平松式人工雪発生実験


 別のところにも書いたんだけど、もうちょっと詳しく書いておこう。
 次に自分1人でやる時のためのメモのつもり。
 「備忘録」だからして。
(何度も言うが、「メモ書き」という言い方はいかがなものか)


 先日、某サイエンスカフェ「かわいい物理+plus」にて「人工雪の実験」を体験。
 実験装置は「平松式ペットボトル人工雪発生装置」。



図1 平松式ペットボトル人工雪発生装置

 水蒸気を充満させたペットボトルを冷やして人工雪を作るのだ。
 実は雪の結晶の形は温度と水蒸気量にのみ依存する
 これは中谷宇吉郎という日本人の先駆的な研究によって60年も前に解明されている。(中谷ダイヤグラム)
 日本人が世界に誇っていい研究ですな。


図2 中谷ダイヤグラム

 ↑縦軸が水蒸気量、横軸が気温。
 私らが普通の「雪の結晶」でイメージする、雪印のマークみたいなのは、-15℃前後で比較的水蒸気量が多い時にできるってことね。(図2の真ん中上部)
 ペットボトル内に水蒸気を入れて、その中で-15℃前後の気温を実現すれば雪ができるじゃないかというのがこの実験。


実験材料

使ったもの:

  • 簡易クーラーボックス(¥100shopで入手可。段ボールなどでもOK)
  • 発砲スチロール(断熱のため。板状のものをカットするといい)
  • ペットボトル(表面に凹凸が少ない方がいい)
  • 釣り糸(なるべく細いもの)
  • 消しゴム(釣り糸の重りにする)
  • ドライアイス(アイスクリームを買った時に多めにもらおう)
  • 軍手(ドライアイスは素手で触ると危険)
  • 懐中電灯など照明類(これがないと観察は非常に困難)
  • その他道具(ハサミ・カッター・テープなど適宜)
  • ビール(結構辛気くさい作業なので、これがあるととても助かる)
  • 音楽(同上)

 結晶を作るには「核」が必要で、天然雪(^^)では空気中のチリだけど、実験ではペットボトルの中に糸を垂らしてやってこの糸を核に結晶が集まるようにする。
 この糸はピンと張ることが大切で、必ずしも図1のようにペットボトルの底にくっついてる必要はない。ただしぶら~んとなっちゃうと少しのことで糸が動いてしまう(振り子みたいなもんだもん)。何かの拍子で揺らしてしまうとせっかくできた結晶が落っこちてしまうハメになる。やっぱり図のようにいい感じに底にくっついた方が安定していいだろうなあ。
 この実験では釣り糸に消しゴムの重りをつけている。糸は細ければ細いほどいいそうだ。



消しゴムに切れ目を入れる

 この切れ目に糸を挟み込むためだから、真っ二つにしちゃわないように注意。


キャップ

 図1ではゴム栓ということになっているけれど、この実験ではこのようにキャップに穴を空けて、そこに糸を通した。これで充分大丈夫。


キャップ

 最初は糸を結ぼうと思ったんだけど、「別に結ぶ必要ないんちゃうん?」「ああ確かに」とセロテープで貼りました。


消しゴム&釣り糸 in ペットボトル

 こんな感じ。
 さっきも書いたとおり、消しゴムはやっぱりペットボトルの底面につくようにした方が安定してよかったと思う(私は実験中、撮影に夢中でよく引っかけて揺らしてしまった)。
 ちなみにペットボトルが濡れているのには理由がある。ボトルの中には少しだけ水が入れてあったのだ。ボトルを振ってから水を捨てて、さらに息を吹き入れてからこの消しゴム&釣り糸を入れた。
 ペットボトル内に水蒸気がたくさんある方が、結晶が成長してくれるんだと思う。
 次はケース。


発砲スチロールはケースの大きさに合わせてカット

 底面にも敷く。


ドライアイスを新聞紙で包んで木槌で粉砕

 ドライアイスはあまり大きくない方がいい。要は効率よくペットボトルを冷やせればいいので、細かいのをたくさん入れる方がいいのではないかな。
 ちなみに写真に写ってる丸穴の空いた発砲スチロールが、ペットボトルの上面につける断熱材になる。これを切るにはちょっとした慣れが必要みたい。(^^)


ドライアイスは手で持つと危険

 こんな感じでドライアイスを入れる。
 なお、この時にペットボトルのフタをちゃんと閉めているとペットボトル内の空気が縮んでボトルがひしゃげるので、閉めるのはこれをやった後にする。


上部発砲スチロール装着

 ボトルの側面にいくつかくっついてる緑色の物体はフェルト。
 このペットボトルは側面に凹凸があるので、隙間から冷気が出てこないようにとの工夫。
 なお、ここがこの実験のキモだけども、この、ペットボトル下部と上部の断熱はしっかりすること。
 中谷ダイヤグラムによると、雪の結晶ができるのは-35℃~0℃。
 観察されやすい樹枝状の結晶となるのは-15℃前後。
 ドライアイス(ペットボトルの下半分)は-70℃、室温(ペットボトルの上半分)は約20℃なので、上下がちゃんと断熱できていれば、ペットボトルの中では
-70℃ → +20℃
の温度グラデーション?ができる。当然その間で水蒸気量と温度に見合った結晶ができるというわけ。
 この温度変化ははっきりしていた方がいいみたい。断熱がしっかりできてないと温度変化のメリハリがなくなるので、いい結晶ができないのではないか、とのこと。
 で、ここまでやると準備完了。
 あとは待つのみ。
 10分くらい待つと結晶ができはじめる。
 あとはドライアイスと水蒸気と結晶の自重がもつかぎり、成長し続ける……はず。


こんな感じで観察

 照明がないと観察はほとんどできなかった。
 明るい高輝度LED懐中電灯などがあればいいのではなかろうか。
 当然、発熱の小さい照明にするべきね。
 で、見えるのが、↓こういうもの。


斜め上から覗き込む

 見えるかな? アップにすると、↓こうなる。


まるで毛針だが……(^^;

 当然、この枝の中には私が吹き入れた桃色吐息も混じっておる。(^O^)
 天然の雪はせいぜい直径6ミリほどらしいが、これだとどんどん成長していくので面白い。
 ……というのが、実験の概要。
 なかなかお手軽でいいでしょ?
 簡単だと思うので、皆さんもどうですか?
 以下、メモ。

  • 糸は細ければ何でもいいわけで、髪の毛とかでももちろんいい。(中谷はウサギの毛で実験した)
  • 消しゴムの重りを使わず、キャップの上面とボトルの底面に小さな穴を開けて糸を貫通させて弦のようにしてもよさそう。
  • もちろん糸は1本でもいいけど、まあ2本になってる方が保険になっていいんじゃないか、という話。
  • 実験はペットボトルの上部と下部でちゃんとした温度差を作ってやれればいいので、クーラーボックスどころか、箱自体も必ずしも必要じゃない。ペットボトルにちゃんとドライアイスがくっつくようにタオルで包み込んでやってもOKだそうだ。
  • 言わずもがなだが、「ありがとう」「ばかやろう」などと言っても言わなくてもちゃんときれいな人工雪ができるですよ。(^^) これは例の話(「水からの伝言」)の反証実験ではないけれど、こういう遊びをやってれば、あんな戯れ言に引っかかる余地などないと思うんだけどね。
  • 結晶の成長を待っている最中、先日邦訳が出版された『スノーフレーク』(山と渓谷社)も見せてもらった。これまたほんとに美しい。
  • 結晶の写真を撮るのが思いのほか難しかった。オートフォーカスのデジカメだとペットボトルの表面にピントが合っちゃうのだ。それでも懲りもせずいくつものペットボトルで撮影を試みたところ、ペットボトルによって撮りやすいのと撮りにくいのがあった。
    どうもペットボトルの素材の透明度が影響しているような。もちろん中には水蒸気が入っているのでどれも曇ることは曇っているんだけど、それでも曇りやすさがあるようで。
    なので使用するペットボトルは選ぶべきかも。ペットボトルの一部分だけ、事前に内側から曇りどめ(メガネクリンビューみたいな←まだあるのかな?こんな製品)を塗ったりするのもいいのかもしれない。

  • 結晶が見えやすいようにペットボトルの下半分は黒く塗ってもいいかも。上半分は透明でないと中が見えないけど、下半分が透明でなくてはいけない理由はないと思うので。
  • とにかく照明は必須。観察が目的なので、せっかく結晶ができても見えないと意味なし。
  • あるいは下半分のドライアイスが入ってるところにいくつかLEDをしのばせておくのはどうだろう? ひょっとしたら素敵な絵が見られるかも。
  • 結晶の撮影はいいカメラでそこそこ遠くから望遠で撮るといいかも、という話だった。
  • なお、この実験が「組み立て式」になっているのは、指導してくれた先生の持ち運びと数量の都合上だったということらしい。原理さえ間違わなければいろんな工夫ができるはず。その工夫を考えるのも実験の楽しさっすね。

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