先日、本棚から大昔のラーメン本を見つけた。
『ぴあランキン’グルメ シリーズ2』(ぴあ)という本。
えらい懐かしいのだけども、実はこの本、以前にこのブログで紹介している。
「90年代のラーメン本4」というエントリで、2010年の記事だった。
この本は1997年の発行で、この記事を書いた13年前に世に出た本ということになる。
この記事にも書いているが、90年代までの関西はラーメンでいえば雌伏の時代だった。
その中で京都はすでに独自のラーメン文化を花開かせた、関西圏でのリーダーだったが、それでも全体的には完全に東高西低。
これは関西の人間から見ても明らかな事実だった。
ところがこの翌年、1998年の元旦に放映されたTVチャンピオン『日本一うまいラーメン決定戦』で和歌山の井出商店が優勝するという「事件」が起こったのを皮切りに関西のラーメン界は盛り上がり、特に大阪を中心に関西圏全体を巻き込んで、お店、ユーザー含めて、質、量共に大きく変動していく。
それが花開いたのがまさに00年代で、この記事を書いたのは奇しくもその00年代が終わった直後の2010年だったと。
それからもう15年も経っているというこの事実(^^;;
時の流れは早いねえ。
関西のラーメン界も思えば遠くに来たもんだ。
00年代の大阪ラーメン界の大変革を担ったお店はすでに大御所になりww、その弟子店、孫弟子店までできて更に関西ラーメン界を盛り上げている。
W杯にやっと出られたサッカー日本代表が、もう予選通過しても大して話題にならないみたいな、そんな底の上がり方だ。
凄いねえ。
と、勝手にしみじみしちゃったが、この本はそういう大きなうねり前夜の人気店ランキング。
興味深いじゃないの。
せっかくこの本を見つけたので、この本のランキングの「その後」を見てみた。
「その後」といっても「今のランキング」という意味ではなく、あの本に掲載された、あの時代のランキングに入ったお店が今でも営業しているのかということ。
このランキングに入ったお店が今でも存在するなら、その店は00年代の大変革期もコロナ禍もくぐり抜けた、最低でも28年以上の年月を営業し続けて来られた猛者ということになる。
逆に言えば、閉店した店はかつてこういうランキングに入るほどの人気を誇っていてすらその多くが閉店せざるを得ないという、このラーメン界の競争の苛烈さを強烈に示したとも言える。
この雑誌が発行された時点で既に閉店してしまっていた店も存在したし、つい先日閉店してしまった店まである(神戸の天竺園など)。
今回それぞれのお店を検索してみたら、あの味が忘れられない、あの店の味を継ぐ店はないか……など、既に閉店した店を懐かしむ声がたくさんあった。
そうなんだよなあ、その人にとってはその店は唯一の店だ。特に個人店なら余計にね。
ほんと、人生は一期一会。
いつまでも あると思うな 好きな店
食べたくなった時が行き時だぞ!ww
で。
調べたところによると、ランキング内100店舗中、現在も営業しているのは46店舗だった。
人気店を上から並べた100店舗が28年後に46店舗になったという事実は「約半数しか残っていない」と考えるべきなのか「約半数も残っている」と考えるべきなのか、よくわからない。他業種と比べてみたいね。
ランキングに入った100店舗の府県別店舗数は
大阪50 京都31 兵庫16 和歌山2 奈良1 (合計100店)
この本の別のところで、「大阪・兵庫・京都・滋奈和」という表現を見たのでこの雑誌のいう「関西」はこの範囲なのだと思うが、滋賀の店はランキングには入っていなかった。「純粋に読者投票のみで決める」というタテマエをしっかり守った結果なのだろう。私はこれはこの雑誌の誠実さなのだと思う。
そして半数が大阪。
人気投票だから、まあ、「絶対数」がものを言うよね。
で、ここから28年後の2025年に生き残っている46店舗の府県別店舗数は……
大阪16 京都22 兵庫7 和歌山1 奈良0 (合計46店)
なんと、生き残っている店は京都の方が大阪より多い。
これはこの時点で京都がラーメン文化としては成熟しており既に「老舗」となっていた店が多く、既に盤石の基盤を築いていたとも考えられるかもしれない。
府県別に生き残り率を計算してみると……
大阪32% 京都71% 兵庫44% 和歌山50% 奈良0%
と、京都が圧倒的な強さを見せた。さすが一歩先んじていた京都と言うべきだと思う。
和歌山、奈良の50%、0%はそもそもサンプルサイズが小さすぎてあんまり意味がなさそうな数字やね。
にしても大阪と京都の生存率の差は対照的。
まだ地に足が着いてなかった大阪の店の瞬間風速感が出ている。
と、そんな感じの結果になった。
前回の記事にその調査結果をくっつけたのが↓の表。
基本的には[営業している|閉店した]を基準に調べたが、比較的最近の閉店で時期が判るもの、移転や店名変更などの情報があるものはメモに書いておいた。
■ 大阪
■ 京都
■ 兵庫
■ 和歌山
■ 奈良
○ 現在も営業中
× 既に閉店
順位 | 店名 | ||
1 | 天下一品 総本店 | ○ | |
2 | 神座 千日前店 | ○ | |
3 | 薩摩っ子ラーメン 空心町本店 | ○ | |
4 | 新福菜館 | ○ | |
5 | 麺蔵 加納町店 | ○ | |
6 | 夜鳴きや | ○ | |
7 | 彩華ラーメン 上本町店 | ○ | |
8 | 第一旭 たかばし本店 | ○ | |
9 | 金龍ラーメン 道頓堀店 | ○ | |
10 | 芦屋ラーメン庵 | ○ | |
11 | めん馬鹿一代 | ○ | |
12 | ラーメン横綱 吉祥院店 | ○ | |
13 | もっこす | ○ | |
14 | 青葉らあめん | × | |
15 | 三馬力 | × | |
16 | 四宮軒 | ○ | |
17 | 揚子江ラーメン | × | 梅田の総本店。2020年4月28日閉店。他ののれん分けや支店は残ってる。それらの残された店を食べ歩いたこの記事は秀逸。 |
18 | 龍虎 | × | |
19 | 二両半 都島店 | × | 布施と鶴橋、京橋の店は今も盛業。 |
20 | 古潭 なんばCITY店 | ○ | |
21 | 天天有 | ○ | |
22 | 火無夷 天満店 | × | |
23 | 神戸ラーメン第一旭 三宮本店 | ○ | |
24 | ますたに | ○ | |
25 | 新進亭 | ○ | |
26 | 信濃路 | × | 2022年12月閉店。 |
27 | 元町ラーメン | × | |
28 | 一番星 | ○ | |
29 | 元祖安さん | × | |
30 | 金ちゃん 本店 | × | 2019年3月30日閉店。 |
31 | 九州ラーメン 福将軍 | × | 2014年8月19日閉店。もう10年以上か。 |
32 | タンポポ | ○ | |
33 | 博多長浜ラーメン みよし | ○ | |
34 | らんたん | ○ | |
35 | 味千 | ○ | 北大路から北山に移転し2010年9月23日に「肥後もっこす」開店。ちなみに北大路の跡地では現在「鶏そば223(ツツミ)」が営業中。 |
36 | 味仙 | × | 「みせん」ではなく「あじせん」と読む。台湾屋台の「担仔麺(タンツーメン)」「台湾ラーメン」を出す。「台湾」「味仙」だが名古屋の味仙とは無関係。2017年4月に閉店したが、なんと翌2018年10月11日に東京は歌舞伎町に「心斎橋味仙」として移転オープンしていた! これは知らなかった。 |
37 | 十六番 | ○ | |
38 | 双龍らーめん | × | |
39 | 大阪の味ラーメン喜らく 新梅田シティ店 | ○ | |
40 | 力雅 | × | 2017年3月28日閉店。 |
41 | 鳳ラーメン | × | |
42 | 尾道ラーメン めんくい | × | |
43 | 天竺園 | × | 今年(2025年)2月か3月には閉店した模様。ほんの最近。 |
44 | ラーメン屋敷 藤平 | × | ここもチェーン展開でこの後爆発的に店舗数を増やしたが民事再生で2009年6月に「どさん子」を運営するホッコク傘下に。しかしホッコクも会計問題を起こしてJASDAC上場廃止でゴニョゴニョ。「らー麺 藤平」の店舗は今もいくつか営業している。 |
45 | 天佑 | × | |
46 | ちりめん亭 長居店 | × | モスバーガー傘下のチェーン店だったが2014年1月1日にケンコーに譲渡。現在大阪に店舗なし。 |
47 | こむらさき | × | 同名の店がたくさんある印象だけども、ここは神座のようなコンソメ白菜のラーメンだった。 |
48 | 玄屋 | × | |
49 | らいよはうす | ○ | |
50 | ラーメン日本一 | × | |
51 | 洞魔麗 | ○ | |
52 | ラーメン芳珉 | × | |
53 | 皇蘭 JRなんば駅前店 | × | この店はこの本発行の時点で閉店していた模様。「皇蘭」自体は神戸南京町の本店をはじめ今も盛業。 |
54 | 剛力ラーメン | × | 2011年8月7日閉店し2012年1月に末広町に移転開業。その後閉店。 |
55 | 今日しかない | × | |
56 | 喜多方ラーメン 蔵 | × | 一時期は結構見かけたチェーン店。「喜多方ラーメン 蔵」自体はまだ営業している店舗があるが、大阪にはもうない。 |
57 | ほそかわ | ○ | |
58 | らーめん朱 梅田店 | × | 閉店後、2008年に心斎橋に移転し「らーめん 朱 RENOVATE」として開店。その後閉店。 |
59 | ラーメン宝来 | × | |
60 | ラーメン新心亭 | × | |
61 | 本家ラーメン2国本店 | × | 一時期は有名でたくさん店舗があった。2004年2月、土山店で強殺事件が発生。2007年1月に民事再生法申請。波瀾万丈。現在も一部店舗が営業中。旧本店所在地では営業していない。 |
62 | 白らーめん南蛮亭 二切店 | × | 2007年12月閉店。 |
63 | 淡水軒 | ○ | 2022年3月30日閉店。同年7月16日に湊川に移転オープン。 |
64 | ちりだラーメン | × | |
65 | アベノ日本一 | × | 生駒市平群郡西宮に移転後、同郡の信貴山に移転…でいいのだろうか? 信貴山のお店は現在も営業中。先日テレビで見てびっくりしたww |
66 | マキノ家 | × | |
67 | 鳳林 | ○ | |
68 | 大来軒 本店 | ○ | |
69 | 珍遊 | ○ | |
70 | 友屋 | × | 下山手通から中山手通に移転。どこかで閉店と見たのだけど、ソースが見つからず(食べログでは掲載保留)。 |
71 | 九州ラーメン博多 | × | |
72 | ラーメン日本 池田本店 | ○ | |
73 | 博多ラーメンげんこつ 豊中店 | × | ここもその後のチェーン展開で一時はかなり店舗数を伸ばした印象。現在、豊中店はなくなったが公式サイトによれば大阪、兵庫に13店舗営業中とのこと。 |
74 | 紅鶴ラーメン 本店 | × | |
75 | 白龍 | × | |
76 | ラーメンあかつき | ○ | |
77 | 天龍 | ○ | |
78 | ニンニクラーメン天洋 九条店 | ○ | |
79 | 拉州 | × | |
80 | 親爺 | ○ | |
81 | かっさんラーメン | ○ | 2020年6月30日閉店。同年8月1日もつ鍋屋に業態変更し「もつ鍋屋かっさん」としてリニューアルオープン。ラーメンも食べられる。 |
82 | くりやん | ○ | |
83 | じゅんちゃんらーめん 緑橋店 | × | |
84 | まるしげ 中華そば店 | × | 2019年3月10日閉店。太田に移転し同年4月13日開業。その後2023年1月に閉店。 |
85 | レノンののれん | × | |
86 | 宮っ子ラーメン | ○ | |
87 | 小洞天 | ○ | |
88 | 天宝 | × | |
89 | マンサクラーメン | × | 現在、跡地では「716(ナナイロ)」が営業中。 |
90 | 一級らーめん | × | |
91 | 屋台 | ○ | |
92 | 華楽園 | × | |
93 | 真琴 本店 | ○ | |
94 | 九州ラーメン 王 | × | |
95 | 都飯店 | ○ | |
96 | 浜ちゃん | × | |
97 | 藤っ子ラーメン | × | |
98 | まるやま | ○ | |
99 | 京都一休軒 | × | |
100 | 上海 | × |
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