先日、久しぶりにつけ麺で超弩級の地雷を踏んだ。
あまりにヒドいので、書かざるを得ない。
例のごとく店名は伏せる。わかってしまう人がわかってしまう分には仕方がない。
去年の12月にオープンしたというから、新店と言えば新店だが、オープンから8ヶ月となればさすがにオペレーションができあがってなくてはおかしいので新店ゆえのブレではないと考えている。
鶏白湯という最近流行のラーメンを出すこの店で、つけ麺を食べた。
(正確には、4人で行って、1人がラーメン、2人がつけ麺、1人が混ぜ麺を食べた)
卓上にあるメニューには、片面にラーメン、片面につけ麺が並んでいる。
つけ麺の面にはこうある。
【つけめんのおいしい食べ方】
一、麺や具材をつけだれにつける
二、麺はざるそばのように一気にすすって食べる
三、残ったつけだれをスープでお好みの濃さまで割って食べる(スープをご入用の方はスタッフまで)つけ麺の麺は基本冷や麺です。熱い麺をご希望の方はお申し出ください(スープは熱いです)
ほう、食べ方として「一気にすすって」とあるとは、ちゃんとわかってるかもしれないぞと、一瞬だけ期待したんだ。
注文を聞きに来てくれた女の子に、聞いてみる。
「麺って、何グラムですか?」
「え? あ……。お待ちください」
え、つけ麺で従業員がグラム数知らない……? そんな店、今までここかここくらいしかなかったぞ。
ちょっとイヤな予感。そして帰ってきて言った。
「140グラムです」
え、マジか。
850円取って麺が140グラムとは、なかなか強気な値付けだなあ。
宮田麺児でも850円で180グラムだったもんなあ。
まあしかし、値付けそのものは店の方針なので文句を言うところではない。
※ただ、後で出てきた麺から考えると、ひょっとしたら140グラムはラーメンの麺の量だったんではないかと思ったりもする。
ただ、イヤな予感ゲージはかなり上がっている。
しばらく待って、つけ麺が出てきた。
先に箸をつけた友人が慌てたように言う。
「これ! 早よ食べてみ!」
「ああ、ちょっと待って」(麺を箸でつまもうとするが、やたらくっついてなかなかちゃんとつまめない)
「いいから! そんなこといいから、とにかく口に入れてみっっっ!」
「待てよ……。なかなかこれが……」
「そんなのいいんやって!」
(パク)
「……。ん? !!!!!!??????」
「なッ!」
「な、なんじゃこれ……ッッッ!?」
ぬくい。
熱いんじゃない。冷たくもない。
ぬくい。
なんだこの温度?
やたら麺がくっついてる。
ヌメヌメしてる。
ベトベトしている。
表面が乾いている。
なんだこれ。
くっつきまくる麺
こうなる理由はすぐに想像がつく。
麺がくっつくのは2パターンあって、まず茹でる前の生麺の時に既にくっついていたのが茹でる時にほぐれないままになったもの。これは茹でる時に麺が泳いでいない証拠だ。もう1つは茹でた後に水分が蒸発してしまい、表面がべとべとになってくっつくもの。これはたとえばスパゲッティなんかだと、茹でた後に表面にオリーブオイルを絡めて防ぐよね。つけ麺の場合、麺をじゅうぶんに洗って(締めて)温度を下げれば問題ないのだけども。この症状になるのは麺を締めずに熱いままにして水分を蒸発し放題にしたり、あるいは茹で上げてから長時間放置(つまり「茹で置き」)した時だ。
この麺にはこの2つの症状が同時に出ている。
先ほど引用したように、メニューのつけ麺の面にはこうあった。
つけ麺の麺は基本冷や麺です。
いやいやいやいやいや。
「冷や麺」ってあんた。
熱いでもなく冷たいでもなく、ぬるいでもなく、常温でもなく、「ぬくい」よこれ。
あまりに異様な麺の状態に、動揺した友人は店員に聞いてしまった。
「すみません、あの……、この麺……、洗ってますか??」
「え? あ、はい、洗ってますよ」
「あ……、そうで……いや、はい。わかりました。いいです」
どうやら洗っているらしい。
店員がそう言っているのだから、信じよう。
とすれば、洗い方(締め方)があまりにヒドいということだ。それを本人たちは「ちゃんと洗っている」と思っている。
この、テボに投入して釜につり下げたまま放置してまったく泳がなかった|箸でほぐすこともしなかった(湯は沸騰すらしていなかったかもしれない)、ゆでムラのある、くっつきまくりの、いい加減な洗い方でヌメヌメだらけのベトベト麺を、これでいいと思って客に出している。
さらに麺が、やたらありがちな(多分何の考えもなく……考えているとしても「つけ汁がよく絡む」とかいう浅知恵)全粒粉を使っているものだから表面がザラザラで、表面積が大きいからみるみる乾いていって、よけいにくっつきまくる。唇に引っかかって「ざるそばのように一気に」なんてとうていすすれないし、噛んだ時の歯ごたえは粘土のようだ。
最悪だ。
ここまでヒドい麺に出会ったのは久しぶり……いや、初めてかもしれない。
麺がこんな温度になるのは、麺を上げたあと水で締めずに放置(茹で置き)したか、麺を一瞬だけ水にくぐらせただけで(麺を冷やすのが不十分なまま)出した……くらいしか原因が考えられない。
これは、加水率がどうだとか、小麦粉の銘柄がどうだとか、配合がどうだとか、かん水の種類がどうだとか、圧延が何回だとか麺の形状がどうだとかいう麺のポテンシャルの問題ではない。
ゆでる行程、締める行程、(そしてひょっとしたらゆで置き)、これらはすべて、今、厨房にいる店員の仕事の範囲だ。
こいつら、自分たちが出す麺に何の愛情も持ってないんだろう。「麺や」としての矜持もない。ただただ、「こなして」いるだけだ。テボを釜に入れて放置、釜から出して放置だ。
この店はすでに数店舗を展開している某ラーメン店のネクストブランドだそうだ。
個人経営でないということは、厨房に入っている店員のすべてがアルバイトなのかもしれない。あるいは社員が1人はいるのか。
メニューに「つけ麺の麺は基本冷や麺」と書いているからには、おそらく店が想定している完成形は冷水で締めている麺なのだろう※。そして「二、麺はざるそばのように一気にすすって食べる」とあるからには、ツルツルとしたすすりやすい麺なのだろう。
※私自身はつけ麺の麺は冷水ではなく常温で締めるべきだと思うが、それはここではどうでもいい。
しかし今、ここにいる店員たちは、そんなものとはほど遠いこんな麺を出して平気でいる。
こんな変なことを訊ねられたのに、
「洗ってます。……あの、何か問題がありましたか?」
などと訊ね返すこともせず、平然としている。
こんなもん出して何とも思わないなら、つけ麺なんてやめてまえ。
というか、飲食業なんて辞めてまえ。
ここの経営母体となっている某ラーメン店はそこそこキャリアのある店だ。店の外にあった貼紙には正社員募集とあり、月給20~50万円とあった。儲かるのだろう。しかし50万円取ってる正社員がこんな仕事させてるなら、会社としても管理上大きな問題だぞ。その貼紙にはバイト・正社員ともに「おいしいまかない」付きだと書いてあった。彼らは本当にこのつけ麺を食べているのか。「これが完成形だ」という状態で、正社員はアルバイトに教えているのか。そもそもこの店に「おいしいまかない」は存在するのか。
「知らないだけかも(教えてもらってないだけかも)」と友人は言っていたが、くっつきまくるベトベト麺に違和感を持たないだけでもあり得ない話だと私は思う。しかもラーメン屋で働く人間で。「麺や」と名前のつく店で。
この状態なのに「洗った」と店員が思っているということは、ひょっとしたらテボを釜から上げて、そのテボをそのまま水にくぐらせるというオペレーションなのかもしれない。もしそうならオペレーションがそもそも間違ってる。
しかもそれをいい加減にしたから麺の温度は下がりきらず、テボに入れたままだから麺がほぐれることもなく提供されたのではないか。しかし水にはくぐらせたから本人は「ちゃんと洗った」気でいる。ひょっとしたら水にくぐらせる理由も知らないかもしれない。
いやまあ、想像でいろいろ言うのはどうかと自分でも思うよ(それにこれはかなり悪意のある想像だ)。
でもね、実際に出てきた麺がこれだと、ほんと、そういう想像でもするか、あるいは店員がこちらに明確な悪意を持っているか、くらいしか理由がわからないんだよ。
こちらに対して悪意を持ってわざとやったとしても、それはそれでよくここまでマズい麺が作れると感心するレベルだ。
後発4輪メーカーで開発費がなかったホンダは昔、低公害のCVCCエンジンを開発するにあたって有害物質が出ないエンジンではなく有害物質をたくさん出すエンジンを作ったという。開発していると、ある時点で出てくる有害物質の量が頭打ちになる。そこで有害物質が出てくるのを邪魔している原因を探ることで低公害エンジンのヒントを得たと。
この店でやってることはひょっとして、そういう類の実験か?
この店と違うことをすればそれだけでかなりいい麺が作れるとか、そういう話か?
麺の破壊力があまりに大きかったので、つけ汁の記憶はほとんどない。
鶏白湯だったらしいけど、そんなもん関係あるかい。
一緒に行った友人の頼んだ冷やしゆず塩まぜそばの麺は冷たかったし、なので締まっていた。
つけ麺の麺は明らかにそんな処理をしていない。
これは製麺段階での問題ではなく、すべて厨房内の問題。
麺をまともに扱いさえすれば、この麺を使ってもそれなりのつけ麺ができるはず。
なのでこの会社は早急に改善に動くべきだ。
店のメニューの可能性を、厨房が潰している。
働いている人間にうまい麺とはどんな麺かをちゃんと教え、オペレーションをちゃんと組み直す。あるいはつけ麺をメニューから外す。
いずれにせよいい方向に行く余地はあるはず。遅くはないと思う。
ラーメンも食べたが、ラーメン自体はまあ、鶏白湯独特の、「一口二口はおいしいけど、すぐに飽きる」という特徴から抜け出せていないと感じた。ただ、つけ麺に比べれば数百倍マシだった(麺も悪くなかった)ので、やっぱりラーメンの店だなあというところだ。
場所柄、夜の11時頃でも店内は学生でいっぱいだった(10分か15分列んだ)のだけど、つけ麺を食べているのは私たちだけだった。偶然かどうかはわからない。
ラーメンの店でつけ麺を食べる私が悪いといえばそのとおりなのだが、しかしつけ麺がメニューにあるのだから、カネを取って食い物を提供する以上せめて最低ライン以上のものを出すのが飲食店としての義務だと思う。つけ汁がまずいとかそんなことなら好みの問題だから仕方ないのよ。しかしこの麺は、商品として成り立っていないと思う。ましてこの店は店名のアタマに厚かましくも「麺や」とつけている。なのに麺だけでここまで絶望させてどうする。
このつけ麺を食べた私 戸惑い⇒呆然⇒怒り
このつけ麺を食べた友人 戸惑い⇒怒り⇒笑い⇒脱力⇒戸惑い
食べログの投稿を見ていると、つけ麺の麺が「冷たい」という記述があった。
とすると、今回のことは常態ではなくたまたまだったのかもしれない。
もう一度行って確かめるべき……かなあ。いや、どうなんだろうな。
⇒行ってきた。(「鶏つけめん@某店(つづき)」)
突然食いたくなったものリスト:
- たこ焼き
本日のBGM:
チャイニーズ・キッス /松本伊代
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