全国一斉カレーの日

 ずいぶん前に友人(アニバーサリー女の属性アリ)が力説していた話。
「ある日、全国一斉にカレーライスの給食が出た!」
 というんだけど、全然記憶にない。
 「全国一斉カレーの日」と言ったらしい。

 本人によると、伝聞の話ではなく、実際に食べた記憶があるという。
 「知らんで」という私たちに力説する彼女。
 その後「どうやら本当にあったらしい」という感触は得たのだけども、やっぱり記憶にないんだよなあ。
 ……といいながらきれいさっぱり忘れていた。
 で、最近読んだ本(井上岳久『カレーの雑学』)にこれについて言及があったのでいろいろググってみると、全国一斉カレーの日はなかなかミステリアスな話題に満ちていることが分かった。(まあ結局は当時はネットがなかったので情報の入口がかなり限定されていたらしい、ということなんだろうけども)
 この↓あたりを読んだ。
カレーの日(給食万歳 All I Want for School Dinners)
カレーの日の謎 解ける(tak shonai’s “Today’s Crack” (今日の一撃))
No.164 日本全国の小中学校の給食を一日だけカレーで統一する計画があった(番組評価 63/100へえ)
 これらの情報によると、この日は1982/01/22。正確には「全国統一献立日」といったらしい。
 全国学校栄養士協議会という学校給食の栄養士の組織が設立20周年を記念し「給食の意義を考える」という名目でこの日は全国の小・中学校で同じ給食を出そうと企画したそうな。
 会が行っていたアンケートで「好きな献立」の上位にあり、全国どこでも材料が手に入りやすく調理しやすいということで、「統一」メニューはカレーに決定した。
ここには面白いこと書いているよ。「昔、このアンケート結果をまとめて「おかあさんはやすめ」って言ってまして。オムレツ、カレーライス、サンドイッチ、ハヤシライス、やきそば、スパゲティー、目玉焼き、だったかな」だって。ほんとにこの結果からこの頃を考えたのだとしたらその人凄すぎる。
 ところが給食・教育の管理化などと議論を呼び、全国統一などといいながら実施されたのは一部の学校だけだったそうだ。
 「議論を呼び」って何よ?と思うだろうが、いろいろ議論はあったらしい。で、現在ネットで残っている貴重な議論の資料がこれ↓(長いから読み飛ばしてもいいよ)。
 舞台は参議院、1981(昭和56)年11月24日の文教委員会
 日本学校健康会法案審議中の、参考人への質疑。
 質問しているのは佐藤昭夫議員。答えているのは全国学校栄養士協議会の田中信会長。
 

○佐藤昭夫君
 ちょっと質問が飛びますのでお許しいただきたいと思いますけれども、田中さんにお尋ねいたします。
 先ほど来、きょうの参考人の何人かの方も触れられていますし、先日、私も当委員会で文部省に質問をしたんですが、一月二十二日に予定をされておる全国統一献立ですね、この全国学校栄養士協議会の結成二十周年に当たってそれを記念をするいろんな事業をやるという、このことについては何も否定もしないし、いろいろ御苦労をなさっておる方々のその御苦労に報いていくための、そういう記念事業が計画をされるということはある意味では必要なことかと思うんですけれども、
   〔理事世耕政隆君退席、理事大島友治承者席〕
問題はその記念事業の重要な内容が全国一斉に――私は何もカレーライスを恨みに思って言うわけじゃないとこの間も言っていたんですけれども、たまたまカレーライスということですけれども、統一献立を一斉に各学校で供していくという、このことが本当に学校給食の本来の目的である地域や学校の実情にふさわしい多様な給食を子供たちに与えていくというこの点から見て一体どうなのか。
 ちょっとおたくの協議会の「学校給食記念週間中の全国統一献立日実施に伴なう会員用資料」という文書を拝見をしたわけでありますけれども、そうしますと「全国統一献立実施に当って」ということで、田中さんの会長名で趣旨のようなものが書かれておるわけですが、その中で「米国では、毎年金米統一献立を、学校給食記念週間中に行ない、大統領はじめ役所でも学校給食と同じメニューのものをたべるということはききました。」と。そうすると、日本も、総理大臣から、役所からそういうものを一斉に食べてもらおうというのが一番理想の姿とお考えになっておるのですか。まあいずれにしても画一的な献立て各学校の子供たちに給食をやっていくという、このことが教育的に見て一体いかがなものかというふうに私は思うわけです。この点についてちょっと田中さんの御見解を聞いておきたいと思います。

○参考人(田中信君)
 ただいま先生の御質問の、私ども全国学校栄養士協議会で計画いたしております全国学校給食統一献立の件でございますが、先生がいまちょっとお読みになったアメリカ云々というところは、実は表に出しておる文書ではございませんで、これは会員用に――こういう経験が私ども栄養士にはないと、ただしアメリカの栄養士は十八年前に学校給食が危機に陥ったときに広く社会に訴える連動を起こしてこのようなことをしたんだということをちらっと書いておきましたのが、いまたまたま先生のお手元に行きましてお読みいただいたような次第でございますが、私どもがその目的といたしますのは、全国同じカレーライスを小中学校の子供に食べさせようとするものではございません。全国同じ献立、カレーライスをもって、そうしてその学校を母体として広く社会に学校給食の重要性を訴えようとしている計画でございます。すなわち、学校給食というものは何と言っても実施の単位が小中学校でございます。そうして、その小中学校の子供が全国同じ献立て連帯感を持ち、そうして小学校、中学校それぞれの立場でもう一度学校給食の大切なことを考えてみましょうということから発想いたしまして、親にも子供たちと一緒に給食を食べてください、じゃお母さんは学校で一緒に試食会とか、親子給食で同じカレーライスを食べて給食のことを話し合ってください、お父さんは職場でカレーライスを食べてくださいと、こう言ってはおりませんが、こう言おうかと思っているわけでございますが、そうして、さらに親を中心にいたしまして社会に手を広げて、学校給食は先ほども私が述べました中に、二十一世紀を担ってもらわなければならない、そのためには学校給食は重要なんだということを社会のだれにも知っていただいて、ああそうなのか、給食はそんなに大切なのか、弁当でいいと思った、こんなに食糧が余っているからもう給食なんかいいと思ったけど、そうではないんだなあと、心で社会の人々が思ってくださるそのことも給食に大きな力になってまいります。しかも、もっと一歩進んで、いま給食では何を要求しているのかな、ああ、なに、学校食堂を欲しい。いままで勉強したところで、まあそれではゆったりとして楽しい給食、それは無理だと、それでは食堂をつくるように社会の人たちも応援しましょう。または米飯給食をみんな一生懸命推進して子供も喜んでいるけども、食器は依然としてパンのままではないかと、もっと食器もふやしてやろう、それからおはしも使わしてやろう、フライのときにはナイフ、フォークも使わしてやったらどうかというようなことを積極的に社会の方々からも応援していただくというと、そうすれば食器がふえれば、自然とああそれじゃ調理……

○理事(大島友治君)
 なるべく簡潔にお述べください。

○参考人(田中信君)
 はい。それでは――というような社会に積極的に切り込むということが目的でございます。

○佐藤昭夫君
 もう時間ですから終わります。

※途中で〔理事世耕政隆君退席、理事大島友治承者席〕とあるのは「君着席」の間違いだと思う。OCRの変換ミスが残っちゃったんだろうな。
※※ちなみにここの世耕政隆って人の死去により、その甥であった世耕弘成が立候補したわけですな。わかりやすい世襲議員。
 つまり、

統一献立を一斉に各学校で供していくという、このことが本当に学校給食の本来の目的である地域や学校の実情にふさわしい多様な給食を子供たちに与えていくというこの点から見て一体どうなのか。

 という批判ね。
 他にも一緒に出席した参考人からも
 

 最後に、このたび一月二十二日に全国統一献立の実施を通達されましたが、このことには私たちは反対です。自分の学校で子供の希望する献立をお好み献立として卒業期に実施していますが、学校の自主性を尊重することが子供のための給食になると思います。机上プランの計画を残念に思いますし、味の統一は大変迷惑でございます。なぜそれを言うかといいますと、私たちが考える学校給食というものはこれからつくり上げていかなくてはなりませんが、貧しさの追求だけではなく、これからは教育としての給食の追求があるからだと考えております

 
 とか
 

 最後ですけれども、二十周年を記念して一括化の献立、全国一斉統一献立てカレーライスをつくって、そしてデザートは何々をつけて、副食は何々という指示がおりているのを見せてもらいました。私はこれを見て本当に驚いたんですけれども、こういうような一斉に何かを食べさせなければならないということじゃなくて、本当にそれぞれの地域でそれぞれの地域の持つ本当の味を子供たちに教えてあげたら、子供たちも、それからまたそこの地域のお母さんたちも、それから地域の生産者も農業者も、すべてが一緒になって地域ぐるみの教育をしていけるんじゃないか、地域ぐるみの教育と同時に給食がつくっていけるんじゃないか、そういうことを考えるわけです。そういうときに全国一斉統一献立ということで出てきたということは、本当にこれは人間を、日本の子供を画一的にしようとしているんじゃないか、そういう意味で危険なものを感じています。という立場から、ぜひ子供たちのために、ぜひ皆さんですばらしい給食をつくっていただくために、私たちの願いをくみ入れていただけたらと思います。

 
 とかいって非難されてた。
#この議論では、「全国一斉統一献立」というのはあくまでも「全国学校栄養士協議会の結成20周年を記念して」ということで話がなされている。ところが例えばWikipediaを初め、複数のサイトで「学校給食開始35周年」と記述されている。どちらも年代的には正解だが、リアルタイムの議論で「学校給食開始35周年」の話が全然出てきていないことはちょっと気になる事実。
 質問側の国会議員も、
 

 私、その二つの方式を聞いてますと、ちょうど、私は医者の端くれでございますが、公衆衛生的に全部をひっくるめてやらなきゃならぬ医療もあるわけです。しかし最近では、個人には個人差があるから、一人一人を見ていく、そういう医療がいいんだ、こういう考えもございますが、最近では、その両者を包括して、そして医療というのは行うべきである、こういう説が私は一番いいと思っております。ここにおいての皆さん方もそれぞれ顔も違えば着ておられる洋服も皆違う。だから、学校給食でもう全国一斉に統一食をやるんだ、それを朝から晩までなんといったら、これは私もとんでもない話だと思うんですね。かといって、それじゃ一人一人やるということもこれ大変な労力と金がかかるんじゃないかと思いますから、この中間で何かいい説がないかということをひとつちょっとお考えをいただきたい。

 
 とか言ってる。
 1981年という時代は「管理教育」あたりが問題意識としてかなり浮上してきていた頃(『3年B組金八先生』の放送開始が1979年)で、「統一」「画一化」「没個性」といった言葉がそれまで以上に嫌悪された時代だったようにも思う。
 しかしこの企画はむしろ、「いっつも違うんだから、たまに統一してみても面白いんじゃない?」という、非統一があたりまえの時代だからこそできた話だろう。たった1回(20周年記念だもんねえ)やるのにここまで拒否反応を示さなくてもいいんじゃないかなあ……。まあ時代でしょうな。
 でまあ、こういう議論があって、実際にこの日にカレーライスの献立を実施したのは一部の学校にとどまったそうだ。
 実施校数は「不明」としているサイトもあったが、『カレーの雑学』には「6割ほど」とあった。しかし「No.164 日本全国の小中学校の給食を一日だけカレーで統一する計画があった(番組評価 63/100へえ)」には「実施したのは2割」とある。
 ずいぶん違うなあ。
 どちらもその根拠は書いてないし、ちょっとびっくりする差なんだけども。
 うーむ。
 これはよく分からない。
 でまあ、この日を記念して?この日は「カレーの日」になっているそうな。
 はてなキーワード「カレーの日」によると、
 

1月22日の日本にある記念日の1つ。1982年に全国学校栄養士協議会で1月22日の給食のメニューをカレーにすることに決められ、全国の小中学校で一斉にカレー給食が出されたことにちなむ。

 
 だそうだ。とはいえ誰かがそうしようと決めた話でもないっぽい。
 日本記念日協会の記念日にも登録されていないし。
 しかしこの日は今でも給食にカレーが出されることが多いようだ。
 中にはこんなこと言い出すサイトもあったけども。(^O^)
 

1月22日は日本全国カレーの日

学校給食にカレーがはじめて出た日、日本中がカレーを食べる日です。
全国の学校給食もこの日はカレーが出るそうです。

 
 「学校給食にカレーがはじめて出た日」って? (^^;;
 というわけで、イマイチよく分からなかった全国一斉カレーの日。
 ただし実際に実施されたことだけは間違いない。
 みっちゃん、疑って悪かったよォ。(^O^)


突然食いたくなったものリスト:

  • まめの木のココア

本日のBGM:
Monsters Of Rock /JUDAS PRIEST






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