まあ世の中、ラーメンやつけ麺に限らず「絶賛するほどウマくはないが、かといってマズいというわけもない」ものが大半だという実感がある。もしそうなら、確率的にそういうものばかりに当たることは仕方ない。特に情報がない状態では。これはそういうものだと諦めてる。
しかし、信じられないほどのダメつけ麺にこんな短期間に連続して出会いますかと己の業を呪うくらいの不運に見舞われるのは、やはり辛いというしかない。
もちろんこれは、つけ麺を専門にしている店ではなく、あくまでもラーメンを主体にした店のつけ麺を食べているのだから、これは偶然以上に自らが招いた不幸だとも言える。
しかし現実的な話、つけ麺専門店/つけ麺メインの店自体が少ないのだから構造的に仕方ないとも言えるはずだ。
まともなつけ麺を出している店は本当に少ないと、私自身が書いたことでもあるわけだし。(「【来年の展望】つけ麺ブームは終わる」)
にしても、だ。
「ウマくない」ならまだしも、「マズい」あるいは「問題外」と思わせる店はそう滅多にあるものじゃない。
特にラーメンであれば、そういう店は少ない。
そういう意味ではつけ麺は、店にとってはまだまだ新興のというか、「解らない人にはさっぱり解らない意味不明なメニュー(でも出す)」、ということになるのかもしれない。
思えば去年の末も、ダメダメなつけ麺をほぼ同時期に連続して食べたのだった。(「山岡家のつけ麺」「河童ラーメン本舗のつけ麺」
悪いことは連続してやって来る、というわけか。
It never rains but it pours.
ったく。
単に「ウマくないつけ麺」程度であればこれまで数えられないくらい食べているし、そんなものをいちいちエントリとして上げることもないけれど、これだけダメで、しかも連続したんじゃあ久しぶりに書かざるを得ない。
店の名前は伏せる。
新店(老舗店の2号店)なので将来的に改善される余地はあるだろうし、そんな店に打撃を与えることが目的ではないので。
この店の本店はもう四半世紀近い歴史がある。今ではれっきとした老舗店といえるだろう。
半年くらいぶりに行ってみると、開店しているはずの時間なのに店が閉まっている。
不思議に思いつつ、まあ私自身はよくそういう体験をするので(^^;あまり気にしない。そこで思い出したのが、2号店だ。
少し前、国道沿いにを走っているとロードサイド店の形態で同じ屋号、同じマークの店を見つけたのだ。きっとあれはそうだ。ググってみると、今年2月にオープンしたらしい。ちょうどいいじゃないかとそちらに向かった。
店員に聞いてみると、現在、本店を閉めて店員がすべて2号店に入って営業しているらしい。そしてここが軌道に乗ればまた本店もオープンするという。なるほど、そういうことか。
この店はロードサイド店らしく豊富なメニューがある。本店では見かけなかったメニューも。
その中に、「つけ麺」を見つけた。これも本店では記憶がない。
となるとこれは2号店の新メニューということになる。
さて、どういうつけ麺になっているのか。
本店にはなかった豪華な写真入りメニュー
「乱切太麺」とある。
太さの違う麺を使うラーメン・つけ麺はこれまで何度か食べたことがある。
ここもそういう工夫をしているのか。面白そうだ。
写真を見る限りつけ汁も「またお前か」系の豚骨魚介ではなく、醤油系の透明感があるものだ。
むしろちょっとだけ、普通の麺つゆで食わせるんじゃないだろうなという不安さえ感じてしまうが、メニューにはこれとは別に「和風ざるラーメン」があるので、もそ普通の麺つゆで食わせるならそちらだろう。(ざるラーメンは本店にもあった。「和風だしと濃厚玉子を絡めて食べる」との説明だった。食べたことはないが、やっぱりざるそばのような味なのかな)
ラーメンは本店で食べているし、ここはやはりつけ麺を食べることにする。
注文を取りに来た店員に尋ねる。
ひ「あの、つけ麺の麺は何グラムですか?」
店「グラム? ……えぇ、グラムはわからないですねえ。……」
このあと、少しだけ考えるような沈黙があった。
恐らくここで、
「ちょっと聞いてきます」
となるのだろうと予想する中、店員はすぐに言葉を続けた。
「でも、『並』と『大』があります」
え?
いや、それで何をどう判断しろと。(^^;;;
店員は麺の量を知らず、それを厨房に聞きに行くつもりがないことも判ったので、
「そうですか。じゃあ並で」
と注文した。あの店のことが脳裏をよぎり、ちょっとしたイヤな予感……。
まあ、ラーメンの店として23年もやってきて、新しい店で初めてつけ麺を始めるのだから、そういうことに気が行かなくても仕方ないのかもしれない。
そういう意味では、つけ麺野郎の不安をそのまんま敷衍するのは酷かも。
なんてことを友人と話しているうちに、つけ麺が登場した。
つけ麺@某店
???
ひ「あ、ちょっと待って」
店「はい?」
ひ「あの、この写真見て注文したんですけど……」
店「はい」
ひ「いや、この写真の……このつけ麺ね。この醤油ベースのつけ汁のやつを頼んだつもりだったんです。すみませんが、そちらに替えてもらえませんか?」
店「いや、うちのつけ麺はこれですけど」
ひ「え? あ……、あ、そうですか。あ、はい……」
なるほど、いろんな不安が的中しつつあるようだ。
本店のように白い紙に文字が書かれているだけのシンプルなメニューであればこれで何の問題もなかったはずなのに、写真入りメニューにしてしまったために「嘘」をついたことになったわけだ。写真入りはわかりやすくて、特に多くの客が訪れるロードサイド店では便利だと思うが、その分、そのとおりのものを出さないと客をがっかりさせることにもなるよ。
つけ汁だけ口に含んでみると、思った通りの「またお前か」豚骨魚介だった。業タレじゃないかな。
くっそ、こんなことなら。(^^;
とはいいつつ、豚骨魚介の業タレは、まあ普通に食べられはするわけで。
個性的なつけ麺を期待することはできないが、麺の出来次第でおいしく食べることはできるはずだ。
麺は太平ちぢれ麺。
ちぢれ麺にしているのは「つけ汁が麺によくからむように」とかいう意図だろうか。こんなドロドロのつけ汁にちぢれ麺って、どれだけしょっぱいつけ汁が好きなんだよ……。
いやいや。
気を取り直して麺を掴む。
「……ん?」
つけ汁につけて、口に運ぶ。
「え?」
もう1回。
「え? ……え?」
信じられないことが、まさに目の前で起こっている。
英語でまくし立てながら、バックに日本語で、
「おいら見たんだよ! あの裏山に大きなUFOが降りてきて……牛をさらっていったんだよ!!」
なんてナレーションをつけたい気分だ。
信じられない。
何が信じられないかって、これがつけ麺の麺なのか?というところ。
常識が覆され、そして脳裏に「狂気の沙汰」という言葉が浮かぶ。
その麺が、これだ。
短い……というよりコマ切れ
これだけ見ると、食べ終わり頃の、最後に残ったカス麺がちょっと多かったのだと思うだろう。普通、そう思うはずだ。
駄菓子菓子。
食べ初めの、麺上げの写真を見てくれ。
こうだ。
すべてがこのくらいの長さ
この麺は、この短さの麺ばかりなのだ。
信じられない。(>_<)
麺を「すする」機会が、まったく失われている。
むしろ「すすらせない」という意思すら感じる。
つけ麺でこれをやる理由が、私にはさっぱり解らない。想像もできない。どうすりゃいいんだ。
ここで思い出した。
メニューの写真には、こうあったのだ。
「乱切太麺」
なるほど。
「乱切太麺」とはこういう意味だったのか……。
「乱切り」は太さではなく、長さだったと。(>_<)
つまり、この麺は失敗したのではなく、意図的なのだ。
あかん。ほんと、常識が崩壊する。
これが麺料理として存在する理由が分からない。
そういえばつけ麺を待っている間、テーブル横の壁にこんな貼紙を見つけた。
ヌードルカッターあります
ひょっとしてこういう思想なのか。
しかしこっちは子供じゃないしなあ。
大の大人が、丼の底に残ったインスタントラーメンのラストのような麺を、器からチマチマとつまみ出して口に放り込まねばならんのか。
この奥にはかなり明確な意図と思想があるはずだが、私には想像もつかない。
むー。
「乱切」かぁ。
どういうメリットがあるんだろう。
普通に長さを揃えるんじゃなくて、「乱切」だよ。みんな短いけども、その中でも小さな違いがあるんだろう。こだわりなんだろう。
あああ、私にはわからん。
さっぱり理解できん。
それまで50’sばっかり聴いてたオッサンが、ビートルズはウルサくて野蛮でかなわんと言ってるようなもんか。時代はこの麺か。オレは時代から取り残されたオッサンか。くー。prz
って、たとえが古すぎるわっっ!
いずれにせよ、わざわざつけ汁と麺を別々に出す理由も、麺を水で締めている理由もよくわからない、不可解。まさに不可解。
一応ついでに書くと、具は麺の上に載せられている。
チャーシュー、もやし、わかめ、そしてもみのり。
チャーシューはほんのり焦げ目があって炙っている……のではなくフライパンで炒めているのかもしれない。脂っぽい。そこに茹でて水をよく切ったもやしとワカメがよりそっている。不思議なのはワカメ。この店のメインのラーメンはライトな豚骨ラーメンで、そういうラーメンにワカメをトッピングする店はたまに見かける。しかしこの店のラーメンにはワカメは載っていないのだ。
ということは、このワカメはつけ麺用に考えられた新たな具ということになる。しかもこのワカメはおそらく乾燥ワカメ。かなり細かい。ラーメンからの流用なら「考えなしに入れた」という解釈も可能になるが、これがつけ麺だけに添えられているのなら、これもまた麺と同じく明確な意志によってつけ麺に添えられていると考えるべきだ。
この麺の長さ(短さ)にしろこのワカメにしろ、これらはすべて制作者の意図どおりのものなのだ。
これまで私がこのブログで書いてきた多くのダメなつけ麺は、「ちゃんとした完成形をイメージしていない(着地点が曖昧で本人にも解っていない)」「麺の茹で方や締め方を失敗している」といったものがほとんどだった。つまり失敗作であると。失敗作ということはつまり目指すべき成功の姿も存在するわけで、そこに達していないから「ダメ」だと、私は書いていた。
しかしこのつけ麺には明確な意志の存在が感じられ、おそらく作った人の意図がちゃんと実現されている(失敗ではなく)。
その意味で、このつけ麺はこれまで私が書いてきたダメなつけ麺とは違う。はずだ。
できればその意図・思想を理解したいと思う。
しかし1人でいくら考えても、私の常識では無理。(>_<)
私にとっては異次元のつけ麺。
本当に、困る。
私にはこんな評価しかできない。しかしきっと、まったく別の視点では全然違う解釈ができるのだろう。店名を伏せておいてこう書くのもアレだが、その解釈を是非知りたいと思っている。
あるいはこの麺はパスタという文脈で考えるべきかもしれない。
そんなパスタ要らんしそれをつけ麺にする意味も解らんけど。
ただ1つ、発見があったのはもみ海苔。
つけ麺の麺にもみ海苔やきざみ海苔を載せると、香りはいいのだが麺に絡まってしまい、ツルツルとすすり上げるのに非常に邪魔になる。これを「悪魔の陰毛」(^^;と呼んで忌み嫌う人がいるくらいだ。
ここでも「あーあ。載ってるよ」と思ったが、食べてみると、麺がみんな短いのですすりようもないし、そうなるともみ海苔で麺が絡まっても何の支障もない。なのでこのつけ麺に限っては、もみ海苔はまったく邪魔しておらず、海苔の香りが楽しめる。
こんな発見、まったく要らんけどね。(>_<)
いやはや。
ほんと、この店の本店は23年もラーメンでやってきたのだし、味云々以前に「場」の良さで愛されてきたわけだ。余技のはずのつけ麺でここまで書いて悪いかなという気もしないでもない。しかしそれにしても写真と違うものが出てくるとか、それに対して「うちのつけ麺はこれです」という反応とか、これはつけ麺とか関係なくダメだろう。
このあたりはぜひ改善して、2号店を軌道に乗せてほしい。
この店ではタンタンメンも出している(本店にはない)。
かなり大きい、目立つ日よけ暖簾が客を迎える。
坦々麺
突然食いたくなったものリスト:
- どて鍋
本日のBGM:
ダメなものはダメ /ウルフルズ
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