結局そういうことか(産経新聞ラーメン部)

 以前、「「大阪ラーメン」ですか。」というエントリを書いた。

 これは産経新聞大阪本社の記者たちが作る「産経新聞ラーメン部」による「大阪のご当地ラーメンを作る」プロジェクトの話だ。

 このプロジェクトそのものの経緯は

トピック:それゆけ!ラーメン部
関西テレビ『スーパーニュースアンカー』で紹介された時の番組内容

 あたりを読んでただければつかめると思う(『スーパーニュースアンカー』の方が分量が少なくて話を理解するには早道)。
 私はこれについて、

「大阪ラーメン」ですか。

 で大体のことを書いたけれど、もう少しだけ書いておきたい。「やっぱり」なことではあるのだけれどね。

 改めて書くが、産経紙面によるとこの「大阪のご当地ラーメンを作る」プロジェクトは編集局内のこんな会話から始まったのだという。
 

「そういや、なんで大阪にはご当地ラーメンがないんや?」

「ほんまですね。あってもいいとは思いますが…。ないんなら自分たちで作っちゃいましょうよ」

 
 一方、『スーパーニュースアンカー』の方を見ると、
 

「本当に素朴な疑問から始まった。大阪にご当地ラーメンってあったっけ?みたいな、 そういやないよなって話になって、じゃあなんでないんやろ?って話を取材したら、おもろい記事が書けるんちゃうかって。ご当地ラーメンがないんやったら、作ってみたらどうやろ、どんなラーメンができるんやろって。」(白岩賢太記者)

 
 となっている。
 いずれにせよ「ご当地ラーメンがないんやったら、作ってみたらどうやろ」という疑問から、「記事を連載しながら「大阪のご当地ラーメン」を作ること」を目的に始まったということだ。

 産経の記事を追っていただければわかるように、このプロジェクトによる「大阪のご当地ラーメン」は、今年(2011年)アタマには完成し、屋台で実際に販売された。

 このプロジェクト、そして作られたラーメンに対しての意見は既に書いた。

 今回書くのはここから後の話。改めて「トピック:それゆけ!ラーメン部」を眺めていただきたい。

 【それゆけ!ラーメン部】と銘打たれたこのシリーズ記事は、2011年1月21日付を最後に途絶えている。おそらく「完結」したのだろう。

#いや、ひょっとしたらウェブに上がっていないだけで連載は続いているのかもしれない。ただ、私は産経新聞は取っていないし、産経新聞は縮刷版も出していないので確認もできない。なのでここではウェブの記述をそのまま信じて、連載が終わっているものとして話を進める。もしも実際に連載が続いているのなら、ご存じの方教えていただけるとありがたい。その際は訂正します。

 最後となった2011年1月21日付の記事は、作り上げたラーメンに佐野実からやっとOKをもらうことができた、という話。
 

「油の絡み具合もすごくいい。こんなラーメンは今までになかったんじゃないか? 俺にも教えてくれよ」。佐野さんの言葉で、悲願は達成された。

 
 よかったよかった、完成しましたよ♪
 「大阪ラーメン部」としては、10ヶ月も費やした「大阪ラーメン」が無事完成しプロジェクトは大成功、大好評のうちに終了!悲願達成!めでたしめでたしーーーっ!というところなのだろう。

 『スーパーニュースアンカー』では、佐野実からOKをもらうことができた記者たちが喜びの言葉を述べている。
 

10ヵ月かけて完成した「究極の一杯」。記者たちの顔に笑顔があふれました。
「ラーメンで大阪の食が、見えてきたのが面白かった。」(中井記者)
「僕らが想像していたコンセプトに近いラーメンはできたのかな。達成感はあります。」(白岩記者)

 
 ハッピーエンド♪

 きゃー☆ パチパチパチパチ。

 連載も無事終了~~~!

 ……。

 こいつら、本当にバカだ。

 ほんっと、ほんっとに、見事に「ご当地ラーメン」をバカにしてるんだよな、こいつら(「大阪ラーメン部」の記者たち)。

 はっきり言っておこう。

 彼らが作ったのは、「大阪ラーメン」と名前をつけた単なるラーメンにすぎない。

 彼らが大阪に「ない」と言い放った(そして大阪を「不毛の地」と言い切った)「ご当地ラーメン」とは、そういうものではなかったはずだ。
 ある地域内で広く見られる特徴的なラーメン、具体的には博多ラーメンや喜多方ラーメンのようなものを想定して、「大阪にはご当地ラーメンがない」と言っていたはずなのだ。

 とすれば、「ご当地ラーメンがないんやったら、作ってみたらどうやろ」という言葉が意味するところは、単なる「大阪ラーメン」を名乗る、誰も知らないラーメンを1つ完成させるだけの話であるわけがない。
 むしろここから「よし、やっと素材(ラーメン)ができた、これをどうやって大阪の『ご当地ラーメン』に成長させるか、これまで誰もできなかったことだけど、やるぜ!」となるべきなんだ。
 つまり、このプロジェクトはやっとスタートラインに着いたばかり、という段階にあるはずなのだ。

 それが、どうして佐野実にOKをもらうところにゴールが設定されているのか。佐野実が大阪の「ご当地ラーメン」を認定するのか? 彼がやったのは単にラーメンとしての完成度にOKを出しただけじゃないか。

 自分たちで作り上げたこの自信のラーメンを、どうやって大阪の「ご当地ラーメン」にまで育て上げていくか、この「不毛の地」に浸透させていくか。これをやらないで何が「ご当地ラーメンがないんやったら、作ってみたらどうやろ」なのか。いやいやいやいや、あんたらまだそんなもん作ってへんから。

 もう一度書く。
 彼らがやったのは、ちょっとこだわったラーメンを1つ作って、それに「大阪ラーメン」という名前を勝手につけたということだけだ。そんなところで「達成感」味わって真っ白に燃え尽きちゃってどうするよ。
 たったこれだけで大阪のご当地ラーメンができるのなら大阪は今頃ご当地ラーメンであふれかえってるよ。自分たちがどれだけ特別なことをしたと思っているのか。先人はバカばっかりだったと思っているのか。

 「大阪にはうまいラーメンがない、ないなら作ろう」とか「『大阪ラーメン』を名乗るラーメンがない、ないなら作ろう」ならいいのよ。しかし「うまいラーメン」ではなくあえて「ご当地ラーメン」を作ると明言するからには、その違いはもちろん認識した上だと普通は思うよね。ちょっと考えればわかることだし。

 件のエントリで私は、彼らが最終的にどういうラーメンが作りたいかというコンセプトが曖昧だと書いた(「究極の一杯」を作りたいのか「大阪の多くの店に普及するラーメン」を作りたいのか)。

 そしてあの段階で連載が終わっちゃったことで、「ご当地ラーメン」という、プロジェクトの根幹に関わる大事な概念を彼らがまったく理解していなかったということが判明したわけだ。(だったら「ご当地ラーメン」なんて言葉持ち出すなよなあ)

 単純な話、このラーメンが5年後に「大阪の『ご当地ラーメン』」として認識されてると思いますか?と。当の記者たちですらそんなこと考えてないだろう。

 この記者たちの「ものを考えない」っぷりは本当に酷い。

 結局、彼ら新聞記者たちはラーメンやラーメン店を遊び道具にして10か月間遊んでいただけなのだ。
 そしてそれなりに楽しんだ(記事にした)からやめたと。自分たちが書いたことのケツも拭かないで。

 ラーメンやラーメン店、そしてそれを愛する客をバカにしてるんだよ。彼らは。
 ほんとに社会部か?

 巻き込まれたラーメン屋に迷惑をかけたなんて思わないんだろうな。むしろタダで宣伝してやったんだからとか考えてたりするのかと勝手に想像して勝手に腹が立つ。

 ……とはいえ、私が知らないだけで、ちゃんとプロジェクトも連載も続いていることを祈る。

 そうなってたらこの記事も喜んで引っ込めるし訂正もする。

#「自分たちで作り上げたこの自信のラーメンを、どうやって大阪の「ご当地ラーメン」にまで育て上げていくか、この「不毛の地」に浸透させていくか」というのは、本当にやってみたらかなり面白い記事になると思うんだけどねえ。失敗するだろうけど、成功したら凄いし、失敗したっていい記事になるはずだ。

 しかしこいつらが最初から言ってた「大阪のご当地ラーメン」って、本当のところ一体どういうものだったんだろう?
 言葉のそのままの意味ではなく、本人たちの主観として。

 結局、「(自分たちが考える)大阪っぽさがあって、佐野実にOKがもらえるほどおいしいラーメン」くらいだったんだろうな。

 これを普通の人が「大阪のご当地ラーメン」と受け取るかどうか、少しの想像力が(ry

突然食いたくなったものリスト:

  • 巻き寿司

本日のBGM:
原発賛成音頭 /THE TIMERS






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