映画(ビデオ)2本

 『麻雀放浪記』と『ヒルコ 妖怪ハンター』を見た。

 恥ずかしながら『麻雀放浪記』さえ見るのが初めてだった。原作は大昔に読んでたのに。
 全然毛色の違う2作だが、出演者の演技力にあてられたという点では共通している。『麻雀放浪記』は評判通りの名作で、俳優それぞれの演技力、脚本の力強さ、演出のよさ、ほんとにソツがない。和田誠の映画マニアらしさがいい方に転んだ、掛け値なしの「名作」だと思う。
 『ヒルコ 妖怪ハンター』は原作である諸星大二郎『海竜祭の夜』から設定が随分と変わっているので、原作通りを期待して見るとガッカリしてしまうかもしれない。私は諸星作品をそのまんま映像化しても商業的に成功するようにも思えない(^O^)し、だから設定の変更は想定の範囲内だったので、その部分での失望はなかった。その上で手塚治虫に「(描こうと思えば誰の絵でも描けるが)諸星大二郎だけは描けない」と言わしめた諸星作品独特の世界はそれなりに表現できていたように思う。
 そして何と言ってもそれぞれの俳優の演技力、特に沢田研二、竹中直人の演技力は素晴らしい。工藤正貴(工藤夕貴の弟)もいい。こういうSFホラー映画にとっての致命傷 ── それでも必ず存在する「大根」がいなかったことは、どれだけこの作品の品格を高めていることだろう。(^O^)
 1990年、CGもない世の中で、しかも低予算(だと思う)の映画の特撮に「リアリズム」なんて求めようもないと思っていたが、これも予想の外、この種の映画の中ではさほど悪いものではなかった。これは原作のエグさが逆にいい方に影響しているのかもしれない。(^O^)
 原作の稗田礼二郎とは全く異なったキャラとなった沢田研二の”妖怪ハンター”そのものは、悪くはないがさほどちゃんと固まっているキャラでもないと思ったし、稗田の持つ妖怪センサーみたいなチャチな「秘密兵器」もちょっとアレではある。(^O^)
 「続編」を想定していたかどうかはわからないけれど、この程度のキャラだと、ちょっと稗田を中心とした「妖怪譚」を展開するには弱かっただろうなあ(現に続編はできていない)。
 しかしそれなりの怖さを演出しながらも「SFホラー」というよりは「SF青春ホラー」というべき清々しい?エンディングを持ってきたところに、なんともいえず好感を持った。
 こんなことしたら無茶苦茶になっても不思議じゃないのに(^O^)、意外にもそのへんのB級ホラーにはないきれいなまとめ方で、これは脚本と演出が、やっぱりB級とは似て非なるものなんだろうなと思った。
 オムニバス3本を1つの映画にまとめたような続編が制作されても面白かったかもしれない。


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2 個のコメント

  1. >>しかしそれなりの怖さを演出しながらも「SFホラー」というよりは「SF青春ホラー」というべき清々しい?エンディングを持ってきたところに、なんともいえず好感を持った。
    hietaro さんがこの映画を好きになってくれて嬉しいですね。オレもこの映画は好きです。或る意味では原作の壮大な設定を矮小化しているんですが、この時代性においてはそう謂う形でしか映像化出来なかっただろうと思いますし。
    何が好きなのかなぁと考えると、やっぱり主人公が想いを寄せていた美少女が凶暴な化け物になってしまって、それが主人公の活躍によって昇天すると謂う筋立てが甘酸っぱい青春物語として気持ち良いのかな、と。同じ稗田礼次郎シリーズの「赤い唇」のイメージが少し入っていて、それをハッピーエンドで救済したような性格がありますね。上野めぐみのキャスティングも好かったんだと思いますが。

    • hietaro on 2009年10月30日 at 1:42 AM
    • 返信

    >黒猫亭さん
     
    これは我ながら驚きではあったんですよ。原作を知っている映画は、期待外れになるのが当たり前の世界ですから。
     しかしここまで頑張られちゃうと。(^O^)
     
    それに、やっぱりハッピーエンドの話の方が好きなんですよねえ。
     
    >上野めぐみ
     
    恥ずかしながら、知らない……。(^^;

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