化学調味料関係のとりあえずのメモ(その8)

 東京に行ったときに、ここには行っとけと勧められて行った御徒町の大喜の近所にアメ横があった。ほう、これがあのアメ横というやつか。知らなかった……。

 そこで見かけた光景。


中段左奥からフレーブ(ヤマサ醤油)、いの一番(キリン協和フーズ)、味の素(味の素KK)、ハイミー(味の素KK)、ミック(キリン協和フーズ)、ミタス(JTフーズ)


別の店にあった、台湾の味全

 なかなか壮観だった。(^O^)

 あまり比べることもないだろうから、これらの成分をまとめておこう。
 

アミノ酸 核酸 有機酸
L-グルタ
ミン酸
ナトリウム
アスパラ
ギン酸
ナトリウム
5′-リボヌ
クレオチド
2ナトリウム
5′-イノシ
ン酸
2ナトリウム
5′-グア
ニル酸
2ナトリウム
コハク酸
ナトリウム
クエン酸
ナトリウム
フレーブ 91.5% 8.5% (4.25%) (4.25%)
いの一番 92% 8%
味の素 97.5% 2.5%
ハイミー 92% 8%
ミック 89.8% 2.0% 8.0% 0.2%
ミタス 88% 8% 4%
味全 100%

 
 一番下の味全以外は、いくつかのうま味調味料の混合物となっている。
 それはもちろんこれまで何度も書いたとおり、アミノ酸系と核酸系を混合することによる「うまみの相乗効果」を狙っているわけだ。(後述するが、有機酸系のクエン酸ナトリウムにはうま味はない)
 こういう、複数のうま味調味料を混合させた調味料を「複合うま味調味料」という。
 ここでいえば味全以外の全てが複合うま味調味ということになる。
 複合うま味調味の中でも核酸系うま味調味料の比率が低い(1~2.5%)ものを「低核酸系うま味調味料」、それ以上を「高核酸系うま味調味料」という。
 ここでいえば、味の素が低核酸系うま味調味料、フレーブ、いの一番、ハイミー、ミック、ミタスが高核酸系うま味調味料。

 複合うま味調味の成分の中の核酸系成分の中心となるのがリボヌクレオチドナトリウムだけども、これはグアニル酸ナトリウム(しいたけのうま味成分)とイノシン酸ナトリウム(かつお節のうま味成分)の混合物のこと。この2つは同質の味で違うのは呈味力だけなのだけども、その混合比率がフレーブ以外は公表されていない。なのでいの一番ハイミーとは同じヌクレオチド8%ながらその構成比はそれぞれ違う可能性があり、全体としてうま味の強さが違う……かもしれない。

 グルタミン酸ナトリウム、リボヌクレオチド(イノシン酸、グアニル酸)の話は以前にもしているので、複合うま味調味料に使われている他の成分の説明(抜粋)を、おなじみ太田静行『うま味調味料の知識』から御紹介しておこう。
 

アスパラギン酸ナトリウム

 アスパラギン酸(asparatic acid)は以下に示すように、グルタミン酸と構造がよく似たアミノ酸で、その味もよく似ている。
……
 アスパラギン酸は植物たんぱく質中に多量に含まれており、みそ、しょうゆなどにかなり多く含まれている。
 アスパラギン酸は融点270~271℃、水に難溶であるが、ナトリウム塩は水にかなりよく溶け、グルタミン酸と同様のうま味と鹹味を持っている
 

コハク酸ナトリウム

 コハク酸……清酒の味にコハク酸が関与している……シジミ、アサリ……コハク酸がこれらの貝類のうま味の主成分である……現在では、動植物界に広く分布することが知られている。
 ……例えば貝類には……コハク酸はかなりの量が含まれて、貝類の特有の味に寄与している。
 コハク酸の場合も、調味料としては酸の形ではなく、ナトリウム塩として用いられることが多い。
 ……コハク酸ナトリウムの閾値は0.02%で、その呈味は独特の貝類様のうま味を持つ。グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムなどとの間に味覚上の相乗効果はない
 コハク酸ナトリウムは、醸造品をはじめ一般加工食品に調味料として用いられているが、その味がかなり特異的で、使用量が多すぎると、ひどくえぐい味になるため、家庭用調味料として使われることはほとんどない。
 加工食品に対する添加基準量は、清酒(3倍増醸清酒)0.08~0.09%、しょうゆ0.01~0.03%、練り製品0.01~0.03%である。グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムなどと異なり、適量以上に添加された場合には、かえってその食品の風味を害することがあるので注意する必要がある。貝類の佃煮などには必須の調味料となっている。
 

クエン酸ナトリウム

 クエン酸ナトリウムは……<ミタス>の成分として複合うま味調味料に加えられている。
 クエン酸ナトリウムは医薬として血液凝固防止剤の目的で1914年から使われているが、食品用としては、その緩衝作用、乳化安定作用が利用され、食品添加物の1つとなっている。
 うま味成分ではないが、クエン酸ナトリウムは緩衝作用が強く、味をマイルドにする作用があり、グルタミン酸ナトリウムやリボヌクレオチドナトリウムと併用すると、鶏がらに極めて近似したうま味になるとされている。
 
 
 うま味調味料に添加すべき有機酸塩の添加量については自ずから使用範囲があり、それぞれ有機酸塩類の種類により異なるものであるが、一般的に、その添加量が製品中20%以上になれば薬品のような味を呈するようになり調和性を失う。したがって、その添加量の範囲は20%以下とすべきであり、望ましくは5~20%で、最適には10~20%である。もちろん、これらの%以下であってもよい。また、呈味性核酸物質は10%以下で、2~8%が望ましい。またグルタミン酸ナトリウムは72~93%がよいとされている。

── 太田静行『うま味調味料の知識』(幸書房)より抜粋。

 おまけ。
 以上のことを踏まえると、こういう例↓はなんか笑っちゃうよね。(^O^)




『ラーメン・つけめん タレの技術読本』より、ある店のタレのレシピ(一部)

 若干の違いがあるかもしれないといういの一番ハイミーのブレンドとは、あまりに微妙な匙加減じゃないか。(^O^)
 いっそのことミタスミックを使えば、ひょっとしたらブレンドの意味もあるかもしれないけど……。

 この本には他にこういうレシピの店もあった。




『ラーメン・つけめん タレの技術読本』より、ある店のタレのレシピ(一部)

 ピンぼけで申しわけない。

 結局のところうま味調味料をブレンドしたら存在感が出るのか前面に出にくくなるのか、どっちなんだ? (^O^)

※この本にはうま味調味料を使わない店やレシピも多いのよ。単にうま味調味料を使っている店を挙げただけで。

突然食いたくなったものリスト:

  • ういろう

本日のBGM:
Citizens of Science /YELLOW MAGIC ORCHESTRA






コメントを残す

メールアドレスは公開されません

CAPTCHA