく提供するには麺そのものの質が高くないといけないのは当然として、しかしそれだけでは全く不十分なんだ。てつじが「絶対の信用」を置いているという麺屋棣鄂の麺が本当に彼の言うような高品質な麺であったとしても、それをちゃんと保存してなかったりちゃんと茹でてなかったりちゃんと締めてなかったりちゃんと湯切りしてなかったり……であれば、旨いつけ麺を提供するのはとうてい無理だ。

 とすれば、彼の言う「麺が命なんや」の「麺」って一体何?

 私はこれを、奇しくも同じ麺屋棣鄂の麺(MTG)で痛烈に理解した(「MTG巡りの顛末(長いよ)【訂正あり】」)。
 その時と全く同じことを感じるとは。

 調理現場の役割というのはまさに麺を最終的に処理する、非常に重要な役割だ。普通の店ならば店主が自分でやるだろうし、規模が大きいのであれば自分の情熱(という言葉が大袈裟であれば「その人が描く完成形」と言い換えてもいい)を理解して動いてくれる人を育成するだろう。これは「麺を選ぶ」であるとか「組み合わせを考える」みたいな部分とは程遠い、「ショカツ」の管轄なのだ。

 もしも「ショカツ」がてつじの情熱、いやそれ以前につけ麺がどういうものであるかを理解してなかった場合、どうなんだろう。開店当初の忙しさを乗り切って固まった現場のやり方に、「ホンチョー」のてつじが介入できるのか。恐らく無理なんじゃないか。

 とすればその部分は一番最初に念入りに両者がすり合わせをしておかなくてはならないことであって、私のいう「懸念」とは、本当にそれができていたのかという過去形の懸念だ。もちろんそれがちゃんとできていて、私が食べた麺は「たまたま」であったのならそれに越したことはない。半年後に行った時にはちゃんと評価できる麺を出してくれるだろう。

 そうであればいいと思う。

 てつじがこだわる「麺」とは何ぞ?

食べログ

 スタッフはあくまでもアルバイトで、他の店のように将来の独立開業を目指して修業をするというスタンスでもないわけで……。
 

つけ麺王子こと【てつじ】のつけ麺専門店がNEW OPEN!

関西一週間つけ麺コーナーで連載され、テレビでもつけ麺のスペシャリストとして紹介されている『つけ麺王子』こと浪速の芸人の【てつじ】のつけ麺専門店が東心斎橋に堂々OPEN☆オープニングスタッフを大募集!

タレントの来店も多数あり、この春注目度UP!! テレビや雑誌の取材も期待大です☆
新しいピカピカのお店で一緒に頑張ってくれる方大歓迎で~す!

4月16日OPENです☆

 
 ちゅう感じ。

 麺は金属のザルに盛りつけられ、それが丼に載せられて出てくる。水切りをよくするための工夫だろう。真空二重構造の器といい、ハードはほんといろいろ工夫してるんだ。

 ソフトなんだよなあ。


ザルを持ち上げてみた

 

 てつじ、期待してるんやで。

 一番イヤな解釈は、

「つけ麺で売ってるタレントさんの名前を利用して、いっちょ儲けてやろうという業者が出てきた」

 というもの。
 正直あり得る話だし、この値付けにはかなり疑問を感じる部分はある。

 ……ただまあ、そういう解釈は一番最後でいいんじゃないかと思ってるんだ。

突然食いたくなったものリスト:

  • チンジャオロースー&白飯

本日のBGM:
Agents of Steel /AGENT STEEL





 


4 comments

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  1. TGH

    DATE: 05/13/2010 04:03:18 PM
    いつも楽しく読ませて戴いてます
    さて
    NB50 の麺の作者についてですが
    オープン時の上記、宮田麺児サイトには
    作/釧路製麺 と書いてありました
    ご報告まで

    1. hietaro

      DATE: 05/14/2010 04:09:52 AM
      >いつも楽しく読ませて戴いてます
       
      恐縮です。m(_ _)m
       
      >NB50 の麺の作者についてですが
      オープン時の上記、宮田麺児サイトには
      作/釧路製麺 と書いてありました
       
      釧路製麺は恐らく京都にある製麺所さんですよね。
       
      オープン時には書かれていた……ということは現在は記述がなくなっているということですねえ。
       
      うーん……。
       
      いろいろあったんでしょうか。(^^;
       
      面白そうな情報、ありがとうございます。m(_ _)m m(_ _)m

  2. 通りすがり

    DATE: 01/02/2011 07:36:16 PM
    釧路製麺というのが書かれていたとなると京都に有る宝産業というラーメン店開業をプロデュースしてくれる企業が絡んでいますね。
    という事は、自力で考えて試行錯誤して味や麺を作った訳ではない「かもしれない」というのが見え隠れします。

    1. hietaro

      DATE: 01/14/2011 06:42:05 PM
      >通りすがり さん
      >釧路製麺というのが書かれていたとなると京都に有る宝産業というラーメン店開業をプロデュースしてくれる企業が絡んでいますね。
       
      そうですね。あるいは宮田麺児の店舗そのものをここがプロデュースしたというのはあるかもしれません。ある「お金を出す人」がいて、プロデュース会社を入れ、そこでつけ麺で名前を売ったてつじに声をかけ、「プロデュース」を頼む。当初は宝産業が持っている釧路製麺から入れましょうかという話だったが棣鄂の麺を入れたいてつじの意向で……とかなんとか、想像がふくらんでしまいますねえ。

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