最近、やたら蒸し麺でソース焼そばを作っている。
直接のきっかけは、4月に日本コナモン協会のイベントをやった時に、蒸し麺と茹で麺での焼そばの食べ比べをしたこと。
↑その時の動画


Aが太麺・茹で麺で、Bが細麺・蒸し麺
写真では具がえらい違うが(^O^)、実際は同じ
結果はA太麺・茹で麺が87:47=65:35で多かった。こちらを選んだ理由の多くが「モチモチした食感がいい」と。回答者は観光客よりも大阪の人が多かったように思う。
茹で麺/蒸し麺の違いは知っていたものの、それほど強烈に意識したことはなかった。
しかしこれをきっかけに、大阪のソース焼そばとそれ以外(というか、まあ関東、東京だな)のソース焼そばとの違いを意識するようになった。
大阪人のようにソース焼そばに「モチモチ」の食感を求めるのは、実は全国的にはさほど多くないんじゃなかろうか。
この「モチモチ」を実現しているのは大阪のソース焼そばによく使われる「茹で麺」なのだが、ソース焼そば用の茹で麺は、実は東京など関東ではほとんど見かけることがない。ある製麺所の社長から、関東でお店を始めた大阪のお店から(周辺の店で買えないから)茹で麺を送ってくれと言われるのだけど輸送時間を考えると送れず、生麺を店で茹でて使ってくれとお願いしているという話を聞いたことがある。

別の大阪のスーパーにて。ここは3食焼そばを含め、日配品の焼そば用麺は「茹で麺」のみ。
全国的に見れば、ソース焼そばは「蒸し麺」が常識だ。
そもそもソース焼そばが誕生した浅草を擁する東京はどうか。
※『にっぽん洋食物語大全』(小菅桂子)には「ソース焼きそばを、浅草焼きそばという人もいる」という記述がある。まあ小菅桂子という人はなかなか信憑性が怪しい人だけども。(その件についてはまた別のエントリで)
例の『素人でも必ず失敗しない露天商売開業案内』(昭和11年)によると、戦前から蒸し麺ですね。生麺を仕入れて自分で蒸すのですが、この頃にはすでに卸売もあったようです。もともと支那料理のヤキソバも蒸し麺を揚げてました。染太郎の開業は1年後ですから、おそらく当初から蒸し麺だったはずです。 pic.twitter.com/8V7KtWYCFv
— 塩崎省吾〈焼きそば研究家〉 (@SaltyDog_wow) August 16, 2022
焼きそば研究家の塩崎省吾さんと『お好み焼きの物語』の近代食文化研究会さんの豪華な対話だが(^O^)、ここで紹介されている『素人でも必ず失敗しない露天商売開業案内』(昭和11年)にはこう書かれている。
焼そばを作る道具としては、ドラ板、火鉢スパーテの三種類があれば揃ふのである。ドラ板には鐵板と銅板の二種があるが、鐵板の方が安價で、それに毒靑の危険がない。(値段は一圓内外)火鉢はこのドラ板の下に置くのだが、これは木製の角火鉢がいゝ。煉炭を使用する時はそれの装置のあるもの、これは手製で結構である。スパーテとはドラ板の上にあるそばを掻き混ぜるもの、これは眞鍮製の幅の廣いものがいゝ。二本三十銭位。
次に、流動資本に就て簡単に述べれば、
1、支那そば 二、三貫目(茹でた時の目方)これは一玉二錢位で、仕入先は前項で述べた所と同じ。
2、キャベツ カツに附いてゐるものの位に細かに切つて使ふ。
3、天ぷらの揚カス これは附近の天ぷら屋と契約しておけば毎日取つて置いて呉れる。五銭乃至十銭位で充分である。
4、ソース 一升三四十錢のものをソースの問屋から二、三本買つて置く。
5、炭一俵 堅炭で一圓位
以上が材料である。全部で五、六十圓位の資本があれば安心してやれる商賣である。〔調理のコツ〕最初に、そばの玉をふかしておくのだが、これはせいろに入れ、充分柔らかに且つ量をふやせばいゝのである。然しこれは自分でやらずとも最近では、焼そば用にふかした物を賣つてる店があり、そこへ頼めば毎日配達してくれるからその方が便利であらう。次に、ドラ板を充分熱しておき、その上に前述のそばを、キャベツや天ぷらの揚カスと一緒に載せて、この三つをよく掻きまぜる。充分揚カスの油が全部に廻り熱くなつたらソースをかけ、更に一層よく掻きまぜればそれで出来るので、至極簡單な造り方である。
他に調味料はいらないし素人の婦人でも樂に出来る仕事である。
強調は引用者:ひえたろうによる。
文中にある「ドラ板、火鉢スパーテの三種類」というのは、後に説明があるように、鉄板と火鉢とテコ(コテ/ヘラ/カエシ等…)の3種類のこと。
※この頃からもうソース焼そばの具はキャベツだったんだなあ。肉はなし。そして興味深いのはサラダ油(^O^)みたいなものは使ってなくて、揚カス(天かす)の油で焼いているところ。天ぷらに使ってる油は何なんだろうね。なおこれは今私たちが何となくイメージする、製品としてきれいにパッケージされて売られている天かすとは違って、本当に揚げカスのことだろう(惣菜コーナーで揚げ物の横で売られてるやつみたいな)。
※1936(昭和11)年当時には東京では焼そばには蒸し麺が使われており、しかもそれを製造する業者がいたと。
焼そばの他に蒸し麺を使う料理がない(多分ね)ことを考えれば、蒸し麺はソース焼そばのためにわざわざ作られていたということだし、それを製造する業者が既にいたということは、ソース焼そば=蒸し麺はこの頃にはかなり常識だったということなんだろう。
※塩崎省吾さんと近代食文化研究会さんの会話に出てくる「染太郎」は浅草で今も続く現存最古?とも言われるのお好み焼き屋さん。
その近代食文化研究会さんの『お好み焼きの物語』にはこんな記述がある。
大正末もしくは昭和はじめにお好み焼きのメニュー=中華料理の炒麺のパロディとして誕生したソース焼きそばだが、その人気は天ものさえもしのぐものであった。というのも昭和10年頃には、お好み焼きから独立した、専門の屋台までができるようになったのである。
専門の屋台が出始めた頃にはもうソース焼そば用の蒸し麺を製造する業者があったということで、かなり早いうちにソース焼そば=蒸し麺のパッケージはできあがっていたのだろう。
一方、大阪のソース焼そばに茹で麺が使われだしたのはいつ頃だったのか、私はよく知らない。
おそらくは大阪にソース焼そばが関東から伝わった時には、「お店にある茹で麺」を流用して使っていたのだろうとは思う。その時点で大阪に蒸し麺はないわけだから。それがそのまま蒸し麺に置き換わらずに定着したのだろうか。
ソース焼そばは東京以外には戦後に広まったと考えられるので、戦前からの東京ではウスターソース、戦後に広まった先ではウスターソース/濃厚ソースの両方が選択肢に入ったのだと思う。(濃厚ソースは1947(昭和22)年、中濃ソースは1964(昭和39)年に初めて発売されている)
そこらへんの経緯はおそらく塩崎省吾さんや近代食文化研究会さんの著書に詳しいのだと思うが、まだ読んでいないのよ……。prz
なので推測もかなり混じる。m(_ _)m (読んで違ってたらまた訂正するね)
いずれにせよ、現状、ソース焼そばはかなり大雑把に言って
東京(あるいは関東)⇒細麺・蒸し麺・ウスターソース(コシの強さとスパイシーでキレのある味)
大阪(あるいは関西)⇒太麺・茹で麺・濃厚ソース(モチモチ食感と甘めで濃厚な味)
となっている。
前述の製麺所(大阪)の社長から聞いた話によれば、ソース焼そば用茹で麺の需要は大阪では8~9割、東京では1割もないという。
つまり、東京のソース焼そばと大阪のソース焼そばは違う、と。
実際に自分で生麺を買ってきて蒸して(その後少し茹でて)ソース焼そばを作ってみると、これが大阪のソース焼そばとずいぶん違うことが実感できた。
※上の写真のような日配品や3食焼そばでもおいしいが、ラーメン用の生麺を買ってきて自分で蒸すと、コシもかなり違う、よりおいしい焼そばができたよ。
※神戸・長田の「そば焼き」はむしろ関東のソース焼そばに近いし、お好み焼きを「にくてん」と呼び重ね焼きするところも考えれば、神戸にはお好み焼きやソース焼そばはいずれも大阪を経由せずに東京から直接伝搬したんだろうなあ。
※実はソース焼そばは「にくてん」と同列の「お好み焼き」の一種なのだが、だからといってにくてんとソース焼そばが同時期に神戸に伝搬したのかは判らないのでその話はあえて割愛。
まだ感想レベルに過ぎないが、大阪のソース焼そばは白米に合う。それに対して東京のソース焼そばは白米にはあまり合わない。あえて言えばパンに合う。
そしてこの「東京と大阪では焼そばは違う」という事実が、焼そば定食/焼そばパンを成立させる原因だったのではないかと。
※「ソース焼そば」という同じ名前で同じものについて話していると思っているから、
「大阪の人って、焼そばをおかずにご飯を食べるんでしょ? 炭水化物に炭水化物ってあり得ない」
なんてことを、焼そばパンをかじりながら言ったりするわけだ。
※その意味では東西の人が「肉まん」という言葉で全く別のものを頭に浮かべながら(同じものの話をしている気になって)話している時と似ている。
さらにいえば、東京/大阪の人たちがソース焼そばに求めるもの(どういうものをおいしいと思うか)の違いがペヤング/UFOの味の違いを生んだのかもしれないと思ったりする。
ほぼ毎日(^O^)蒸し麺のソース焼そば(関東風)を焼いてみて思ったのは、
・具の野菜はキャベツだけでいいが、もやしを使うなら太もやしではなく細もやしの方が合う
・ウェットではなくドライの方がうまい(水分をよく飛ばす)
・蒸し麺の食感は茹で麺の「モチモチ」とはまったく違うが、これはこれでとてもおいしい
……他にもあるはずだが、今は思い出せないぞ。(^^;;
まあいい。
「ウェットではなくドライの方がうまい(水分をよく飛ばす)」と書いたが、大阪の太麺・茹で麺・濃厚ソースだとそこまでドライさは求められない(だから白米に合うのだと思う)。
昔、ローソンが「ジューシー焼そばパン」というのを出していて、
「『ジューシー』が、この焼そばパンが他より美味しいというアピールになるの?(「ジューシー」という言葉で、人は焼そばパンにシズル感を感じるのか?)」
と思っていたのだが……。
どうしてもお前らは焼きそばパンに「ジューシー」って飾り文句つけたがるんだな。何でや? 美味そうに聞こえるんか? 単なる焼きそばに、「ジューシー」ってつけたことあるんか pic.twitter.com/S6u38HOKTY
— ひえたろう@笑顔と上機嫌こそが最高の化粧 (@hietaro) May 12, 2017
「関西限定」と書いているところを見ると、今なら確かに納得できる部分はある。
まぁ、この焼そばはパンに合うやろか?(>_<)とは思うが。
ただ、もう1つ不思議と言えば不思議なのだけども。
関東では中濃ソースが主流だと聞く。これで全部まかなうのだと。
しかし作ってみて判ったけども、蒸し麺のソース焼そばは圧倒的にウスターソースの方が美味いし、そもそもソース焼そばが成立した時には中濃どころか濃厚ソースも存在せず、ウスターソースだけだった。
ということは、もし関東で家庭でソース焼そばを作る場合、ウスターソースを使うのだろうか?
そのためだけに用意している?
あ、3食焼そばの粉末ソースか……!?
というわけで、今回の結論は、ソース焼そばは……
| 東京 | 大阪 | |
| 麺 | 細麺・蒸し麺 | 太麺・茹で麺 |
| ソース | ウスター | ウスター/濃厚 |
| 食感と味 | コシの強さ スパイシーでキレのある味 |
モチモチ食感 甘めで濃厚な味 |
| バリエーション | 焼そばパン | 焼そば定食 |
| カップ焼そば | ペヤング | UFO |
というイメージ。
あるいはもっと想像力を働かせると、つけ麺(に限らないかもしれない)の、主に中力粉を多く使った多加水のモチモチした太麺という関西の趣味と、強力粉が中心で(極太麺があるものの、それも含めて)むしろパツパツした麺が多い関東との違いも、結構こういう嗜好の現れなのかもしれないと思ったりもする。
ひょっとしたらこれはうどん/そば文化の違いなのかもしれないし、もっと違う何かなのかもしれない。
突然食いたくなったものリスト:
つけ麺いろはの 麺・イン・ブラック
本日のBGM:
時からの誕生(パフォーマンス) /黒木香
さわるんじゃねー /チェリールイ(桜樹ルイ)
Resolution /麻美ゆま
前々回からの続き。
ご存じの方はご存じなのだが(^O^)黒木香は昔のAV女優。昔からAV女優が曲を出すというのは意外に行われてきた。そして何故か、いい曲も多い。(^^;;
というわけで、黒木香からイモヅル式に引っ張り出してみた。

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