ダメな麺にはいろいろあるけれど、その1つにカス麺がある。
「カス麺」といったって私が今勝手につけた名前だから決まった定義があるわけではないが、ここでは切れて短くなった麺としておきたい。普通の長さの麺に混じって紛れ込んでいる、切れて2~3cmくらいになっちゃった情けない麺、あれだ。
パスタのような食べ方ではなく「すする」という日本の麺の性質上、「こんな麺は落第だ。食べられないよ」と山岡さんも言っている(に違いない)。
カス麺自体はもちろん、カス麺がたくさん出るということは製麺(あるいはその後の工程)がうまくいっていない証拠でもある。
ちゃんとした製麺をしちゃんとした扱いをしていれば、カス麺は出にくい。
普通の製麺機を使う製麺工程は大ざっぱに ミキシング⇒合わせ⇒圧延⇒裁断 からなるが、裁断以外のどの工程でも、カス麺ができてしまう危険をはらむ(裁断過程では麺帯が刃を通って麺線になる時に、刃の端っこを通ってしまいやたら細い麺ができちゃうとかいうのはよくあるが、これはこの話とは別)。
例えばミキシングで水と小麦粉がちゃんと混ざっていなかった時だとか、圧延がしっかりできていなくて空気が抜けていなかったりとかいろいろ。
また、裁断の後の 保存⇒茹で⇒(締め)⇒提供 までにもやはり最終的にカス麺ができる危険は随所にある。
例えば麺にストレスのかかるような保存の仕方をしたり、テボを使って茹でている最中に、麺をほぐそうとテボの中に箸を入れてやたらガチャガチャとかき混ぜたりとかいろいろ。
つまり麺の中にカス麺がたくさん入っている時、製麺あるいは提供までの過程で何らかの「ヘタクソ」があったと考えられる。
カス麺の存在はラーメンだとわかりにくい。
ラーメンの場合、食べる時、スープの中で麺が絡まっていてすすりきれないことが多いので、口に入らなかった麺を噛み切ってしまうことがある。するとカス麺と自分が噛み切った麺の区別がつかない。
その点、つけ麺であれば一度に食べる麺だけをつけ汁に移してそのまますすり上げるので、食べている最中に自分がカス麺を作っちゃうようなことはない。(つけ汁に大量の麺をドボンとつけて、口に入りきらない麺を噛み切る⇒つけ汁の中に大量の短い麺が沈む という食べ方は、つけ麺には向いていない)
そして麺を一度箸でつまみ上げるので、もし麺の中にカス麺が混じっていてもついてくることはほとんどない。
となるとどうなるか。
終盤の麺の器に、カス麺だけが残ることになる。
これはこれで、スープ割りをしたつけ汁に放り込んで「具」にして楽しむという使い方があるのだけども、もちろんカス麺はないに越したことはない。
(昔、珍道具発明でインスタントラーメンの、最後のカス麺をすくうための道具があったなあ)
たまに大量のカス麺が残ってびっくりすることがある。
先日食べた某店のつけ麺は「カス麺ばかり」という印象。ここまで来たら凄いよねえ。ポリシーすら感じる。
某店のつけ麺のカス麺
ここまでカス麺が出ると、もうこの店はダメと判断していいと思っている。そういう麺を使っている点、そういう扱いをしている点、大量のカス麺を平気で出すという点で。
この写真とは違うが先日食べた難波の某店もこんな感じ。そこは創業当初から経営母体が変わったらしいが、つけ麺なのにすすり上げる楽しみをまったく提供しようとしない残念な店になってしまった。それでも客が来てるんだから仕方ないのか。
何度も言うようにカス麺はない方がいい。しかしカス麺がまったく出ないというのもほとんどあり得ない。やはり少しは出ちゃうものだ。
この、出ちゃったカス麺をどうするかというのも店の姿勢が表れる部分だろうと思う。
それをどうするか。
テボを使って茹でていて、それがラーメンの場合、カス麺を排除することはオペレーション上ほぼ不可能。なので、まあ、できただけのカス麺が入っていると考えていい。しかしラーメンなので客は自分が噛み切った麺と区別がつかず気にされることもほとんどないと思われる。
つけ麺の場合は一度「水で締める」という工程を踏むので、カス麺は発見しやすい(締めザルの下に残る)。
そんな麺をちゃんとした麺と一緒に器に入れるのを当然と考えるか、そんな麺は入れないか。
入れるのをサービスだと考える店もあるだろうし、入れないのがサービスだという店もあるだろう。あるいは上の写真のような店であれば、カス麺を出さなければかなり麺の量が少なくなってしまうので出さざるを得ないだろう。
私は恥ずかしいのでやめた方がいいと思うけれど、まああっても客が損をするものでもないし上記写真のような極端なことでもない限り目くじらを立てるほどのものでもない。
むしろそういうカス麺の状態を見て、この麺が器に盛られるまでの工程を想像するというのもマニアの楽しみ方じゃないかと思う。(^O^)
突然食いたくなったものリスト:
- 登龍軒の酢豚
本日のBGM:
天使よ故郷を見よ~女神~Honey Dripper /中森明菜&アン・ルイス
すべてアン・ルイスの曲とはいえ、並んでしまうと「歌姫」中森明菜よりアン・ルイスの凄さが際立つね。
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